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2006年3月21日 (火)

名儒にして俗物

このたび退職される、同僚の後藤昭雄先生にいただいた、『大江匡衡(おおえのまさひら)』(人物叢書、吉川弘文館、ISBN4642052356)を読了しました。

後藤先生は、大学院の一年生の時の演習で、匡衡の詩集『江吏部集(ごうりほうしゅう)』を読まれたという因縁がおありとのことで、退職の年に匡衡についての著作を出されたことに特別の感慨を持たれたとのことでした。

例によって、平明にして要を得た名文で、すらすらと楽しく読めました。

大江匡衡は、藤原道長と深いつながりを持ち、当時名儒と謳われた人物ですが、不明にして今までわたしはまったく知識がありませんでした。紫式部と同時代人で、奥さんは歌人として有名な赤染衛門です。

感動の生涯が展開されるのか、と思ったら、まったく別の意味で驚きました。「稽古の力」を信じ、精進のおかげで多くの有名な文章を残し、天皇や東宮の講師となった人ではありますが、彼の関心事とは、とにかく家名を高からしめ、自身や子の栄達を願うこと意外になかったという、どちらかというと俗物に類する人だったようです。望む官職が得られないと、大げさに歎き、すね、あげくに孔子の悪口まで言い出す始末。これって、神父が神を呪うようなもんですよね。ひとたび順調にことが運ぶと、有頂天になって、所や場面もわきまえず、自身の功績や家柄の立派さを大げさに称揚し始めるわけで、ちょっと常軌を逸しているところがあります。

まあこれも、ある意味「人間味にあふれてる」と言えなくもないわけで、いわゆる偉人の伝記ではないところがとてもおもしろかったです。

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