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2005年10月23日 (日)

リバイバル

2004年の学科旅行のパンフレットに寄稿した文章です。

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  最近テレビで、60~80年代の曲をよく耳にします。それらは大抵、古い唄を今どきの歌手が「カバー」しているものです。恐らく、作り手の30代、40代の人間にとってなつかしく、また若者にとって新鮮な楽曲ということで、企画の安直さが透けて見えますね。

  例えば、モーニング娘。から分かれた``W''(ダブル・ユー)というユニットが今年出したマキシ・シングル「恋のバカンス」ですが、タイトル曲は1963(昭和38)年にザ・ピーナッツが歌ってヒットしたものです。このディスクには他に、「月影のナポリ」「悲しき16才」といういずれも60年代のヒットソングが収められています。

  何回も、歌手を変えて繰り返しカバーされてきた曲もあって、例えば「コーヒー・ルンバ」などが思い出されます。原曲はベネズエラのもので、1961(昭和36年)に西田佐知子(関口宏の奥さん)が歌い、ヒットしました。こんな歌詞です。

「昔アラブの 偉いお坊さんが/
恋を忘れた あわれな男に/
しびれるような 香りいっぱいの/
琥珀色した 飲み物を/
教えて あげました」(中沢 清二 訳詞)

  その後、荻野目洋子が1992(平成4)年に歌い(アルバム「流行歌手」所収)、さらに井上陽水が「UNITED COVER」という全編カバー曲からなるアルバムの中で、歌ってるんですね。荻野目洋子のや陽水のものは、学生の皆さんも耳にされたことがあるでしょう。私としては、やっぱり西田バージョンのスカスカな感じのアレンジが一番耳に心地よいです。

  ちなみに、この曲には「クスリ・ルンバ」というバージョン(1971〈昭和46〉年、歌:アントニオ古賀)もあって、これはメロディに載せてひたすらクスリの名前を並べ立てるというコミック・ソングです。歌詞はこんな感じ。

「アリナミン エスカップ オロナイン パンビタン/
オロナミン グロンサン ルピット チオクタン/
アスパラ サモンポリック ロイヤルゼリ/
リポビタン ルル エースパンシロン マミアン ベンザ」

で、この「カバー」ということばはごく最近使われるようになったもので、一昔前には、「リバイバル」と呼んでたんですね。実は結構古くから、リバイバル・ヒットというのはあるようです。例えば「人生劇場」(作詞:佐藤惣之助、作曲:古賀政男)。尾崎士郎原作「人生劇場」が1938(昭和13)年に映画化される際、主題歌として作られた歌で、オリジナルは楠木繁夫が歌いました。「やると思えば どこまでやるさ/それが男の 魂じゃないか」というあれです。これを1959(昭和34)年に、村田英雄が歌って大ヒットしました。

  もう一つ、「君恋し」(作詞:時雨音羽、作曲:佐々紅華)を挙げておきましょう。

「宵闇せまれば 悩みは崖(はて)なし/

みだるる心に うつるは誰が影/

君恋し 唇あせねど/

涙はあふれて 今宵も更け行く」。

フランク永井が歌い、1961(昭和36)年度の第3回日本レコード大賞を受賞しています。実はこの歌、1929(昭和4)年に二村定一が歌ったのが最初です。作詞の佐々紅華(さっさこうか)(1886〈明治19〉~1961〈昭和36〉)は、「カフェーの夜」の大当たりを始め、大正時代の浅草オペラの隆盛を支えた作家で、お伽歌劇「茶目子の一日」の作詞作曲や、「祇園小唄」の作詞でもよく知られています。またグラフィック・デザイナーとしての仕事もあって、大変な才人でした。歌手二村定一は、佐々紅華とのコンビで多くの歌を歌っています。佐々の没年を見て分かるように、フランク永井が「君恋し」を歌った年に亡くなっており、このリバイバル・ヒットを喜んでいたそうです。大戦をまたいで甦った名曲であり、作者の感慨もひとしおであったでしょう。
(終わり)

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