W. M. ヤコブセン先生を囲む研究会(第1回)
ハーバード大学からW. M. ヤコブセン先生をお招きし、日本語学・日本語教育学の研究会を開催します。どなたでも参加できます。事前登録等不要です。
日時:2017年12月18日(月)15:00〜17:00
場所:大阪大学豊中キャンパス・文法経講義棟1階・文13教室
(アクセスマップ6番の建物)
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プログラム
発表1:
Prokopeva Mariia(プロコピエヴァ・マリア)〔大阪大学言語文化研究科日本語・日本文化専攻〕
"Complaint as a speech act in conversational analysis: A contrastive study of Japanese and Russian"
(談話分析の視点から見た不満表明:日本語とロシア語の対照研究)〔英語発表〕
※要旨が本項末尾にあります。
発表2:
金水 敏〔大阪大学文学研究科〕
「定延利之氏のキャラクタ理論から見た日本語語彙の分析と日本語教育への応用」
コメンテーター:
W. M. ヤコブセン(ハーバード大学)
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連絡先:金水 敏(大阪大学大学院文学研究科)
kinsui(at)let.osaka-u.ac.jp
※このプログラムは、平成29年度大阪大学国際共同研究促進プログラム(短期人件費支援)に基づいて行われるものです。
〔要旨〕
「談話分析の視点から見た不満表明-日本語とロシア語の対照研究-」
近年、不満表明という言語行動を対象とした研究が活発になってきている。特に、ポライトネスの視点からの不満表明について論じられることが多い。中間言語語用論における不満表明は、依頼、謝罪、ほめ、感謝等の言語行動と同様に、様々な言語で対照研究がなされている。 先行研究では、不満表明ストラテジー使用の特徴や、異同(Olshtain &Weinbach 1993,Trosborg1994,Laforest 2002,他)、また外国語学習者の母語からの負の転移(Olshtain & Weinbach1993,初鹿野他1996,藤森1997,李2004,他)などが対象となっている。
Brown & Levinson(1978)のポライトネス理論によると、不満表明は、他の発話行為と異なり、相手のポジティブフェイスを脅かす行為であるという。それは、不満を表明することにより、相手のフェイスを脅かす可能性や、人間関係の構築・保持にネガティブな影響を及ぼす恐れがあるためである。それゆえ、不満表明は、特に異文化コミュニケーションや外国語教育等の分野において、注目を集めている。またLaforest(2002)は、依頼や謝罪は形式が特定されているのに対し、“Complaint”は、FTA(相手のポジティブフェイスを脅かす行為)を引き起こしうる批判や叱責、非難、侮辱などの発話行為と同様、典型的な形式が特定されていないという。それゆえ、“Complaint”の定義を論理的に記述することは容易ではなく、文脈によっては、批判、叱責、非難、侮辱などの発話行為を区別することも困難な場合があると指摘している。 本発表では、会話分析の視点から、主に日本語とロシア語の母語話者の会話に現れた隣接ペア(不満表明とその返答)の特徴や相違点について述べる。なお、分析データは、予備調査で得られたものを使用している。
予備調査は平成29年8月から9月にかけて行った。協力者は、近畿地方に在住している20代の日本語母語話者(以下JNS)と、同地方に留学中の20代~30代のロシア語母語話者(以下RNS)である。JNSは大学院の女子学生(1組)と男子学生(1組)で、RNSは大学学部と大学院の女子学生(2組)である。調査の結果、それぞれ以下のような特徴や相違点が確認された。 JNSとRNSの会話は、共に謝罪から開始されている。ただし、謝罪の発話数は、JNSの方がRNSより多いことが分かった。 JNSの会話では、相手が表明した不満に対して、その返答には謝罪のみが見られた。一方RNSは、謝罪以外に、他の発話が現れているのが特徴的であった。 RNSの会話では、笑いの出現数が多く、それに対してJNSでは、笑いの出現が一例しか見られなかった。
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