2012年5月15日 (火)

無敬語カフェ、あるいはため口ゲーム

“無敬語カフェ”というか、無敬語ゲームを授業の中でやってみました。

5、6人の「トーク係」と、同人数の「質問係」をじゃんけんで選んで、「私のゴールデンウィーク」というテーマで各自1分ほどトークをしてもらい、そのあと、質問係とトーク係の間で対話をしてもらう、というものです。その間、ずっと無敬語。この場合敬語とは、丁寧語「です」「ます」「っす」のことを指し、尊敬語・謙譲語はOKとしました。2ラウンド回して、そのあと全員に感想を述べてもらいました。

 やってみて感じたのは、敬語の問題と言うより、思った以上に方言の問題をあぶりだすな、ということです。つまりため口にすると、共通語で自然に話すのはほとんど無理で(一人、わざと書き言葉みたいに話してた人もいましたが)、方言にならざるを得ない、ということです。その場合、関西弁話者は比較的のびのび話せるのに、それ以外の方言の話者はとてもやりにくそうにしていました。しかし鳥取県と島根県の人同士が楽しそうに方言で対話を始めたので、回りがかえってあっけにとられる、というシーンもありました。

 あらためて、日本語話者にとって丁寧体というのは、よく知らない人同士や大勢の人に話しかける場合の欠くべからざるツールになっているな、ということを確認しました。

2012年3月 5日 (月)

敬語問題サイト備忘

日本人は日本語に混乱している

http://www.tachibana-akira.com/2012/03/3823

2011年9月 4日 (日)

『文法史』(シリーズ日本語史、3)

岩波書店刊、シリーズ日本語史から第3巻『文法史』が出ました。

金水敏・大鹿薫久・高山善行・衣畑智秀・岡崎友子(編)

金水敏・高山善行・衣畑智秀・岡崎友子(著)

『文法史』シリーズ日本語史、3

岩波書店、2011年7月28日刊

詳しい内容はこちらからどうぞ。

0281290_2




2010年3月13日 (土)

ロボット演劇

私のエッセーを含む下記図書が出版されました。とても綺麗な写真満載の、ビジュアルムックです。平田オリザさんのシナリオ、平田さんと石黒浩さんの対談、エッセーなど多彩な内容を含んでいます。

大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(編)(2010)『ロボット演劇』大阪大学出版会

私のエッセーを途中まで(けち!)貼り付けます。全部お読みになりたいかた、ぜひ本書をご購入ください(けち!)

「ええ、まぁ」の言語学―タケオと桃子は二つの"フェイス"の夢を見るか―

金水 敏

 私は「働く私」を見ていて、ロボットが口にした「ええ、まぁ……」という台詞を聞いた時、衝撃を受け、背筋に戦慄が走った。

*祐治、CDをセットしてスイッチを押す。
  「ロボコップ」のテーマが流れる。
郁恵  えぇ?
祐治  どう?
・・・
祐治  (ロボットBに)どう?
ロボB はぁ、
祐治  これ、元気でんじゃない?
ロボB えぇ、まぁ、
       (心なしか、リズムに合わせて、身体をかすかに回しはじめる)

 祐治は、働く気力を失ったロボットA(タケオ)を鼓舞しようとして「ロボコップ」のテーマを聞かせることを、ロボットB(桃子)に提案してみるのだが、ロボットBはその行為の有効性に確信が持てず、その上で、否定的反応によって祐治を傷つけることをおもんぱかり、その結果あえて発した返答がこの「ええ、まぁ」だったのである(この場所以外に、ロボットBは「まぁ、どうでしょう?」「はい・・・まぁ」というせりふを話し、いずれも、似たニュアンスで用いられている)。
 なぜ、私はこのせりふに衝撃を受けたのだろうか。それは、「ええ、まぁ」が、私にとって最も"ロボットらしくない"せりふであるように感じられたからであり、そしてそのことこそが平田さん(平田オリザ氏は私の勤務先の同僚なので、こう呼ばせていただきます)がこのロボット演劇に仕掛けた"わな"なのだろうと感じとった。
 私たちが想像するロボットの会話と言えば、だいたい次のようなものである(平板な、機械的音声を思い浮かべてください)。

  「はい、分かりました」
  「今お持ちします。しばらくお待ちください」
  「計算できません」
  「その単語は、私の知識にありません」

 すなわち、必要最小限の内容を直接的に伝える、よく言えば"効率的"な、悪く言えば"無味乾燥"な受け答えである。むろん、本当にロボットと会話した人はほとんどいなかったはずで、これはSF映画などに登場する、架空のステレオタイプなロボットのせりふである。こうしたSF作品の制作者は、どうせロボットには"人間的"なやりとりなど高度すぎて出来ない(と観客が思う)だろうと見積もった上で、むしろその愚直さ、たどたどしさを楽しむ"トリックスター"的なキャラクターとしてロボットを利用するのが通例であった。いわば、はやりの言葉で言えば、いささかKY(空気読めない)な道化師的存在としてロボットは扱われてきた。そのようなロボットに対する思い込みを、平田さんは冒頭から外しにかかった。そのことを最も象徴的に表したせりふが「ええ、まぁ」だったのである。
 ここで、問題の核心に迫るために、ロボットの会話と「ええ、まぁ」の機能について、語用論 (pragmatics) という一種の意味論の立場から考えてみたい。意味論学者のグライス(H. P. Grice)は、すべての会話の参加者は次のような協調の原理(cooperative principle)に従わなければならないと仮定した(Grice 1975)。

(以下略)

2007年5月14日 (月)

指示詞研究会

指示詞研究会

日時:5月19日(土曜)(3:00~5:00頃)

場所:大阪大学大学院文学研究科 A27

3:00~4:00 発表題目「古代語カ(ア)系列指示詞の定義」
          藤本真理子(大阪大学大学院博士課程)

4:00~5:00  発表題目「日韓における指示詞について」
          朴美賢(甲南大学)・岡崎友子(就実大学)

5:30頃~    懇親会

なお、懇親会のご出席の有無について、岡崎までtomoko-oka@shujitsu.ac.jpお知らせください。

岡崎友子

Dsc03904_1

2007年2月19日 (月)

すべて適切でない

2月18日付、毎日新聞の見出しです。

病気腎移植:すべて適切でない 宇和島徳洲会病院調査委

この文には、二つの解釈があり得ます。

  1. (万波医師らの病気腎移植は)すべて不適切であった。
  2. (万波医師らの病気腎移植は)すべてが適切であったというわけではなく、不適切な手術もあった。

これらの解釈の違いは、数量詞「すべて」と否定辞「ない」の作用域の広狭関係によります。

  1. [すべて [適切でない]]
  2. [ [ すべて 適切で] ない]

つまり、1では「すべて」の作用域が「ない」の作用域より広く、2では逆になります。これは、次のように表せます。

  1. すべて > ない
  2. すべて < ない

論理的には、1は狭く、2は広く、1のケースは2に含まれます。1例でも適切な手術があれば1は偽となりますが、2は真となります。

問題は、報道の言葉として、このような曖昧な表現を使うべきではないということです。私は、記事を読んでも、1、2のどちらを意図しているか、よく分かりませんでした。

皆さんは、どちらの解釈が意図されていると思いますか。

2006年12月29日 (金)

言語に表れる「世間」と「世界」

いただきものです。

中川正之・定延利之(編)(2006)『言語に表れる「世間」と「世界」』シリーズ言語対照〈外から見る日本語〉、くろしお出版, ISBN: 4874243681

第1章 言語に現れる世間と世界
  ―まえがきにかえて― 中川正之・定延利之
第2章 人物の属性表現に関する「具体」と「抽象」
  ―社会心理学的見地から― 菅さやか・唐沢 穣
第3章 無助詞題目の認知的特徴
  ―新内処理と現場性― 金田純平
第4章 描写に関する個とステレオタイプ
  ―談話から見る中国語の「存現文」― 澤田浩子
第5章 日本語、インドネシア語のナル型受動構文
  ―受動表現にみる「世界」と「世間」― 湯浅章子
第6章 マテンゴ語における「未来」と「現在」
  ―2種類の時間境界― 米田信子
第7章 エビデンシャリティと現代日本語の「ている」構文 定延利之・アンドレイ・マリチュコフ
第8章 心内情報の帰属と管理
  ―現代日本語共通語「ている」のエビデンシャルな性質について― 定延利之

2006年8月16日 (水)

Historical Pragmatics

西光書店で購入しました。

Jucker, A. H. (ed) (1995) Historical Pragmatics: Pragmatic Developments in the History of English, Pragmatics & Beyond New Series, 35, John Benjamin, Publishing, Amsterdam.

Introduction
The Historical Perspective in Pragmatics
    Andreas Jacobs and Andreas H. Jucker

Part I: Pragmaphilology
The Openness of Medieval Texts
    Heinz Bergner
They Had Their Points: Punctuation and Interpretation in English Renaissance Literature
    Gert Ronberg
Punctuation: And - 'Pragmatics'
    John Lennard
A Close Reading of William Caxton's Dialogues: "... to lerne Shortly frenssh and englyssh"
    Werner Hullen (u に ウムラウト)
Wills and Will-Making in 16th and 17th Century England: Some Pragmatic Aspects
    Ulrich Bach
Communicative Clues in Sir Gawain and the Green Knight
    Ma Pilar Naverro-Errasti

Part II: Diachronic form-to function mapping
Pragmatic Maxims in Explanations of Language Change?
    Jose Pinto de Lima (Jose の e にアクサン)
Pragmatic Constraints to Word Order, and Word-Order Change in English
    Enrique Bernardez and Paloma Tejada (Bernandez の a にアクサン)
On Doing as You Please
    Cynthia L. Allen
Your Average Generalizations: A Case-Study in Historical Pragmatics
    Katie Wales
Demonstratives in Early Modern English Letters
    Barbara Kryk-Kastovsky
The Ambiguous Adverbial/Conjunctions pa and ponne in Middle English: A Discourse-Pragmatic Study of then and when in Early English Saints' Lives
    Brita Warvik (Warvik の a の上に○)
Middle English po and other Narrative Discourse Markers
    Monika Fludernik
Diachronic Analysis of Japanese Discourse Markers
    Noriko Okada Onodera
Interjections in Early Modern English: From Imitation of Spoken to Converntions of Written Language
    Irma Taavitsainen

Part III: Diachronic function-to-form mapping
Topics in the History of Dialogue Forms
    Gerd Fritz
"Then I saw to antique heddes": Discourse Strategies in Early Modern English Travelogues
    Tuija Virtanen
Linguistic Politeness Strategies in Shakespere's Plays
    Roman Kopytko
Constraints on Politeness: The Pragmatics of Address Formulae in Early English Correspondence
    Terttu Nevalainen and Helena Raumolin-Brungerg