2008年8月16日 (土)

漢字音

SKinsui's blog から転載です。

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先日、H大学で大学院生相手に日本語史の演習をやっていたときのこと。

学生の中に、日本人以外に中国人と韓国人がいたので、それぞれの国の漢字音を比べ合いました。例に取り上げた字は

(簡体字で「叶」)

それぞれの国語での漢字音は、以下の通り。

日本語:ヨウ

中国語:イェ

韓国語:ヨ

もととなった、古い中国での漢字音は

イェ

のようなものであったようです。韓国の漢字音(朝鮮漢字音)が一番古い姿を残していて、音節末の閉鎖音[p]を保存していますね。中国本国では、この[p]は失われてしまいました。一方、日本では、

イェプ > イェフ > イェウ > ヨウ

のような経過をへて、現代に至っています(歴史的仮名遣いでは「エフ」)。

これって、東アジアを舞台に、1000年以上かけて

壮大な伝言ゲーム

をしているようなものですね。その答え合わせを、今、日本の広島でしていると思うと、なんだか楽しい気分がしてきました。

2008年4月12日 (土)

屋名池誠氏形態論メモ

  • 「活用の捉え方」「活用とアクセント」日本語教育学会(編)『新版 日本語教育学事典』大修館書店
  • 「『音便形』―その記述」『築島裕博士古稀記念 国語学論集』汲古書院
  • 「上方ことばのアクセント」大阪女子大学国文学研究室(編)『上方の文化 上方ことばの今昔』和泉書院
  • 「平安時代京都方言のアクセント活用」『音声研究』(日本音声学会)8-2
  • 「動詞活用の地域差と成因・今後の進路―理論と『方言文法全国地図』の出会うところ―(仮題)」『日本語学』臨時増刊(2007年9月)
  • 「文法論と語彙」石井正彦・斎藤倫明(編)『これからの語彙論』ひつじ書房(未刊)

2006年12月 1日 (金)

降灰

Dsc03513 12月26日、「新村出賞贈呈式」と併せて、「新村出生誕一三〇年記念講演会」が行われました。三重大学名誉教授の東辻保和先生による「新村出先生の思い出」というご講演でしたが、新村出氏の肉筆はがきのコピーを材料にいろいろ興味深い話題をご提供いただきました。

その中に、『広辞苑』の見出しとして「降灰」という語の親見出しを「こうかい」とすべきか、「こうはい」とすべきか迷っているという趣旨のはがきをご紹介いただきました。「こうはい」はいわゆる「重箱読み」で、音訓交用であり、教養語としては異例なのですが、気象学用語として流通しているそうです。

これにはやはり、「はい」という読みがあたかも字音であるかのように見える(聞こえる)という点に原因の一つが求められるでしょう。(こちらを参照)

2006年11月 5日 (日)

音・訓と連濁

こちらに書いた、音・訓の議論をこちらに引き取ります。kuzan氏のご議論にも乗っかりながら。

私が、大阪YWCAの受講生の方に見せていただいたテキストには、連濁しない字音語の例として「蚊(か)」が挙げられていましたが、これはテキストの著者の間違いでした。「蚊(か)」は訓(和語)ですが、何か別の理由で連濁しないのでしょう。

もし、音・訓の見分け方として、

連濁するのは訓、連濁しないのは音(仮)

という「法則」を使うとするなら、「蚊」ではなく、例えば「蝶」と「蜂」のペアを使えばよかったのでしょうね。

モンシロ-チョウ アゲハ-チョウ シジミ-チョウ

アシナガ-バチ スズメ-バチ ジガ-バチ

「チョウ」は音(漢語)なので連濁しない、「ハチ」は訓(和語)なので連濁する、というわけです。

ただしこの法則は、例外が多いので、やっかいなのですね。kuzan氏は、連濁を起こす漢語熟語の例として、「株式会社(かぶしきがいしゃ」「男所帯(おとこじょたい)」の例を挙げておられますが、漢字一字の音・訓の例としては、、「菊」「鉢」の例があります。

シラ-ギク ジョチュウ-ギク コ-ギク

ドンブリ-バチ チョウズ-バチ ウエキ-バチ

「キク」「ハチ」はいずれも字音ですが、ほぼ例外なく連濁を起こします。これらはやはり、早くから生活の中で和語なみに日本語になじんでしまったことによるのでしょう。従って先の「法則」は、

連濁しやすいのは訓、連濁しにくいのは音

と改訂すべきでなのですが、こんなのは予測力がないので、「法則」でもなんでもないですね。

2006年9月 8日 (金)

古代・中世日本語用例のローマ字表記について

新しい業績が出ました。

金水 敏 (2006.9.7) 「古代・中世日本語用例のローマ字表記について」音声文法研究会(編)『文法と音声 V』pp. 177-190, くろしお出版

音声・音韻史の専門家でない人が、古い用例をローマ字で書く時にどうしたらいいか、ということを検討した論文です。