« 2010年8月 | トップページ | 2010年11月 »

2010年10月31日 (日)

フランス語談話会

日時: 2010年11月13日(土) 14時~17時
場所:京都大学吉田南キャンパス 総合人間学部棟 1B05 (地下1階)
アクセスマップ
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_ys.htm
最寄りのバス停 京大正門前
市バス 京都駅から206系統、四条河原町から201系統・31系統

テーマ: 時制体系をめぐる対照言語学的視点
パネラー:
井元秀剛 (大阪大学・フランス語学)
    「メンタルスペース理論が用意する時制対照研究のための装置」
和田尚明 (筑波大学・英語学)
    「日英語時制現象の対象言語学的分析」
金水 敏 (大阪大学・国語学)
    「物語構成のための階層的時間把握 ―芥川龍之介「羅生門」を例に―」

各発表の要旨:

井元秀剛 (大阪大学・フランス語学)
    「メンタルスペース理論が用意する時制対照研究のための装置」
発表者は井元 (2010)『メンタルスペース理論による日仏英時制研究』ひつじ書房. において、この理論を使った対照研究の試みを行った。そこで、この理論の特徴を紹介し、対照研究に有力な道具を提供してくれているということを示してみたい。この理論では、BASE, V-POINT, FOCUS, EVENTという4つの基本スペースとPAST, PRESENT, FUTUREというスペース間の時間関係の組み合わせで、動詞の時制を記述する。これは一見すると、古典的なReichenbachのS,R,Eというポイントのスペース版で、基準となるポイントを一つ増やしただけのようなものに見えるが、2つの大きな特徴がある。1つは単に時制形態の価値を記述するためだけの装置ではなく、談話の進行に伴って移動していいくダイナミックなものであること、もう一つは個々のスペース間の時間関係を1つの単位と捉えていることである。従来「過去形」「現在形」「未来形」というような用語が凡言語的に時制カテゴリーとして用いられてきたが、この場合の過去形とは典型的には英語の過去形が基準となっており、その価値はBASEおよびV-POINTからPASTの位置にEVENTとFOCUSがある、ということである。これに対し日本語の「シタ」形が示すのはV-POINTからPASTの位置にEVENTがある、ということだけであって、これに「過去形」というレッテルを貼るのは好ましくない。メンタルスペースの装置を使うことで、その違いやそこから派生してでてくる言語現象がうまく説明、記述できる。

和田尚明 (筑波大学・英語学)
    「日英語時制現象の対象言語学的分析」
日英語で過去形・現在形(非過去形)とよばれる時制形式は実は異なる時制構造を持つと論じ、それらが生じる言語環境の影響の下、同じような時間関係(当該出来事時と基準時との時間関係)を表す解釈が生じたり、同じ言語環境でも異なる時制現象として具現したりすることを見ていく。この目的のために、日英語の時制現象を統一的に扱える時制理論を提案し、それに基づいて日英語の時制解釈のメカニズムの共通点や相違点を明らかにする。

金水 敏 (大阪大学・国語学)
    「物語構成のための階層的時間把握 ―芥川龍之介「羅生門」を例に―」
浜田秀 (2001) 「物語の四層構造」(『認知科学』8-4, 319-326, 日本認知科学会)は、時間表現の類型に基づいて、物語のテクストを4つの階層「発話部」「前景部」「背景部」「コメント部」に分けることを提案した。本発表ではこの提案に基づき、芥川龍之介「羅生門」を分析した結果を提示する。加えて、指示詞や移動動詞等の直示表現にも着目し、そこから明らかになる"視点"とこの四層構造との関係を探った。その結果として、背景部を"微視的背景"と"巨視的背景"に分けることの必要性を提示したい。また、浜田自身が「知覚・思考といった心的領域に関わる諸問題はほとんど取り上げない。」としているように、小説テクストの分析にとって必要不可欠な心内語・間接話法等の問題が取り残されている点について、考察を深めたい。具体的には、「(思考の)走査(スキャニング)時間」というべき時間の流れを設定し、それが前景部の時間推移と関係しながら必ずしも同期しないということを述べる。

« 2010年8月 | トップページ | 2010年11月 »