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2006年9月 5日 (火)

拙著要約

book_2309ここでご紹介した、拙著『日本語存在表現の歴史』の概要を、ある必要のために書きましたので、記録しておきます。

『日本語存在表現の歴史』
金水 敏(著)ひつじ書房(刊)2006220日発行

本書は、日本語固有の存在動詞「ある(あり)」「いる(ゐる)」「おる(をり)」の3語を主たる対象とし、その意味、用法等の分布と変遷について、歴史的な検討を加えることを目的とする。そのために、本書は第1部「「いる」と「ある」」および第2部「「いる」と「おる」」の2部構成をとっている。

1部では、まず現代共通語を中心に、「いる」と「ある」の違いを意味論、統語論の面から分析し、空間的存在文、限量的存在文、所有文、リスト存在文という分類を得た。次に、古代語において変化動詞であった「ゐる」が、「たり」を伴った形式から「いた」を経て室町時代に存在動詞「いる」に至った経過、またその際、「いる」が空間的存在文の意味を獲得したこと、その後、限量的存在文・所有文その他へと広がっていった過程を明らかにした。

2部では、古代語の「ゐる」と「をり」がアスペクト的意味において対立していたこと、平安時代に新しい形式「ゐたり」が成立し、その結果「をり」が特殊な動詞へと変容したこと、その「をり」の意味と文体との関係等について検討した。さらに、全国共通語の「おる」の機能が、漢文訓読文、武士言葉、上方言葉由来の町人言葉等、異なる経路を経て形成されたことについて述べた。併せて、人を主語とする存在文における「いる」「おる」「ある」の地理的分布と中央語の変遷を照らし合わせ、西日本では「いる」「おる」について京阪を中心とする周圏分布が形成されていること、東日本では「ゐたり」に起源をもつ「いる」「いだ」等の形式が広く強い勢力を持っていることを確認した。また、「動詞+存在動詞」「動詞+て+存在動詞」という形式によるアスペクト形式が、存在表現の語彙の変化と深い相関関係にあることについて概観した。

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