2008年11月 1日 (土)

ダバ語の存在文における有生性

言語研究に所載の論文です。フォントの関係で、PDFファイルにしました。

「existential-nDrapa-shirai.pdf」をダウンロード

2008年8月13日 (水)

20世紀初頭における「いる」と「おる」

加藤安彦 (2008.1.10) 「20世紀初頭における「いる」と「おる」―尾崎紅葉「硯友社の沿革」と第一期国定読本―」『専修国文』82:1-14

「6.まとめ」より

 今日の我々の感覚からすると、「おる」を用いた表現で、「私にはたくさんの親戚がおります。」という本動詞用法、「彼は今外出しております。」という補助動詞用法、ともに敬意表現として機能する側面もあるが、また、そのことの影響を抜きにして考えることは困難ではあるが、「いる」を用いた文章よりも形式ばっている、文章語的である、という印象を受ける。また、「すでににそのことは知っておったわけですが」という文は、「すでににそのことを知っとったわけですが」という縮約形を用いた文にすることもでき、それは「すでにそのことは知っていたわけですが」や「すでにそのことを知ってたわけですが」と意味的には等価といえるが、「おる」を用いた文、殊にその縮約形を用いた文の方には、方言的なニュアンスや老年層でよく使われる表現という印象を受ける。
 こうした印象はおそらく「おる」という動詞が、その意味や使用範囲を、「いる」と棲み分けている結果に他ならないだろう。「いる」と意味・用法で重なっている部分を、より文章語的、より方言的、より位相語的な方向に限定することで存在を保持しているという表現をしてもよい。
(中略)
 これらのグラフから判断すると、「いる」においては、すでに大正時代以降は本動詞的な用法と補助動詞的な用法がだいたい同じような比率で推移しているようである、つまり、「いる」の使われ方が安定しているということである。これに対して「おる」の方は、20世紀初頭、尾崎紅葉「硯友社の沿革」においても、第一期国定読本の会話文においても同様で、出現数、本動詞としての用法の比率は、今回の資料の時期がピークとなっている。その当時の会話における表現としてはそれほど特異ではなかったが、時代が下るにつれ、全体の出現数も減少傾向となり、現在はもっぱら補助動詞的な用法によって「いる」との棲み分けをしていると考えられる。(pp. 11-13)

調査結果はまあ役には立つのですが、拙著(金水, 2006, 『日本語存在表現の歴史』)を読んで下さっていたら、もっと充実した論文になっただろうに、と思うと残念です。

2008年4月12日 (土)

屋名池誠氏形態論メモ

  • 「活用の捉え方」「活用とアクセント」日本語教育学会(編)『新版 日本語教育学事典』大修館書店
  • 「『音便形』―その記述」『築島裕博士古稀記念 国語学論集』汲古書院
  • 「上方ことばのアクセント」大阪女子大学国文学研究室(編)『上方の文化 上方ことばの今昔』和泉書院
  • 「平安時代京都方言のアクセント活用」『音声研究』(日本音声学会)8-2
  • 「動詞活用の地域差と成因・今後の進路―理論と『方言文法全国地図』の出会うところ―(仮題)」『日本語学』臨時増刊(2007年9月)
  • 「文法論と語彙」石井正彦・斎藤倫明(編)『これからの語彙論』ひつじ書房(未刊)

2007年11月12日 (月)

国語語彙史研究会(第87回)

国語語彙史研究会(第87回)のお知らせ

日時 2007年12月1日(土)午後1時半~5時
場所 大阪大学豊中学舎 国際公共政策研究科棟(豊中阪大内郵便局西隣)
    2階 講義シアター(いつもと会場が異なりますので御注意下さい)

発表題目および発表者
1 福岡方言のゲナ
    ―とりたて詞的用法の成立をめぐって― 
                    九州大学専門研究員 松尾 弘徳氏
2 平安和文の会話文の「文末表現」
    ―源氏物語を資料として― 
                    甲南女子大学教授 西田 隆政氏
3 三遊亭圓朝講談『塩原多助一代記』のことば
    ―速記本・全集本・文庫本の比較― 
                    奈良教育大学名誉教授 山内洋一郎氏

・参加費として500円をいただきます。
・研究会終了後、懇親会を開きますので、多数御参加下されば幸いです。

   2007年11月
  大阪府豊中市待兼山町一―五 大阪大学大学院文学研究科国語学研究室気付
                     国 語 語 彙 史 研 究 会

2007年5月13日 (日)

現代日本語の複合語形成論

027686900000 現代日本語の複合語形成論 (ひつじ研究叢書) 
  石井 正彦著
税込価格 : \8,820 (本体 : \8,400)
出版 : ひつじ書房
サイズ : A5判 / 497p
ISBN : 4-89476-324-9
発行年月 : 2007.2

目次
序論 複合語形成論の対称と方法
第1部 複合動詞の形成
第1章 複合動詞形成の基本モデル
第2章 動詞の結果性と複合動詞
第3章 派生的な複合動詞の形成
第4章 複合動詞と複合名詞
第5章 複合動詞の語構造分類
第6章 「既成」の複合動詞と「新造」の複合動詞
第2部 複合名詞の形成
第1章 複合名詞形成の4段階モデル
第2章 複合名詞の語構造と命名概念構造
第3章 複合名詞の表現性と弁別性
第4章 造語成分の位相と機能
第5章 複合名詞の語構造と語彙の生産性
第3部 臨時一語の形成
第1章 臨時一語と文章の凝縮
第2章 文章顕現型の臨時一語化
第3章 文章顕現型の脱臨時一語化
第4章 新聞における文章顕現型の臨時一語化と脱臨時一語化
第5章 文章顕現型の臨時一語化の基本類型

2007年4月18日 (水)

国語語彙史研究会

(ホームページ)

第八十五回国語語彙史研究会

■場所 同志社女子大学今出川学舎 ジェームズ館二○七教室
(京都市営地下鉄烏丸線今出川駅3番出口から東へ徒歩約五分、
    京阪本線出町柳駅3番出口から凡そ西へ徒歩約一○分)

■日時 2007年 4月 28日 (土) 午後一時半~五時 

■発表題目および発表者
  • 一 論説文の外来語 ―基本語彙を中心に―
          同志社大学専任講師 橋本 和佳氏
  • 二 語釈にはどんな外来語が使用されているか
       ―『例解新国語辞典(第七版)』を調査資料として―
          同志社女子大学教授 大島 中正氏
  • 三 語彙史を中心として見た「うとうやすかた伝承」の諸問題
          長崎大学教授 勝 俣  隆氏
  • 参加費として500円をいただきます。
  • 研究会終了後、懇親会を開きますので、多数御参加下されば幸いです。

   二〇〇七年四月
  大阪府豊中市待兼山町一―五 大阪大学大学院文学研究科国語学研究室気付
                     国 語 語 彙 史 研 究 会

2006年12月 1日 (金)

降灰

Dsc03513 12月26日、「新村出賞贈呈式」と併せて、「新村出生誕一三〇年記念講演会」が行われました。三重大学名誉教授の東辻保和先生による「新村出先生の思い出」というご講演でしたが、新村出氏の肉筆はがきのコピーを材料にいろいろ興味深い話題をご提供いただきました。

その中に、『広辞苑』の見出しとして「降灰」という語の親見出しを「こうかい」とすべきか、「こうはい」とすべきか迷っているという趣旨のはがきをご紹介いただきました。「こうはい」はいわゆる「重箱読み」で、音訓交用であり、教養語としては異例なのですが、気象学用語として流通しているそうです。

これにはやはり、「はい」という読みがあたかも字音であるかのように見える(聞こえる)という点に原因の一つが求められるでしょう。(こちらを参照)

2006年11月 5日 (日)

音・訓と連濁

こちらに書いた、音・訓の議論をこちらに引き取ります。kuzan氏のご議論にも乗っかりながら。

私が、大阪YWCAの受講生の方に見せていただいたテキストには、連濁しない字音語の例として「蚊(か)」が挙げられていましたが、これはテキストの著者の間違いでした。「蚊(か)」は訓(和語)ですが、何か別の理由で連濁しないのでしょう。

もし、音・訓の見分け方として、

連濁するのは訓、連濁しないのは音(仮)

という「法則」を使うとするなら、「蚊」ではなく、例えば「蝶」と「蜂」のペアを使えばよかったのでしょうね。

モンシロ-チョウ アゲハ-チョウ シジミ-チョウ

アシナガ-バチ スズメ-バチ ジガ-バチ

「チョウ」は音(漢語)なので連濁しない、「ハチ」は訓(和語)なので連濁する、というわけです。

ただしこの法則は、例外が多いので、やっかいなのですね。kuzan氏は、連濁を起こす漢語熟語の例として、「株式会社(かぶしきがいしゃ」「男所帯(おとこじょたい)」の例を挙げておられますが、漢字一字の音・訓の例としては、、「菊」「鉢」の例があります。

シラ-ギク ジョチュウ-ギク コ-ギク

ドンブリ-バチ チョウズ-バチ ウエキ-バチ

「キク」「ハチ」はいずれも字音ですが、ほぼ例外なく連濁を起こします。これらはやはり、早くから生活の中で和語なみに日本語になじんでしまったことによるのでしょう。従って先の「法則」は、

連濁しやすいのは訓、連濁しにくいのは音

と改訂すべきでなのですが、こんなのは予測力がないので、「法則」でもなんでもないですね。