木管精神注入会
1月30日(金)、東京で、T大オーケストラの同窓会がありました。上は昭和45年入学から、下は51年入学まで、木管パートを中心に(ホルンがお一人、あとなぜかチェロがお一人)、計20人ほど集まりました(私は50年入学フルート)。当時、木管パートは自分たちのことを「木管精神注入会」と呼んでいたので、それが宴会のタイトルとなりました(この名称で演奏会もやっています)。なんでホルン(48年入学 Kさん)とチェロ(48年入学 Hさん)がいるかというと、当時から木管パートの雰囲気になじんでた数少ない人たちだからです。
この会、もともと、私が東京に出る用があったので、ファゴットのMさん(48年入学)に会いませんかとお誘いしたら、どうせ会うならみんなに声をかけて賑やかに、ということになって、あれよあれよという間に人数がふくれあがりました。
場所は、本郷3丁目の中華料理店「棲鳳閣」。このお店は、我々が学生当時「大同」という名前で営業していて、練習終わりにみんなで立ち寄っては、中華丼と白乾児(パイカル。中国の焼酎)で盛り上がっていたのでした。何人で入っても、注文を一回聞いたら忘れない「朝子さん」という名物ウェイトレスさんがいました(そのことは、今回久しぶりに思い出した)。
オーケストラのパート(弦、木管、金管、打楽器)には、パートごとの雰囲気があって、同じパート内では結束しながら、よそのパートとは微妙に(時に派手に)反目し合ったりしたものでした。弦楽器は繊細な気取り屋さんと、羊のようにおとなしくて優しい人たちが集まっています。金管は軍隊チックな結束力がありました。打楽器は、暴力性と繊細さが同居した、個性的な人が多かったように思います(すみません、木管の偏見がかなり入ってます。弦、金管、打の皆さん、お許しください)。
木管楽器は、よく言えば「野蛮なロマンチスト」と言いますか、プライドが高く、バンカラの気風があって、権威主義や気障な気取り屋を嫌っていました。「精緻」「無粋」が合い言葉で、賞賛と非難はだいたいこの2語ですまされていました(「清瀧の味噌汁、精緻!」などと変な使い方をしてました。ちなみに、清瀧は池袋の安酒場で、メニューは当時大部分が2桁の値段でした。そのこと自体、「精緻!」なわけです)。時に、「みそぎ」と称して、自分たちの師匠(トレーナー)までも風呂にたたき込むなど、暴力性を発揮したりしました(親愛の表現なのですが……)。まあ、いま思えば、未熟で独りよがりな、ガキっぽい集団でしたけど、中にいると、ひたすら楽しかったです。私の精神性も、この木管パートで形成された部分が大きいと、今更ながらに思います(きのこ趣味も、このころからのものです)。
そんな変な集団ですから、はっきり言って、女性には徹底してもてませんでした。女性が木管に入団しても、次々やめて別パートに移っていったものでした。みんな女性の扱い方がよく分からなくて、そのとまどいが時としてセクハラっぽい行動になってしまって、いたたまれなくて女性部員が出て行く、というのが真相だったろうと思います。オケの女性部員全員から、木管パートは嫌われていたと思います。その中で生き残った女性の木管部員は、それは図太いわけで、そんなサバイバーの女性も同窓会に二人いらっしゃってました(ちなみに、お二人とも結婚相手は木管ではなくて金管パートの部員です)。
この「木管精神注入会」の、それこそ精神的な支柱が、48ファゴットのMさんだったわけです。音楽的センスがずば抜けていて、演奏もめちゃくちゃうまいのですが、そのことをひけらかさないし、あまり自分から前に出て行かないのにみんなが一目おく、という存在でした。文章もうまくて、ユーモアがあって独特の美学が感じられました。当時から私はMさんを心の師匠として、崇拝してました。木管精神注入会の美学的な部分は主にMさんが、過激な暴力性は同じ48ファゴットのSさんが主導していたように思います(Mさんは、ヨーロッパ映画に詳しい文筆家で、未だに若々しくてかっこいいです)。
久しぶりに会うと、さすがにみんな年は取ってしまっていますが、酒が入るとフルスロットルで30年前に戻ってしまいます。文字通り飲めや歌えのどんちゃん騒ぎで、私も久しぶりにおはこだった「ひょうたん島踊り」を踊ってしまいました。
最後は、本郷三丁目駅前のクラシック喫茶「麦」で、コーヒーとジャムトーストでしめ、11時頃解散となりました。いやあ、楽しかったです。Mさん、皆さん、ありがとうございました!
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コメント
オケ卒業後,何十年もお会いしていないにもかかわらず,かなりの高率で「名前」がわかってしまいました.ナンバさんもいるじゃないですか.遠景にいるのはタテイシくんか.立っているのはひょっとしてオオシオさんか.なつかしいです.われわれ「繊細にして暴力的」な打族は,昨日,新百合ヶ丘にて某トレーナーの八十歳をお祝いするパーティを催しました.
投稿: leeswijzer | 2009年2月 1日 (日) 17時27分
leeswijzerさま、ありがとうございます。
>立っているのはひょっとしてオオシオさんか
残念でした、立っているのは中華料理屋の親父さんです。オオシオさんは、上から3枚目奥の方からめがねを光らせてこっちを見てる人です。隣でピースをしてるのがアキヤマさん。
投稿: SKinsui | 2009年2月 1日 (日) 18時21分
> 奥の方からめがねを光らせてこっちを見てる人
左から三番目ですね.おお,確かにこの顔だちはオオシオさんだっ.
投稿: leeswijzer | 2009年2月 1日 (日) 19時57分
では、答え合わせ。
1枚目、左から
イチオカさん(45Fl)、クボタさん(48Hr)
2枚目
ハセガワさん(48Vc)、サノさん(48Fl)、オオヤマさん(48Fl)、タテイシさん(51Fg)、キノシタさん(48Cl)、クラサワさん(48Cl)、サイトウさん(51Fl)、マツダさん(51Ob)
3枚目
サイトウさん(51Fl)、マツダさん(51Ob)、オオシオさん(50Fg)、アキヤマさん(49Fg)、コガさん(49Cl)、アラマキさん(50Fl)、クニナカさん(51Cl)、ナンバさん(51Fl)
4枚目
クニナカさん(51Cl)、ナンバさん(51Fl)、ムラオカさん(29Fl)、ミヤガワさん(49Fl)、モリモトさん(48Fg)
分かりました?
投稿: SKinsui | 2009年2月 1日 (日) 20時18分
「解答集」をありがとうございます.
> サイトウさん(51Fl)、マツダさん(51Ob)
さすがに奥まってお姿が小さすぎて判別できないなあ.でもサイトウさんは生え際の特徴でかろうじて,マツダさんはそのオーラで.
> アラマキさん(50Fl)、
ウェブサイトで拝見したことがあるので正答.
> クニナカさん(51Cl)、ナンバさん(51Fl)
ナンバさんを見間違えたらコロされますぅ.
> ムラオカさん(29Fl)
49のムラオカさんですね.コワイほど過去の記憶そのものです.ミヤガワさんも.ところがモリモトさんをはずしてしまったー.
投稿: leeswijzer | 2009年2月 1日 (日) 22時02分
leeswijzerさま、
クボタさんの写真もいただきましたので、再確認してください。
投稿: SKinsui | 2009年2月 1日 (日) 22時17分
こちらのブログでの何気ないやり取りが、近来にない大宴会にまで発展してしまいましたね。ほんとに楽しかったです。
お互い天命を知る年になったのだから、小津安二郎の「秋刀魚の味」じゃないけれど(「魚偏に豊と書いて『鱧』」、「いやー、愉快愉快」)、大人しく越し方行く末でもしみじみ語り合おう、などと思いをめぐらしながら本郷に足を運びましたが、甘かったですね。皆さんの顔を拝んだ途端に三十有余年の昔にタイムワープして、「野蛮なロマンチスト」たちの跳梁跋扈する、「木管精神注入会」ワールドの真っ只中。しかし、終わった直後は、ずいぶんいろんなことをしゃべったつもりになってましたが、時間がたってみると一体何をしゃべってたんだろうと言いたくなるほどに、しゃべり足りなかった気持ちでいっぱいです。次回は、オケの定宿だった岩井の民宿あたりで宴会合宿でも開いて、夜を徹して語り合いでもしなければ収まりがつきません。
あれほど女性と縁のなかったメンバーも、数名のうらやましいようなそうでないような独身主義者(?)を除いて、それぞれいっちょまえに家庭を持つ身となっているのですから、「未熟なガキ」どももちょっとは成長したというべきなんでしょうか。しかし、一児の親になったとはいえ、私など未だに女性の扱い方がわからなくて戸惑うことしきりですので、注入会の呪縛は今も続いていると言いましょうか、注入会は永遠に不滅ですといいましょうか……。
「ひょうたん島踊り」すごく懐かしかったですが、心なしか以前よりもその踊りっぷりが、洗練と円熟味を増しているように思われました。お仕事柄、そうそう場数を踏んで芸に磨きをかけるというわけにも行かないでしょうから、もしかしたら今回の宴会に向けて、ご家族に内緒で、お風呂場かどこかで密かに特訓をつまれたのではないかと……
投稿: マストルナ | 2009年2月 2日 (月) 11時24分
マストルナさま、ありがとうございます。
>洗練と円熟味を増しているように思われました。
いえ、多分筋肉が鈍くなって、力強さがなくなっただけだと思います。晩年のカール・ベームの指揮ぶりのような、といえば明らかに言いすぎですねえ……
天命といえば、皆さんの現世でのご活躍もびっくりしました。人生折り返し、やがて煙となって、「人間はせんぐりせんぐり生まれて死んで、うもうできとる」(『小早川家の秋』)などと言われる年も近いのでしょうが、まだまだ娑婆気の強い方ばかり、頼もしいと申しますか、鬱陶しいと申しますか……いやいや妄言失礼いたしました、次回はぜひぜひ徹夜バージョン、楽しみにしております!
投稿: | 2009年2月 2日 (月) 12時17分