「者」を「しゃ」と読むこと
私が勤めています、某国立なにわ大学で、事務方の人々が変わった言葉遣いをしているのが気になっています。それは、「者」という語を「しゃ」と読むことです。例えば学内規定の設置や改訂について議論しているとき、
第三条 委員は次の者をもって構成する。
のような文面を、「いいんは つぎのシャをもって こうせいする」と発音するわけです。口頭でいろいろ説明する場合でも「このシャは、三ヶ月学費を滞納しておりまして」などと使われています。(関西なんで、「このシャーは」という風に長音化されることが多いです)
最初、うちの学部の事務員さんの、個人的な読み癖なのかな、と思っていたらそうではなくて、本部をはじめ全学で使われているようです。教員ではあんまり使う人はいませんが、事務員さんと会議をしているときは、話を合わせて「しゃ」という場合もあります(わたしもついそうしてしまいました)。
正直言って気持ち悪いのですが、そういうスタンダードができてしまっているので、文句をいうのも大人げない気がします。「もの」は多義なので、聞き誤りを防ぐためにそういう習慣ができたのかも知れません。知りたいのは、この読み癖がどの程度広まっているのか、という点です。
- うちの大学の中だけのことなのか。
- 他大学でもそうなのか。ひょっとして、文科省あたりで使われているのがうつった?
- それとも法務関係の専門用語?
- 一般企業その他で使われることがあるのか?
もし、情報をお持ちの方があったら、教えてください。
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コメント
はじめまして。
「者」を「シャ」と読む話ですけど、役所関係ではたとえば「定められたる者」を「テイめられたるシャ」と読むといった話を目にしたことがあります(出典失念。高島俊男さんの『お言葉ですが……』だったかな)。
最近では普通の読み方になりつつあるということですが、この習慣がどのぐらいの範囲に普及しているかはそこには書かれていませんでした。
参考にならない話で申し訳ありません。
投稿: matsumu_2005 | 2006年1月19日 (木) 23時16分
matsumu_2005様、コメントありがとうございます。参考にならないどころか、これだけで、やはりローカルな習慣ではなく役所関係に広く見られる現象らしい、という推測がつきます。やはり「市立」を「私立」と区別して「いちりつ」と読むような、音声による用字の判別を目的としていたのでしょうかね。
投稿: Skinsui | 2006年1月20日 (金) 07時19分
おはようございます。
役所内部ならいいのかもしれませんが、「シャ」というと、「者」「社」「車」のどれかまぎらわしい、ということはないでしょうか?
ワープロで打つと、意図しない「シャ」が出てきて、結構面倒だったりします…。
投稿: Lionbass | 2006年1月20日 (金) 08時37分
確かに、実は一般的には音読みの方が同音異字を増やすという結果にはなるのですよね。私がひっかかったのも、「者」が使われる文脈で、例えば「物」などと紛れることはまずないのになぜ、という気持ちがあったからです。
投稿: Skinsui | 2006年1月20日 (金) 09時19分
「ついたち」というのも、特に紛れはないのに、事務では「いっぴ」と読みますね。もしかすると「人名音読み習慣」と関係があるのでは。
投稿: 小谷野敦 | 2006年1月25日 (水) 00時57分
なるほど、「いっぴ」もありますね。
ご指摘の、人名に関しては、「よしお」と言えば「義夫」「義雄」「義男」「良夫」等々たくさん表記があるので、たとえば「ぎゆう」といえば「義雄」に表記が決まる、という実用性がありますよね。そういう実用性から出発して、過剰に習慣だけがひろまったということでしょうか。
音読みがより専門的に聞こえる、という効果もあるかもしれません。
投稿: SKinsui | 2006年1月25日 (水) 07時46分
日本は漢文を正統文書と見るのが徳川時代までの伝統でしたから、公文書・法令等では極力名詞を漢語にしています。それが「清岡卓行」を「タッコー」と読む風習につながっているのではないでしょうか。
投稿: 小谷野敦 | 2006年1月25日 (水) 13時33分
近世の、漢語重視の傾向については存じておりましたが、それが現代の役人言葉にまで連綿と受け継がれているとしたら、興味深いことですね。
投稿: SKinsui | 2006年1月26日 (木) 12時50分
ご質問からはや12年。今時、国会で問題になっている厚労省によるデータ改ざん事件。官僚が国会で読み上げるデータ文書のト書部分でシャが連発されました。これ、今年の流行語大賞にノミネートされるんではないかと危惧されるぐらいです。シャをモノと読む方がむしろわかりづらい。これは、ほとんど役人の自己顕示に近いのではないかと邪推するぐらいです。
投稿: あっきやん | 2018年4月 7日 (土) 03時28分
あっきやんさま、コメントありがとうございます。この投稿自体の存在を自分でも忘れていました。なるほど、国会での答弁にもこの「シャ」が連発されていたのですね。たしかに、公務員としてのアイデンティティーが表現されているようにも感じられます。
投稿: Skinsui | 2018年4月 7日 (土) 09時51分
以前、卒業式の表彰で「以下の者を表彰する」という場面で「シャ」と読んで違和感を持ったが、読み上げた人の間違いではなく言い方として存在するんですね。その人も国立系の事務部門をいくつか移動している人でした。
投稿: 筒井 正文 | 2020年6月27日 (土) 15時24分
筒井正文さま、ありがとうございます。まさしく文科省由来と思わせる語法ですね。
投稿: 金水 敏 | 2020年7月 2日 (木) 16時38分
私は以前、厚労省系の大学校に勤めていました。そこの事務も「しゃ」と言っていました。その学校は文科省系の大学には対抗心を持っていましたから、とくに文科省由来ということではないかもしれません。
今日、加藤厚労大臣がテレビで「しゃ」と言っていました。画面のテロップは「人」になっていました。普通の言葉でしゃべればいいのに。
投稿: ooryo | 2020年8月24日 (月) 12時34分
法律では、シャとモノは違う意味になります。
漢字の「者」はシャと読み、「もの」と読むものは平仮名で表記された場合です。
“者”は、法律上の人格者(人、法人)を言います。
“もの”は、法律上人格の無い存在(団体等)をいいます。
ですので、法律や行政文書を扱う人は「者」をシャと言います。
他にも分かりやすい所だと、
遺言はイゴンと読みますし、
兄弟姉妹はケイテイシマイと言います。
投稿: とも | 2021年7月21日 (水) 18時59分