dVC分析:ヒーロー(ヒロイン)は誰か
続きです。
dVCは、ラングドン教授の視点を中心に物語りが進行する、謎解きのストーリーになっています。そういう点では、ラングドンがヒーローということになるでしょう。しかし、ラングドンの人間性は、変化することがありません。常に客観的で、事実をありのままに見ようとする、「見る人」なのです。成長がない、という点で、Hero's Journeyの定義からすれば、真性のヒーローとは言えないと考えます。だいたい、探偵ものにおける探偵は、ここでいう意味ではヒーローたり得ない、というのが通例ではないでしょうか。
この物語におけるヒーロー(ヒロイン)は、間違いなく、ソフィー・ヌヴーでしょう。dVCは、ヌヴーが自分の家族を見つけ出す物語なのです。
Hero's Journeyは少年の自立の物語であると書きましたが、それは生まれ育った環境を飛び出して、自分自身の家族を見つけ出す、という物語でもあるのですね。自分自身の家族とは、幼くして生き別れた実母・実父・兄弟であったり、恋人であったりするわけですね。そして、ヒーロー・ヒロインは、旅立ちを動機づけるために、あらかじめ親が失われている、あるいは親の愛を受けられない、という設定がとても多いのです。例えば、スター・ウォーズのルーク・スカイウォーカー、ハリー・ポッター、ロード・オブ・ザ・リングのフロドなど。タイタニックのローズもそうです。スタンド・バイ・ミーの主人公の少年も、父に愛されないという悩みを抱えて、森への冒険に旅立ちます。
ソフィーの両親は事故死していて、祖父であるジャック・ソニエールに育てられます。そのジャックの死が、ソフィーの旅立ちを動機づける訳です。なお、話がそれますが、映画「ダ・ヴィンチ・コード」でソフィーを演ずるオドレイ・トトゥは、「アメリ」のヒットで注目を集めた女優ですが、この「アメリ」もまた、典型的なHero's Journeyであったわけです。アメリは、幼いときに母を亡くし、父の手一つで育てられますが、父は愛情薄い人物として描かれています。アメリは、壁の裏に隠された、ビー玉の詰まった缶に導かれるように、他者と出会う旅に出て、最後に恋人を得るのです。
dVCは表面的には、歴史上隠されてきた聖杯伝説の謎解きの旅の物語ですが、そこに、家族捜しの物語が重ね合わされていることに注目したいと思います。
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