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2006年6月22日 (木)

地名の四つ仮名

現代仮名遣いでは、「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」ではザ行の方を本則とし、語の連合によって生じる濁音(いわゆる連濁)と、同音連呼の「ちち」「つつ」を語源とする場合に限り、ダ行の方を用いることになっています。

ところで、「小千谷」「沼津」「宝塚」等の地名については、現代仮名遣いの適用範囲かどうかという点がそもそもはっきりしていないようです。

もし適用範囲であるならば、これらの地名が一体的なものか、「たから+つか」のように二語に分解すべきものなのかが問題となるでしょう。その場合、「べんきょうづくえ」のような、普通名詞における二語の連合とはかなり性質が違うと言わなければなりません。つまり「勉強机」は「べんきょう」と「つくえ」に分かれることが、意味と形態の本質をなしているわけですが、「宝塚」が「たから」と「つか」に分かれることは、宝塚の指示対象にとってなんの本質にも関わりません。

そのような点から、「たからずか」が正しい、という結論に傾くように思われます。

一方、「適用範囲でない」ということになれば、こんどは「たからずか」と書いても「たからづか」と書いてもいいことになります。言い方を変えると、例えば宝塚市が「うちは『たからづか』だ」と宣言すれば、宝塚市を指し示す限りにおいて、「たからづか」が唯一正しい、ということになるでしょう。

参考までに、Googleでのヒット数(概数)を、「たからずか」「たからづか」「タカラズカ」「タカラヅカ」および、「ぬまず」「ぬまづ」「ヌマズ」「ヌマヅ」を調べたので、上げておきます。なお、「小千谷」をやらなかったのは、「おじや」=雑炊の方が誤ヒットしてしまう可能性があったからです。

たからずか 211 ぬまず 2,860
たからづか 52,900 ぬまづ 61,900
 比率 0.4  比率 4.6
タカラズカ 11,800 ヌマズ 3,340
タカラヅカ 314,000 ヌマヅ 14,500
 比率 3.8  比率 23

なお、「比率」とあるのは、ザ行のヒット数÷ダ行のヒット数の百分率を表します。

これを見ると、片仮名も平仮名も、「宝塚」も「沼津」も、とにかくダ行の方が用例が多い、ということは言えます。しかし、平仮名と片仮名ではずいぶん様子が違うし、「宝塚」と「沼津」でも割合がかなり異なるようです。

概して、平仮名より片仮名の方が、ザ行が容認される傾向が強いということがまず言えます。これは、片仮名の方がより表音的な文字として受け入れられやすいから、ということがありそうです。

それから「宝塚」と「沼津」では、「沼津」の方がザ行が占める割合が高いと言えます。これは、例えば、宝塚市や宝塚歌劇団が「たからづか」の方を採用しているため、その影響力のもとで、「づ」の使用がより大きい割合を占めるだ、という考え方ができそうです。「たからづか」「タカラヅカ」には、ブランド力があるということでしょう。

なお、パソコンや携帯の仮名漢字変換では、「たからずか」「ぬまず」は正しく変換してくれないケースの方が多いようです(ATOKはしてくれない)。これはこれで問題があるようにも思います。

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コメント

駅名などはローマ字表記もあるはずですが、"D"と"Z"のどちらになっているでしょうか?
ちなみに、東京の京王線・笹塚駅は、ひらがなは「ささづか」、ローマ字は"Sasazuka"となっています。↓
http://www.keio.co.jp/traffic/train/jikoku/jikoku050325/05_sasazuka/index.htm


ところで、ローマ字表記においては、「ぢ」「づ」も"Z"にするのが「本則」でしょうか?

ワープロ(パソコン)でローマ字入力する時は、日本語の「じ、ぢ」「ず、づ」に合わせて”Z"と”D"を使い分けないと、正しく入力できません。
「は」と「わ」でも、同様の問題がありそうです。

投稿: Lionbass | 2006年6月23日 (金) 08時33分

ローマ字表記は、昭和29年の内閣告訓令・告示に第1表と第2表が掲げてあり、「一般に国語を書き表す場合」は第1表により、「国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情がある場合に限り」第2表によっても差し支えないとされています。

第1表というのは、いわゆる日本式というもので、「さしすせそ」はsa si su se so、「たちつてと」はta ti tu te toと書きます。また第2表というのは、いわゆるヘボン式(標準式)というもので、「さしすせそ」はsa shi su se so、「たちつてと」はta chi tsu te toと書きます。

つまり日本式は、「50音図に従い、同一行は同一子音」という原則を立てているのに対し、ヘボン式(標準式)は「子音は英語式、母音はイタリア語式」になっています。

小学校でローマ字を教えるときは、第1表、つまり日本式が採用されていますが、駅名標示や道路標示などでは、ヘボン式(標準式)が圧倒的に多いですね。

それで、四つ仮名ですが、日本式なら zi zu di du のように書き分けることができますが、ヘボン式(標準式)では書き分けはできません。基本的には、ji zuしかない、ということになるでしょう。つまり、日本式は仮名の転写であるのに対し、ヘボン式(標準式)は、表音的で、仮名とは関係がありません。

なお、日本式なら「四つ仮名が書き分けられる」というだけで、どう表記されなければならない、という規範はさだめられていません。現代仮名遣いは平仮名の書き分けについて規定しているだけで、ローマ字表記については範囲外です。

ということは、日本式ローマ字を使って、現代仮名遣い式に書いてもいいし、歴史的仮名遣い式に書いてもいいし、別の書き方をしてもいい、ということです。

なお、「笹塚」のローマ字表記ですが、こういう場合はたいていヘボン式(標準式)になっているので、当然 Sasazuka だろうと思います。

なお、宝塚も、仮名表記は「たからづか」、ローマ字表記は Takarazuka が一般的です。Takaraduka はめったに見ないし、読めないですよね。

投稿: SKinsui | 2006年6月23日 (金) 15時45分

ありがとうございます。

助詞の「は」は、ワープロは"ha"と打たないと出ませんよね。

一方で、「ローマ字」として、外国人に分かってもらう意図で書く場合は"wa"が普通だと思います。
(以前、会社で、今はなき「テレックス」の打ち方を習った際、助詞の「は」は"wa"とせよと教えられました。)

ということは、2種類の”ローマ字”を使い分ける必要がある、ということになりそうです。

ちなみに、テレックスでは、「い」は"yi"、「う」は"wu"とするように言われた気がします。

投稿: Lionbass | 2006年6月23日 (金) 16時02分

テレックスの表記は、関わった人にしか分からない、興味深いご教示でした。ありがとうございます。

ワープロのローマ字入力は、仮名を出すための入力なので、仮名文字を区別することに第一の目的があるわけですよね。だから、厳密な意味でのローマ字表記とは別のものだろうと思います。

投稿: SKinsui | 2006年6月23日 (金) 16時44分

うろ覚えだったのをだんだん思い出してきましたが、テレックスには大文字(もちろんアルファベット)と数字・記号しかありません。

そして、シフトキーで「アルファベット」⇔「数字・記号」を切り替えるのですが、普通のパソコン・タイプライターと違い、シフトキーを一度押すと、次に押すまでずっと切り替わったままになります。

このため、現在のパソコンなどでの入力とは違った注意が必要だったと思います。

投稿: Lionbass | 2006年6月24日 (土) 13時21分

Lionbassさま、興味深いお話をありがとうございます。テレックスは、いつ頃まで使われていたのでしょうか。今でも現役なのでしょうか。

投稿: SKinsui | 2006年6月25日 (日) 14時23分

「ウィキペディア」↓によると、テレックスは海外で1930年代にサービスが始まり、日本へは50年代に導入されたようです。
その後、70~80年代にピークを迎えたものの、ファックスやインターネットの普及により、2005年3月で姿を消したとのことです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9

<以下引用>
1931年5月にスイスのベルンで開催された第3回CCITにおいて、Donald Murrayの作成したBaudot CodeをITA2として国際テレックス網の標準文字コードとした。

1931年11月21日に世界初の公衆テレックス網サービスであるAT&TのTWX (TeletypeWriter eXchange) が開始された。1933年10月16日にドイツでなど各国でサービスが開始された。

1950年代には、企業に広く普及し、物流や商取引、通信社のニュース配信、気象通報で多く使われた。

軍用指揮通信などの特殊な用途では現役であるが、商用では、1980年代のコンピュータネットワークの構築や、ファクシミリの登場、1995年頃からのインターネットの普及で、多くの一般商用のテレックス通信は電子メールに移行された。


日本では(中略)、アメリカとの国際サービスが1956年9月1日から、東京~大阪間の試行サービスが1956年10月25日から開始された。

以来、外国との取引が多い商社やホテルなどの企業を中心に普及したが、前述のようにコンピュータネットワークやファクシミリ、インターネットの台頭で、国内テレックスは加入数が1976年の約7900をピークに減り続けた。また、国際テレックスも1984年度の5,200万の利用をピークに減り続けた。

設備の老朽化もあったため、2002年6月にNTTコミュニケーションズの国内サービスが中止され、KDDIが提供する国際サービスも2005年3月31日限りで終了した。
<引用終わり>

投稿: Lionbass | 2006年6月26日 (月) 11時15分

Lionbassさま、
ご丁寧にありがとうございます!私も、最近は、困ったときのWikipedia頼みです。
(ちなみに、Wikipediaには私の名前も項目に挙がっています。たった2行の書きかけ項目ですが)
しかし、国際テレックスが去年まで営業していた、というのは、ある意味意外でしたね。

投稿: SKinsui | 2006年6月26日 (月) 20時35分

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