2007年5月13日 (日)

授与動詞の対照方言学的研究

027686890000 授与動詞の対照方言学的研究 (ひつじ研究叢書) 
  日高 水穂著
税込価格 : \7,770 (本体 : \7,400)
出版 : ひつじ書房
サイズ : A5判 / 354p
ISBN : 4-89476-321-4
発行年月 : 2007.2

目次
第1部 枠組み編
第1章 授受動詞をめぐって
第2章 人称的方向性をめぐって
第3章 授受表現をめぐる表現体系の変遷
第2部 全国分布編
第4章 授受表現発達の地域差
第5章 授受動詞と関連表現の全国分布
第6章 授与動詞の語彙体系の地理的分布をめぐって
第7章 方言談話資料に見られる授与動詞の意味と用法
第8章 方言談話資料に見られる「提供場面」の言語表現
第3部 現地調査編
第9章 富山県五箇山方言の授与動詞の体系
第10章 五箇山・白川郷の方言授与動詞の使用の動態
第11章 石川県内浦方言の授与動詞の体系と動態
第12章 長野県信州新町方言の授与動詞の体系と動態
第13章 北部伊豆諸島方言の授与動詞の体系と動態
第14章 東北方言の授与動詞の体系と動態
第15章 九州中南部方言の授与動詞の体系と動態
第16章 授与動詞の体系と変化の東西方言差

日本語助詞シカに関わる構文構造史的研究

027647820000 日本語助詞シカに関わる構文構造史的研究 (ひつじ研究叢書)
文法史構築の一試論 
  宮地 朝子著
税込価格 : \7,140 (本体 : \6,800)
出版 : ひつじ書房
サイズ : A5判 / 219p
ISBN : 4-89476-320-6
発行年月 : 2007.2

目次
序論 文法史の構築をめざすにあたって
第1章 「とりたて」形式の構文的特徴と意味機能
第2章 「係助詞」シカの成立
第3章 方言からみたシカの構文的特徴と成立過程
第4章 ダケ・バカリの歴史・地理的変化
第5章 係助詞シカ成立の言語内的要因
第6章 係助詞シカ類の成立に関わる音変化をめぐって
第7章 「おく「より」」の背景
結論 本研究のまとめと課題

2006年10月 2日 (月)

方言の伝播類型

彦坂佳宣先生からお送りいただきました。

『方言文法事象の伝播類型についての地理学的・文献学的研究』(平成14(2002)年度~平成17(2005)年度科学研究費補助金(基盤研究C2)研究成果報告書、研究代表者:彦坂佳宣(立命館大学文学部教授)、課題番号:14510455、2006.3)

目次:

まえがき

第Ⅰ部 個別論文

〔意志・推量表現から〕
1. 日本語方言による意志・推量表現の交渉と分化
2. 中国地方における意志・推量形式の方言史
3. 全国方言における一段活用類意志形の五段化の位置

〔条件表現から〕
4. 原因理由表現の分布と歴史
5. 仮定条件の全国分布とその史的解釈

〔格助詞ガ・ノの用法分化〕
6. 主格ガの発達

〔準体助詞の諸面〕
7. 準体助詞の全国分布とその成立経緯
8. 「『行くダ』などの言い方をする方言群とその性格

〔付論〕
9. 東西方言の接点

第Ⅱ部 伝播類型の視点から(まとめ)
10. 伝播類型の視点から

2006年9月 6日 (水)

系統樹思考の世界

026955420000 下記の本を読みました。

『系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに』 
(講談社現代新書)
  三中 信宏著

税込価格 : \819 (本体 : \780)
出版 : 講談社
サイズ : 新書 / 294p
ISBN : 4-06-149849-5
発行年月 : 2006.7

三中さんは生物学がご専門ですが、本書の中でも書かれているように、この本は言語学も含めて、文理を越え、進化論的発想を共有するすべての学問を対象として書かれたものです。歴史言語学を志す人には、必読書と言えるでしょう。

まず、私の専門分野に関連して、恥ずかしながら知らなかった情報が書かれていたので抜き書きしておきます。

 時間的変化をたどる生物系統学が、同時に空間的変化を追求する生物地理学とも密接に関係するのと同様に、民俗学においては、単に時間的次元だけでなく、平面的な空間的次元をも考慮しなければなりません。岩竹は、シュライヒャーの「家族樹説」ならびにそれと対立して提唱されたヨハネス・シュミットの「波紋説」がどちらも民俗学に導入され、それぞれ「重出立証法」および「方言周圏論」という名で、日本の民俗学に導入された興味深い経緯があったと述べています。
 重出立証法とは、伝承間で共有される特徴を逐次的につなげていくことにより変遷過程を復元する方法です。他方の、方言周圏論とは、古い時代の言葉ほど周辺地域に残存するという主張です。前者は伝承の時間的な復元を目指すのに対し、後者は地理的な復元を目指します。
 重出立証法と方言周圏論は互いに対立するもので、しかも互いに補いあうべきものと岩竹は解釈しているようです。しかし、生物系統学ならびに生物地理学の観点からみた場合、両者は、もともとひとつのものの時間的断面と空間的断面に相当すると理解したほうがいいように私は考えます。つまり、ある文化的伝承(あるいは考古学的遺物)を、時空的に変化する系譜 (lineage) として一体的に理解しようという姿勢です。(pp. 110-111)

「岩竹」とは、下記の文献です。

岩竹美加子「「重出立証法」・「方言周圏論」再考(1)~(3)」、「未来」(396): 13-21; (397): 6-16; (399): 30-35, 1999.

方言周圏論は我々になじみの理論ですが、そのルーツについては寡聞にして知りませんでした。

理論的には、第3章「「推論」としての系統樹---推定・比較・検証」が大変勉強になりました。無根系統樹から有根系統樹を導く手続き、「最節約基準」、外群の導入などの概念が、分かりやすい説明で述べられています。また、第4章「系統樹の根は広がり続ける」の第4節「高次系統樹---ネットワーク・ジャングル・スーパーツリー」の項も、系統樹研究の新しい展開が伺え、言語学にも関係するところの大きいことが期待されます。

今までの歴史言語学では、比較言語学で極度に発達した系統樹的発想が席巻しているわけですが、最近では、一度分かれた枝がまた混じり合うという、まさしく「ネットワーク」的関係が注目されているわけで、問題の整理に、新しい理論が大いに役立つわけです。

また、自分自身の仕事と照らし合わせて、もっとも共感を感じたのは、「本質」と「進化」に関する議論です。

 “ヒト”には“ヒト性”、“サル”には“サル性”という「本質」があると仮定する心理的本質主義は、進化的思考とは根本的に矛盾します。あるカテゴリー(“ヒト”や“サル”)に本質(“ヒト性”や“サル性”)が存在するとみなすかぎり、カテゴリー間の移行(進化)は原理的に不可能だからです。(p.124)

「種」の実在性を支持する心情とはいったい何か―それは時間的に変化する“もの”が、なお同一性 (identity) を保持し続けるだろうという、本質主義の再来です。進化的思考以前の形而上学の実念論的的立場に従えば、ある「本質」を共有する群は強い意味で同一性を持つと主張します。しかし、進化的な思考をするかぎり、本質を仮定することは御法度ですから、現代進化学の舞台台本からは本質ということばは消え失せます。ただ、デイヴィッド・ウィギンズらによる現代の分析哲学的な存在論の議論が示している通り、ある群が時空的に「同一」であるという主張は、どうあがいても本質主義的な結論に到達してしまうようです。つまり、ある群が時空的な同一性を維持するためには、何らかの「本質的属性」を共有し続けなければならないということです。これは進化的思考と正面衝突してしまいます。
 (中略)私たちは、生物としての人間であり、進化の過程でさまざまな肉体的特性と心理的特性を獲得してきました。ですから、心理的本質主義者としてのヒトと進化的思考者としてのヒトとは、表層的には矛盾するのですが、真相的には各自がそれぞれ折り合いをつけていくしかないのだろうと私は思います。
 むしろ、みずからが心理学的本質主義者であることに気づかずに、さまざまな形而上学的思考を経験論的事実(あるいは原始仮定)として言い続けることにこそ問題があるのでしょう。私たちは本質主義に関してナイーヴであってはなりません。(pp. 259-260)

言語学でも、「本質主義」的な議論(例えばある「語」や構文的役割(「主語」など)の「本質的」意味はこれこれ、といったような)にはしょっちゅう出会いますが、それを言ったとたん、言語の変化やヴァリエーションということが一切説明できなくなってしまうわけです。このことはうすうす気付いていましたが、非常にきれいな形で整理していただいたことに感謝したいと思います。

とはいえ、この本はやはり入門書なので、「もっと深いところが知りたい」という欲求には充分答えてくれません。同じ著者の、『生物系統学』(東京大学出版会, 1997)を手に取ってみたくなりました。

2006年6月25日 (日)

安部清哉さん

いただきました。

安部清哉 (2005) 「アジアと日本列島における言語・文化境界線“気候線”(摂氏0度線)―言語地理学と文化地理学から―」『学習院大学文学部研究年報』52, pp. 39-90.