読了本:『大江戸庶民いろいろ事情』
発行年月日:2005/01/15
サイズ:A6判
ページ数:333
ISBN:4-06-274981-5
定価(税込):600円
著者は、印刷関係の生業を持つ素人小説家にして江戸研究者らしいです。文章のあちらこちらに、プロの歴史学者(特にマルクス系)への不審・憤懣が吹き出しているところはご愛敬ですが、歴史考証は大変説得的で、目うろこ的な知識に満ちています。特に、エネルギー問題・エコロジー問題から江戸時代の産業・経済・生活を考察する視点がとても新鮮でした。江戸の水道システムがとても勝れていたというところなど、『東亰(とうけい)時代―江戸と東京の間で―』と併せて読むと、一層興味深いです。
本書の叙述でおもしろかったところはいろいろあるのですが、次の箇所ははっとしました。
神前結婚が日本の伝統的な婚礼だと思っている人も多いが、もともと日本の結婚は非宗教的で、法的には、妻あるいは婿として人別帳に書く、今ふうにいえば籍を入れることで成立した。婚礼の司式を神道の神官が行う神前結婚は、東京日比谷の大神宮が明治三十三年(1900)に始めたのが最初だった。キリスト教の神父や牧師が司式をして献金を受けるのにヒントを得て始めた新事業なので、江戸時代の一般の婚礼には、神官も僧侶も関係しない。(219-220頁)
こういう事実を見るにつけ、「伝統っていったい何?」という疑問がふつふつとわき上がりますね(別のところで読んだ知識ですが、寺社への「初詣」も明治時代に始まった風習だそうです)。
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