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2006年3月 5日 (日)

曲者

野口武彦先生著『大江戸曲者列伝 太平の巻』(新潮新書、ISBN:4106101521)読み終わりました。野口先生の筆はますます冴えています。こういう、短いエッセーを集めた読み物だと、野口先生の文章のうまさは一層際だつように思えます。

野口先生は私のもと同僚だったわけですが、2000年に神戸大学を退職されたあと、著述に専念しておられます。知ってる人は知ってることですが、野口先生ご自身、「大学曲者列伝」に悠々列せられるような大曲者で、いくつもの武勇伝をお持ちです。人からも聞いたし、本人からも伺ったし、私もその片鱗に触れさせていただいたこともあります。先生の、大学人の型にはまらない生き方に、私はいろいろな意味で勉強させていただきました。

さてこの本、江戸時代に生きたさまざまな階層・職業の人々の、味わい深いエピソードを集めたもので、この『太平の巻』に続き、『幕末の巻』も刊行されています。本寿院、勝小吉、平賀元義といった、本当に型破りな人物の話もおもしろいのですが、松崎こう堂(「こう」はりっしんべんに「兼」)、川路聖謨のように、地味な人生を歩んでいた人が、危機に直面して思いがけない活躍をするというタイプのエピソードに、野口先生の真骨頂が現れているように感じました。

野口先生の筆力の卓抜なること、ドラマチックな人生の局面を、生き生きと眼前に浮かび上がらせるがごときで、読み終わると、よくできた時代映画を何本も見たような満足感が得られます。『幕末の巻』も買って読みたいと思います。

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