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2006年4月18日 (火)

妙な出会い

友人・知人でも、普段出会わない場所でひょっこり出会うと、とても不思議な感じがするものですね。その人だと、すぐには気づかないこともよくありますし。

先週、用があって、阪神尼崎駅から少し離れたバス停で、北行きのバスを待っておりました。そのバス停は、「平安会館」という大型葬祭施設の真ん前にあります。折しも、一つの告別式が終わり、出棺を見送るために遺族・関係者が会館の前に出そろったところでした。相当地位のある方らしく、会葬者の数はざっと見て100名を越えるかという感じでした。

前のバスが行ってしまった直後で、私はその縁もゆかりもないお葬式の出棺の模様を、見るともなく、しかしつぶさに見るはめになりました。こちらは日常の中でバスを待つ人、回りにはお葬式という非日常のまっただ中にいる人々であり、眺めているこちらとしても、好奇心はそそられるけれど、どこか居づらいような、微妙な距離感があるわけです。特に、ご遺族の中には目を泣きはらした若い子供たちなどもいらっしゃって、正視するのも忍びないご様子です。

そこに、会館の中から白い棺が運び出され、数人の男性会葬者が担いで、霊柩車に運び入れました。そして、おそらく祭儀を取り仕切られたであろう、威儀を正した僧侶が出てこられて、ご遺族とともに第1号車に乗り込まれました。

その導師を見て、「あれっ」と思ったわけです。一瞬考えて、すぐにそれがどなたか、思い出しました。「訓点語学会」という学会でいつもご一緒し、親しく話をさせていただいている、花野憲道師でした。

花野さんは、吹田市にあるお寺の貫首をなさっていますが、学会でも活躍され、またわれわれにも親しく接して下さいます。いつも朗らかで、ざっくばらんなお人柄の方なのですが、さすがにご葬儀の最中とあっては、難しい、威厳のある顔付きをなさっていました。

とっさに、「あいさつすべきか」と考えましたが、当然あきらめました。とてもそんな雰囲気ではないし、よそ様のお葬式に導師様に声を掛けるなんて、非常識ですからねえ。

すぐ近くに知人がいながら、私とその方との間には越えがたい空気の壁がある、そんな雰囲気の中で、会葬者一同は次々とバスや車で会館を出て行きました。ほどなく、私もやってきたバスに乗り込み、会館をあとにしました。

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