上山あゆみさんに『統語意味論』の手ほどきをしてもらう会(待ってました応用編)
統語論、意味論に関するイベントのお知らせです。6月に引き続き、『統語意味論』の著者である上山あゆみさんが、ご自身の理論について分かりやすく解説して下さいます。今回はお二人の若手研究者の発表を交えて、理論への理解をより深めていきます。どなたでも参加自由です。
上山さんより、今回の企画について説明文をいただきました。
今回は、「応用編」として実際に統語意味論を使ってどのような分析ができるかをご紹介したいと思っています。
特に注目したいのは、明らかに sister 関係ではないと思われる表現の間で、ある種の意味関係が構成されている場合についてです。従来の意味合成の理論だと、意味関係の合成は、原則的に、Merge する表現間で起こる必要があり、このような現象をうまく扱えません。ときには、Merge する相手と意味合成をする相手とをずらすための工夫が必要になるのです。統語意味論では、意味関係を構成する素性というものを仮定し、Merge の際にそれが上位節点に継承されることもあると仮定することによって、このような現象にも対応しようとしています。
今回、ご紹介するのは、最近発表された2本の論文です。1つは日本語の比較相関構文(「~するほど、~である」)を分析したものであり、もう1つは中国語の比較相関構文(「... 越 ... , ... 越 ...」)を分析したものです。どちらにおいても、上で言及したように、sister 関係以外のところで比較相関の意味が合成されることがあることが指摘されています。この2つの構文は、文意はほぼ同じですが、利用されている機能語の性質が異なることもあり、結果として提案された分析は、互いに異なっています。それらを比較することによって、統語意味論の分析が目指すところについて理解が深まればと思っています。
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