西脇綾香は電気グルーヴの夢を見るか
8月の、学科のバス旅行の「しおり」に掲載するエッセーを書きました。
========
皆さんがこの文章を読む頃には、もう飽きてると思うのですが、Perfumeにはまってます。ニュー・アルバムの『Game』と初回リリースDVD付きシングルCD『love the world』を買って、通勤の車中で毎日のように聞いています。何でPerfumeは52歳のおっさんを夢中にさせるのか?というのがこの小文のテーマです。Perfumeにもおっさんにも興味のない人、ごめんなさい。
Perfumeは、"テクノアーティスト"と言われております。『Game』がチャートの1位をとったのは、テクノアーティストとしては25年ぶりの快挙だそうで、その25年前のアルバムとはYMO『浮気なぼくら』(1983)だったのですね。そうです、私はYMO大好き世代なのです。Perfumeを聞いていると、どうしても「ライディーン」や「テクノポリス」(『Solid State Survivor』所収、1979)を思い出してしまうのです。
いわゆる「テクノ」音楽は、もちろんシンセサイザーによる電子音、シーケンサーによるメロディやリズムの"打ち込み"にその特徴があります。私の疑問は、私は(そして多くの人は)なぜ、人工的な電子音に快楽を感じるのか、という点にまで行き着きます。私はオーケストラでフルートを吹いていた人間なので、アコースティックな音楽にも十分魅了される訳ですが、電子音楽が大衆化し始めたころから、たちまちその無機的な音色に心を奪われてしまいました。最初の衝撃は、1968年に発売された『スイッチト・オン・バッハ』(Walter/Wendy Carlos)で、私は弱冠12歳でした。私の友人には、電子音に一切快楽を感じない人もいるのですが、私を始め、多くの人間が心地よさを感じたからこそ、これらのアルバムはヒットした訳ですよね。人類の歴史の中に突然現れた電子音をなぜ人が心地よいと感じるのか、私の「なぜ」という疑問には、今のところ、解答がありません。
また、打ち込み音楽は、単純なパタンを延々と繰り返すことを得意とします。私を含め、多くの人は、この"ミニマル"なパタンの繰り返しにも、陶酔的な快楽を感じるのですね。スティーヴ・ライヒとか、フィリップ・グラスとか、いわゆるミニマル・ミュージックに通じるもので、アフリカやインドネシアなどの民族音楽にもその源泉があると言われます。私も、ライヒやグラスが大好きです(多くのジブリアニメの音楽を担当している久石譲も、ミニマル・ミュージックの流れを汲む人です)。
つまり、Perfumeの音楽には、52歳のおっさんが気持ちいいと感じるものがはじめから詰まっていたのですね。YMOと、Perfumeをプロデュースした中田ヤスタカの間には、ヴァンゲリスとか石野卓球とかトランスとかハウスとかいろいろ挟まってるけど、本質はあまり変わらないように思います。広島市出身の19歳の女の子3人も魅力的ですが、どうも歌ってる彼女たちはアンドロイドのようです。それがまたかわいいんですけど。で、タイトルの解説の前に紙幅が尽きたので、宿題と言うことで……(ヒントは一応、本文に入れてある)
| 固定リンク
コメント
娘が高校の夏休みの英語の宿題(『ア・・・・・は電気ヒツジの…』を読む。)に四苦八苦していたのを思い出しました。
投稿: もぷしぃ | 2008年7月22日 (火) 06時52分
もぷしぃさま、コメントありがとうございます。
お嬢さんの高校の先生は、すごい宿題を出しますね!SFファンなのでしょうか……
ちなみに、この小説を映画化した『ブレードランナー』の音楽を担当していたのが、ヴァンゲリス、というのが種明かしの一つです(お分かりでしたよね?)
投稿: SKinsui | 2008年7月22日 (火) 18時44分
ご無沙汰しております。
わたしも、電子音楽に心躍らせ、ミニマルミュージックに陶酔的な快楽を感じる人間です。博士の電子音楽・ミニマルミュージックのプチ講座、大変共鳴いたします。
Perfumeは確かに大ヒットですね。イントロが流れてくるだけでアンテナがフル回転してしまいます。彼女達は、声にも巧みにボコーダーがかかってるし、無機質演じているところが確かにアンドロイド的ですね。誰でもいいといえばいいのではないかとも思いますが、彼女達の若干の田舎くささと洗練された楽曲のミスマッチも、共感を呼ぶのかもしれません。わたしもPerfume結構聞いてます!
投稿: K出版:I.M. | 2008年7月22日 (火) 19時20分
IMさま、コメントありがとうございます
そういえば、IMさんもフルート奏者でしたね。音楽の感性が近いのかも
「ミスマッチ」よくわかります。私の学生の一人も、Perfumeの魅力は「アンバランス」にあると言ってました。だいたい、同じようなことを感じているのでしょうね。
投稿: SKinsui | 2008年7月22日 (火) 21時41分
昨夜読んで、はて何だろう、と思ったのですが、本日の帰宅時、カーラジオで初めて聞きました。
この手のものが流行ると、あるいは「ハイスクール・ララバイ」に相当するものも出て来るかもしれないけれど、私には、多分もう楽しめないだろうな、と頭の固くなってしまった自分を振り返ったことでした。
投稿: 空山 | 2008年7月22日 (火) 22時03分
空山さま、コメントありがとうございます。
Perfumeの「ハイスクール・ララバイ」ヴァージョン! それは思いもよりませんでしたが、「あるかも」と思いました。
「ハイスクール・ララバイ」は、テクノを一気に大衆化したという意味で、けっこう重要な作品だそうです。そうかもしれません。軽いけど、印象に残る曲でしたね!
投稿: SKinsui | 2008年7月22日 (火) 22時28分
おひさしぶりです。チョコレイトディスコ♪はよく聴きます。
テクノといえば、私は中高校生のときよく聞いたスーパーカーが思い出されます。コーネリアスとかもそうなんですかね。
読んでいて感じたのですが、
52歳のおじさまは、
木村カエラやパフュームの
アンドロイド的な女の子に惹かれる傾向があるようですが、
これは何かわけがあるのでしょうか?
それとも個人的趣向??
投稿: なかがわ | 2008年8月 8日 (金) 23時40分
なかがわさま、お久しぶりです。働き過ぎで体をこわしてないですか。
>それとも個人的趣向??
あ、たぶんそうです。パフュームの音楽とは別に、気持ちが弾かれるのは、西脇綾香こと「あーちゃん」が広島弁丸出しでしゃべるときで、つまりどうやらわたしは
「女性による、(女性であることの)ステレオタイプから逸脱した言動」
に惹かれてしまうわけで、これは平たく言えば「ギャップ萌え」ということになってしまうのでしょうね。52歳であることとはあまり関係がなさそうな、ありふれた嗜好です。
投稿: SKinsui | 2008年8月 8日 (金) 23時54分