えらいこと
桂米朝師匠が文化勲章を授与されたことを伝える朝日新聞の記事で、米朝師匠の談話として、
えらいこってんやろな
という見出しが出ていました。米朝師匠らしい、大阪弁の談話として見出しに取り入れられたのだろうと思いますが、しかしこれは大阪弁としては誤りだと思います。正しくは、
えらいこってんねやろな
だと思います。このフレーズ、丁寧に言うと、
えらいことですねんやろな
となり、これを共通語に翻訳しますと、
(きっと、世間的には)大変なことなのでしょうね
になります。「自分としては、それほど実感がないのだが」という師匠の戸惑いにもにた感情が表されています。
もとの見出しに抜けていた「ね」は「ねん」すなわち「のだ」にあたる形態素で、この文にとっては必須です。たとえ一音節でも、一瞬にして聞き取って解析できる、これが「母語」の能力というものなのでしょう。
ちなみに、
もう宿題だしてんやろな
(もう宿題をだしたのだろうね)
のように動詞につながる場合は、「てんやろ」という接続は可能です。最初の師匠の談話の中の「てん」は共通語「です」に当たるもの、上の動詞につながる「てん」は「~たのだ」に当たるもので、語源がことなるわけです。
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コメント
なるほど~。
関東人の私としては
えらい勉強になります。
・・・間違ってる?
投稿: 杏 | 2009年10月29日 (木) 23時38分
杏さま、
あ、10点満点です
投稿: SKinsui | 2009年10月29日 (木) 23時59分
コメント、はじめてですが、
いつも、ほんとにいつも、楽しんでます。
で、
「ね」でもいいんですけど
「にゃ」あるいは
「小さい『に』に小さい『や』」
という感じ
でもあるのでしょうか、
と、ちょっと研究者ふうの役割語。
新聞、よんだとき、「へんや」と
たしかに思いました。
知らんひとが書かはったんやろな
と思いました。
投稿: 愛されるべき隣人 | 2009年11月 5日 (木) 02時03分
隣人さま、ありがとうございます。
「にゃ」だったかもしれませんね。
「えらいこってんにゃろな」
記者会見の録画をもう一度見てみたいです。
投稿: SKinsui | 2009年11月 5日 (木) 09時06分