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2009年7月

2009年7月26日 (日)

wakamaru と船渡御

7月25日、奉拝船(御迎え船)「阪大船」による船渡御参加も、今年で5年目になります。これまでの記録は下記の通り。

ことしは、「御迎人形 wakamaru プロジェクト」の統括をやっていたので、これまでとは違う緊張感でこの日を迎えました。御迎人形というのは、元禄時代から御迎え船に載せていた人形で、伝説や浄瑠璃から題材を取って作られていました。今年の天神祭では現存する16体の御迎人形をすべて公開して、観光の目玉にしています。その計画を発案した高橋幸次先生が、阪大船にも御迎人形を載せてはどうかと提案され、それなら阪大らしくロボットを御迎人形にしよう、「鬼若丸」(弁慶の幼名)は現存するので、ロボットは牛若丸にしよう、という運びになりました。

私が石黒浩教授にお願いしたところ、wakamaru (三菱重工業製)にしてはどうかとおっしゃっていただき、三菱重工にも連絡してOKをもらいました。石黒研からは、プログラミングに小泉准教授、学生の築坂さん、嶋田さんが加わってくれることになりました。

また装束は、武田理事のご紹介で平安装束体験所の福呂一榮さんがご協力くださることになりました。福呂さんは平安装束普及のためと、ギャラなしでお手伝いくださいました。また装束作成には学生の香川さんと熊谷さんも参加しました。

7月20日、中之島センターで天神祭をテーマにした講演会があり、大阪大学総合学術博物館の橋爪節也先生と、高島先生がお話をされました。またそのとき、御迎人形のwakamaru もデビューしました。装束(水干)はとてもかわいく出来てきて、wakamaru によく似合っていました。wakamaru は「大阪締め」も披露しましたが、こちらはたどたどしい感じで、それがまた愛くるしくもありました。

Dsc05387

高島先生が宣伝してくださったこともあり、wakamaru はマスコミの興味も惹きつけました。そのため、連日、取材対応に追われることにもなりました。五大紙+大阪日々新聞、テレビ大阪、NHKがこぞって御迎人形 wakamaru を取り上げました。

さて、25日、心配されたのは雨でした。連日、中国・九州地方では豪雨のため死者を含む多数の被害を出しています。朝から、かなりの勢いで雨が降っていました。ついに今年は雨にたたられるか、と半ば観念していました。NHKでは11時台の「ぐるっと関西」で wakamaru が登場、天満宮御伽衆の馬場尚子さんがご紹介してくださいました。

午後はまず神戸大学文学部に出向き、学会の会議に参加しました。その間も相変わらずの小雨模様です。4時に神戸大を出て、阪急・地下鉄と乗り継いで都島の飛翔橋へ。途中の電車の中でも讀賣の記者さんから問い合わせの連絡が入ってきます。

到着すると、すでに wakamaru はスタンバイ完了。雨対策でカッパを着ています。取材関係者も来ていました。出航前のセレモニーで私がプロジェクトの経緯を紹介し、wakamaru による大阪締めも披露されました。音声がうまく拾えず、wakamaru の声がよく聞こえなかったのが残念でしたが、かわいいと評判でした。

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6時半過ぎ船は出航し、いつものように行き交う船と大阪締めを交換しながら天神橋の手前でUターンし、帰ってきました。wakamaru も手を振ったり大阪締めをしたりして、愛嬌を振りまきました。去年に比べて奉拝船の数が減ったため、すれ違う船の量もかなり少なく感じました。雨と満潮のため、帰りには源八橋で wakamaru の頭が橋桁にぶつかりそうになりひやっとしましたが、何とか体を倒して難を逃れました。

それにしても、出航前こそぱらぱら降っていた雨が、その後はほとんど降らずに持ったのは、奇跡とも思えます。宮司さんが神の存在を確信した気持ちも分かる気がします。

無事船着き場に戻り、wakamaru も片付け、さて帰ろうとすると、高島先生の一行にばったりと出会い、天満宮で宮入神事を見ないかと誘われました。阪大国文の卒業生で、大阪天満宮文化研究所のお手伝いをしている高嶋藍さんもいっしょでした。地下鉄で都島から南森町に出て、天満宮境内の研究所でまずビールを飲みながら一休みしました。別の御迎え船に乗っていた馬場尚子さんも合流しました。中学校の同級生ともばったり出会いました。肝心の宮入りは見逃してしまったのですが、「後の祭り」状態の境内の雰囲気を少し楽しむことができました。11時過ぎ、天満宮を後にして、JR東西線で西宮まで帰りました。

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神様

ことしも天神祭で船渡御に参加しました。詳しくは別項に書きますが、気になった一言。

昼間かなり雨が降って、船渡御の実施もあやぶまれたのですが、夜にはほぼ止んで大過なくすべての行事が行われました。大阪天満宮文化研究所の高島先生に教えていただいたのですが、天満宮の宮司さんが、

(雨が降らなかったことに対して)

「神様て、いてはるんやなあ」

とつぶやかれたとか。(宮司さん、そこ、疑うてたん?)と突っ込みたくなります

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2009年7月24日 (金)

日本語における中心と周縁

ここで日本語の方言について書きましたので、ついでにこちらも上げておきました。ご参照ください。

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2009年7月20日 (月)

方言のコストパフォーマンス

学科のバス旅行のしおりに投稿予定の原稿です。

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 「おっぱいバレー」という映画がある。北九州を舞台にしながら、主役の綾瀬はるかやバレー部の少年たちを初め、福岡弁を話す人間が一切出てこない。不自然と言えば、不自然。特に、当地で育った方が見たら、さぞかしこそばゆい思いをされることだろう。風景はばりばり、戸畑なのに。似たような現象はいくらでも見つかる。テレビドラマ「Dr. コトー診療所」は、ロケ地が与那国島だそうだが、出てくる人々は共通語か、そうでなければ、いわゆる〈田舎ことば〉(田舎っぽいが、特定の地域を感じさせないヴァーチャル方言)を話しており、琉球語は片鱗も聞かれない。こういった問題を、映画やドラマの作り手の立場から見ると、コストパフォーマンスという観点が重要になってくるように思われる。

 ここで言うパフォーマンスとは、なによりもまず伝達上の効率のことをさす。一番大事なのは、伝わりやすさ、即ちその言葉を使って、できるだけたくさんの人々に理解されるかどうかということである。この点で、共通語がもっとも高パフォーマンスであることは言うまでもない。日本語圏であれば、誰であれ、確実に通じるからである。

 では、すべてのフィクションは共通語だけで作られればいいのかというと、そうとも言えない。方言には共通語にはない、別の効果がある。まず舞台が地方であれば、方言を含めたその地方らしさが作品のアクセントであったり、作品の重要なモチーフであったりする。また共通語基盤の作品の中で方言を話す人物が出てくれば、その人物は例えば"無教養""愚鈍""純朴"といったイメージをまとったキャラクターとして登場してくることだろう。キャラクターの描き分け、という点で、方言はとても重宝である。たとえば、2008年度下半期にNHKで放送されていた朝のテレビ小説「だんだん」では、双子の姉妹(三倉茉奈・佳奈が演じていた)が生まれてすぐ引き離され、京都と島根でそれぞれ育てられたという設定で、成人し、再会してもそれぞれ京都弁(舞子言葉)と島根弁を使い続けていた。これは特に、双子の姉妹を視聴者が区別しやすいように、方言を使い続けさせる必要があったためと推測される。

 ところがここで、特定の方言を使用した場合に生じる、別の問題が生じる。方言がどれだけ"本物っぽい"かという点である。方言が中途半端に再現されると、地元の方にとってはこれほど不快なことはない。先の「だんだん」の例で言うと、ドラマの中で島根の人たちは何かというと「だんだん」という感謝の挨拶を口にする。ところが現実の、地元の人に聞いてみると、「だんだん」は必ず「だんだん、だんだん」と繰り返して使うのが普通で、「やさしくしてくれて、だんだん。」のような使い方は非常に変に聞こえるそうだ。

 方言は"リアリティ"という独自の価値で計られる。リアリティが高いということは、つまり"本物"っぽい、ということで、一応"いいこと"と評価される。ところが、このリアリティを高めれば高めるほど、最初に述べた伝達上の効果が薄れるリスクを帯びる。つまり、広範な日本語使用者に通じにくくなるのである。特に青森の津軽方言とか、琉球のウチナーグチとか、土地の人以外にはほとんど通じない言葉は、よほど限定された効果をねらってのことでなければ使用できない。一般に、方言のクオリティ(=リアリティ)と、伝達容易性というパフォーマンスは相反関係にある。

 次に、コストの面から考えてみよう。共通語は、伝達の効率において最高のパフォーマンスを有するとともに、コストにおいても最も経済的である。共通語の台詞は、脚本家なら誰でも書けるし、共通語で演じる役者は最も豊富に存在する。ところがいったん、方言を作品に導入するとなると、さまざまな問題が生じ、余計なコストが生じる。当該の方言で演じられる役者が十分調達できるとは限らず、調達できてもできなくても、"方言指導"という役割のスタッフを余分に雇わなければならない。方言指導者のもとで台本のチェックや、演技の確認など、余分の時間を費やすことになる。たとえ入念な方言指導が仮に実現できたとしても、役者によって方言再現能力の隔たりが大きいし、そもそも方言は演技のための言葉としての洗練を経ていないので、リアルであっても演技として成立しない、という場合も出てくる。そこで、ほとんどは共通語を基盤とし、わずかに文末や特定のセットフレーズに方言らしさをちりばめた、いわば"なんちゃって方言"でお茶を濁す、という処理に落ち着くことがしばしあである。「だんだん」の島根弁などはそのいい例であろう。また、初めから方言のリアリティ追求を諦め、ステレオタイプな〈田舎ことば〉で我慢しておくという手もある。〈田舎ことば〉はもともと役者の中に入っている演劇的言語の一部であり、コストゼロで導入できるのである。「Dr. コトー診療所」はまさしくそのように処理されていた。

 ここまで書いてきて、二点気づかれることがある。一つは、共通語の本質である。共通語とは、パフォーマンス面においてもコスト面においても最も好ましい性質を持っていることが確認されたが、ある意味でこの言明は逆転している。つまり、近代以降、話し言葉においてコストパフォーマンスを上げるべく洗練を経て生き残ったのが共通語(標準語)だったのである。これは、書きことばにおけるいわゆる言文一致体の形成と平行している。

 もう一点、いままで方言一般について述べてきたが、関西弁はその中で明らかに特殊であり、他の方言とは一線を画している。関西弁は、中世の能狂言は措くとしても、近世以後の浄瑠璃、歌舞伎、上方落語、にわか、漫才、曽我廼家五郎劇、松竹新喜劇、吉本新喜劇等々、長らく舞台言語として琢磨されてきたのであり、その歴史は共通語(~東京語~江戸語)よりも古い。そしてそれに見合うだけの、演技者の厚みがある。クオリティの高い関西弁を使いこなす役者を、老若男女、容易にそろえることができる。即ち、関西弁は他の方言から抜きんでて、コストパフォーマンスが高いのである。作品のアクセントとして関西弁キャラクターを配した作品は枚挙に暇がないし、登場人物すべて関西弁という作品だって、容易に成立する。このようなことは他の方言ではとうてい考えられない、関西弁独自の特質である。  (以上)

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2009年7月13日 (月)

こくばる

東国原氏の、中央政界進出に対する批判が相次いでいることを、テレビが伝えています。それを見ながら

私「ちょっと、調子こいてるよなあ」

妻「コクバルが、なあ。」

私「……チョーシコクバル」

妻が笑ってくれたので、少し、うれしかったです。

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おろし

久々の、戯れ歌。

このところ 六甲おろしは 鳴りもせで 響くは麻生 おろしばかりぞ

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2009年7月 6日 (月)

器具

「睡眠時無呼吸症候群」の治療器具を借りて使っています。

こんなセットです。

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装着の仕方は下記の通り。

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確かに、着けて寝た翌朝から、起床時のぼんやり感や日中の眠気が大幅に改善されました!

今は1週間のお試し期間ですが、保険を使って1ヶ月4,500円ほどになるようです。

将来直るかどうかは分からないので、一生のおつきあいかも……

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2009年7月 5日 (日)

披露宴

教え子のOさんのご結婚式が平安神宮であり、披露宴に参加しました。新郎も、専門違いの同業者で知人です。

お二人のお人柄の表れた、楽しい会で、芸術性も豊かでした。

(写真は期間限定で公開)

(写真の公開は終了しました)

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講演会終了

こちらでご紹介しました講演が無事終了しました。

あいにくの雨模様でしたが、定員30名程度のところ、60名あまりの皆様がお詰めかけくださいました。感謝に堪えません。有り難うございました。

終わってから、来てくれていた高校の同窓生のH君と食事をして帰りました。久しぶりでお互いの家庭のことなど報告し合って話に花が咲きました。

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役割語メモ

6月30日に行われたサイエンスカフェの記録をこちらにアップしております。

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日本ローマ字会

京都を歩いていたら、偶然、「日本ローマ字会」の建物に出会いました。

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ホームページがありました。こちらです。

いわゆる「日本式」(五〇音図の仮名書きに従って、「し」を shi ではなく si と書く方式)の流れを汲む組織です。ホームページの「会の沿革」がとても勉強になりました。

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