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2005年12月 7日 (水)

煮売屋

ここで取り上げた「煮売屋」について、詳しいテキストを桂米朝『米朝落語全集』第6巻(創元社、1982, ISBN4-422-76006-8)で見つけました。とりあえず引用しておきます。

清「しかしあんまり大きな声で腹が減った腹が減ったてなこと言いなや」
喜「なんでえな」
清「大阪者がみっともないがな」
喜「大阪者は腹減らんかえ」
清「そら大阪者でもどこのもんでも腹は減るけれども、大きな声で腹が減った腹が減ったてな、お前……お百姓に聞かれても面目ないがな」
喜「そやけど腹が減ってんのは腹が減った言わなしゃあない」
清「さあさあそこを粋言葉(すいことば)しゃれ言葉で言えんかちゅうねん」
喜「粋言葉しゃれ言葉いうたら」
清「つまりやな、らはが北山底でも入れよか、てなこと言うたら人に聞かれてもわからんやろ」
喜「わしが聞いてもわからん」
清「お前が聞いてもわからなんだらしょうがないがな」
喜「へッなんのこっちゃいない、らはがきたやま」
清「つまりな、はらをひっくり返してらはや、北山はすいて見える……はらが減った、らはが北山、底でも入れよか、飯でも食おかとこうなるねん」
喜「はーん……ほなつまり……ひっくり返して言うたらしゃれ言葉か」
清「まあまあ、ひっくり返して言うたらわかりにくいな」
喜「なんでもひっくり返るか」
清「そらなんでもひっくり返るがな。人間五りん五体ひっくり返らんこところはないわ」
喜「はらがらはか……、ほなまぁ胸やったら」
清「ねむ、やがな」
喜「そうか、肩は」
清「たか、てなもんや」
喜「背中は」
清「なかせや」
喜「ほな頭は」
清「たまあといきんかいな」
喜「でぼちんは」
清「ちんでぼ、てなもんや」
喜「あはなるほど、鼻は」
清「なは、や」
喜「口は」
清「ちく、や」
喜「目は」
清「め……まあええ」
喜「まあええことあれへんがな、さあ、目をひっくり返してもらいまひょ」
清「大きな目むきよったな。目はひっくり返らん」
喜「なんでや」
清「なんでてお前、目てなもんは肝心なもんやがな。な、こんなもんひっくり返したら物が逆さまに見えるで、目はひっくり返らん」
喜「あーそうか……ほんなら手は」
清「手……」
喜「目に手、毛に歯てなものはどないなる」
清「そんなもん選りないなお前、ぎょうさんあるんやなおい。お前の今言うたんはみな一字や、一字のものは上から言うても下から言うても一緒やがな。二字から上やったら何でもひっくり返るがな」
喜「そうか、ほな耳わい」
清「耳……」
喜「なにか清やん、やっぱり耳ひっくり返したら物が逆さまに聞こえるか」
清「さからいないな」
喜「耳に乳、頬(ほほ)に股(もも)てなものはどうなる」
清「なんぼでも出てくるのやな」
喜「な、お前なんでもひっくり返る言うたけれども、ひっくり返らんもんがぎょうさん出てきて、ことまにぼくめんだいしもないとは思わんか」
清「そらなんのこっちゃ」
喜「誠に面目次第もないをひっくり返した」
清「お前のほうがうまいのやがな」(45~47頁)

これが、現在分かっているズージャ語の最古のルーツです。この話がいつ成立したか、分かったらまた書きます。

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