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2008年11月 4日 (火)

盛者必衰

毎年使っている日本語史の資料に、『平家物語』の「祇王」の段が入っています。

平清盛が栄華を極めていたころ、祇王・祇女という姉妹の白拍子(歌って踊る女芸能者)が、これも白拍子の母・とぢと暮らしていました。祇王は見目麗しく、芸も達者であったので、清盛の寵愛を受け、一家そろって裕福なこと限りがありませんでした。

ところが、京に「仏」と名乗る17歳の白拍子が彗星のごとく現れ、京中の人々が大いにもてはやしました。仏は、清盛に認められてこそ本望と考え、自ら清盛の許に推参しましたが、すげなく追い返されてしまいました。ところが、それを哀れと見た祇王の取りなしで、面会が叶いました。

仏は歌も舞もすばらしく、清盛はたちまち気に入って、自分の許にとどめようとしました。仏は祇王の手前、断りましたが、清盛は「祇王がいるのが悪いのなら、いますぐ祇王にいとまを出す」と言って、祇王を家から追い出し、むりやり仏を手元にとどまらせました。

このあと、祇王にとって屈辱的な出来事もあり、とうとう祇王は妹と母と共に出家して山の庵での修行の暮らしを始めました。

ある夜、庵の戸をたたく音がして、「魔物が修行の妨げをするか」とおそるおそる開けてみると、そこには髪を下ろした仏の姿が。世の無常を感じた仏が、祇王を慕って清盛の屋敷から逃げ出してきたのでした。その後祇王たち母子と仏は本懐を遂げ、四人ともに成仏したとのことです。

この教材を学生に紹介するとき、ミュージシャン・TKと彼をとりまく女性たちの栄枯盛衰を、祇王や仏の運命に重ね合わせて説明するということを、一頃やっていました(例えば、清盛にTKを、祇王にK原T美を、仏にA室N恵を重ねるとか)。分かりやすいということで、けっこう受けたものでした。最近は、TKがマスコミに取り上げられることが減り、学生たちにもぴんとこなくなったので、そのネタは封印していました。

さて、今日のTKの逮捕です。最近、橋本治の『双調平家物語』全巻を読了したこともあって、清盛および平家一門の末路と、TKの凋落とが私の中で自然に重なり合いました、あらためて、「盛者必衰」という平家物語のテーマをしみじみ思い知らされたことです。

『平家物語』が描く平家の栄華って、TKが活躍したバブル経済のころと、妙にダブるのですよね。単なる個人的なイメージですけど。

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