書籍・雑誌

2017年12月15日 (金)

(書評?)『女性らしい手紙文の書き方』

 某書評サイトでボツになった(というか、自分からひっこめた)文章です。他の先生方はとても立派な書評をかいていらっしゃったので、ひっこめてよかったです。

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書名:『女性らしい手紙文の書き方』

著者:中西弥生 出版社:日本文芸社

出版年:昭和49年6月5日16版発行(初版の刊行年は不明)

ISBN: 0270-07114-6016

定価:550円(昭和49年第16版の価格)

 私の書評の対象は、「実用書」である。いわゆる手紙の書き方の指南書である。第16版の定価は550円だが、私はこれをBOOK・OFFで100円(税抜き)で買った。アマゾンでは古書として、3円で買える(2017年11月13日現在)。たぶん、このサイトで紹介される本の中では一番安いだろう。著者の中西弥生氏については、まったく情報がない。この本以外に著書は今のところ見当たらない。そんな、一見地味な本書を、私は強く勧めるのである。これはとんでもない本だ。「実用」という概念を遙か斜め上に超越して、中西弥生氏の筆は暴走を繰り広げる。それが一体中西弥生氏の経験に基づくのか、豊かな妄想なのかもよく分からないような、書名には似つかわしくない愛憎の世界が繰り広げられるのである。

 まず、「はしがき」から読んでおこう。

はしがき

 手紙は、その人のすべてを代表するものなのです。

 ですから、手紙は自分の気持ちなり、用件なりをあなたにかわって相手にこころよく、ゆかしく、わかりやすく伝える使者なのです。

 その使者の出来、不出来が、とんでもない結果を招いたりすることがありますから、一通の手紙でも、かるはずみに書かないことです。

 日ごろから心がけて、誠意のこもった手紙を書くようにしておれば、いつの日にか必ず尊敬や信頼や幸運が、あなたのもとに訪れてくるようになります。

 女性の手紙は、かたく、かたにはまった、きゅうくつなものであってはならないのは勿論ですが、かといって悪ふざけしたり、奔放すぎたり、品のないものでもこまります。

 どこまでも女性らしい上品さと、ゆかしさ、うるおい、しとやかさのあるものでなければなりません。

 この本は、分かりやすく、しかも、正しい上品な文例を豊富に示しながら手紙の書き方を自然に自分のものにしていただけるよう心がけました。

 心からの美くしい手紙が書けるようになってくださるようお祈りしております。     著 者

 うむ、ごく穏当な滑り出しだ。きわめてまっとうだ。しかしこのはしがきの一言一言が、あとでじわじわ効いてくるのを、私たちは思い知ることだろう。

 さて、この本の特徴は、とにかく結婚、恋愛に関した手紙が異様に多いことである。まず軽いジャブから。

〔結婚した友へ〕(女子文)

 御結婚なさったとのご通知、楽しく拝見いたしました。心からお祝い申し上げます。  もう新婚旅行からもお帰りになって、すばらしい、あまい生活をなさっていらっしゃることと思います。御感想はいかが……。とにかく何もかも楽しくってしょうがないんじゃないかしら。  おしとやかで家庭的なあなたのことだから、もうすっかり板について、初々しい若奥様ぶりを発揮していらっしゃることでしょう。

 近いうちにぜひスイートホームへおじゃまさせていただきますけど、あまり見せつけないでね。それともおじゃまかしら。

 とりあえずお祝いの品おおくりしておきます。お二人で仲良くお使い下さいね。旦那様にもよろしくおっしゃっておいて下さい。ではまた。(p. 23)

 押さえた書き方ではあるが、「何もかも楽しくってしょうがないんじゃないかしら」とか、「初々しい若奥様ぶりを発揮」とか「あまり見せつけないでね」とか、弥生の妄想はすでにむずむずと動き出しているようである。この手紙には、続編がある。

〔友に無沙汰をなじる〕(女子文)

 昭子さん、再三手紙さしあげているのに、ちっともお返事下さらないなんて、いかがおすごしなのでしょうか。御新婚は楽しいものでしょうけど、そんなにお変わりになるものかしら。かつてあんなに親しいお友達だったのに冷たい方。

 でも全然お返事いただけないなんてさびしいわ。きっとあなたがお忙しいからお手紙下さらないんだと思っていますわ。でもね、いまに赤ちゃんができたらそれこそ自分の時間なんてないそうよ。だから今のうちに遊んでおかないとだめなんですって、これでは私と遊んで下さいって、催促しているみたいね。旦那様にうらまれてしまうわね。

 だけど、ほんとに一度御連絡下さらない。あなたの御結婚の感想でもうかがいたいわ。私ももうすぐなのよ。だからそんなお話もしたいし、ぜひ近いうちにお手紙下さいね。お待ちしています。(p. 57)

 「冷たい方。」って、弥生はちょっとせっかちな性格のようだが、「私ももうすぐ」というから、弥生には言いたいことが貯まっているのだ。それがどんなことなのか、ちゃんと書かれているぞ。

〔二人の秘密〕

 いま、お床に入ったのですが、目はさえるばかりで、どうしてもねむれませんの、夜中の一時だというのに。私はまだ、夢の世界をさまよっているようなのです。一緒に行った会社の人たちがロビーで、ピンポンをしたり、テレビを見たりしているとき、そっと私を誘ってくださったあなた、私たちは庭続きの林に入り、夏草の中に並んで腰を下ろしましたね。あなたが何もおっしゃらずに、私の肩を抱いて下さったときの、あなたの体臭が、まだ私の周囲にただよっているようです。そして、はじめての口づけの甘い甘い感触に、私はただ、うっとりと目をつぶっているだけでした。あなたは、口づけのお上手な先生です。ふふ…これから、毎日社で顔を合わせるのが、なんだかはずかしい気がいたします。でも、いままで通り何げない顔で、誰にも分からないように、上手な演技をつづけようと思いますの。

 そして、ときどき、二人だけの秘密の夜の時を楽しみましょうね。(p. 185)

 「あなたの体臭」とか「甘い甘い感触」とか、弥生は意外に経験豊富じゃないか。っていうか、すでにはしがきの「女性らしい上品さと、ゆかしさ、うるおい、しとやかさのある」手紙からだいぶ逸脱してないか。

 だが、弥生の生涯はなかなか波乱に富んでいる。こんな劇的な成り行きが待ち構えている。

〔お別れに〕

  次郎様  こうして、あなたにお手紙を書くのも最後でしょう。私は毎日、何かとおいかけられているような、身のちぢむ思い出暮らしております。あと半月、こんな気持ちで結婚しなければならない私は、なんという不幸な女でしょう。何も知らずにいる先方のお方も、お気の毒でなりません。

 私は今でも、あなたが来いと言って下されば、家を抜けて飛んでまいります。どうして、あなたは勇気を出して、私を呼んで下さらないのでしょう。

 愛するあなたを待ちながら、たった一度の見合いで、好きでもない人と結婚しなければならないなんて、気が狂いそうです。でも私は義理の母との板ばさみになって、自由の道を選ぶことの出来ない、あわれな弱い女です。

 次郎様  あなたは自分が学生の身で、生活力のないことを嘆いておられますが、私もほんとうに今はじめて、身をもってそれを知りました。私に生活力があったら、私はこんなにも悲しまずにすんだものを。

 私達はなんという冷酷な運命に生まれたのでしょう。今となれば、たとえ一年でも、あなたを恋したことがくやしいのです。

 あなたはまだ若く、幸福な未来が待っていますのに、私は恋しい人を心に抱きながら、愛してもいない人に、この体をささげなければなりません。

 次郎様  お願いです。この手紙が着きましたら、もう一度、二人だけで会う機会をつくってください。最後のお別れがしたいのです。(p. 183)

 弥生の心は、千々に乱れて、なんだか論旨もよく分からなくなっているところがある。しかし、「最後のお別れがしたい」って、危険だと思う。お別れではすみそうもない予感がする。

 で、待っていたのはこんな末路だったりする。

〔男にだまされて〕(女子文)

 智子さん突然こんな手紙を書いてごめんなさい。でも誰にも相談できることではないので、思い余ってあなたに御相談したいと思うのです。

 実は一年前から八つ年上の男性と知り合い、彼の言葉を信じて恋愛関係に陥り、つい許してはいけない一線をこえてしまいました。でもそのときは幸福で、公開もしませんでしたが、先日妊娠していることを知って、そのことを彼に話したところ、驚いたことには彼にはすでに妻子があったのです。まさか彼がそんな人であろうとは夢にも思ったことがなく、私は彼を強くなじりました。すると彼は非を認めたものの、「妻と別れることはできないから、ガマンしておろしてくれ」というのです。私は怒りと悲しみで、今は途方にくれています。現在ではもう彼に対する愛情なんかなくなってしまっていますが、でも結婚できないかしらとも考えています。お腹の赤ちゃんはもう四ヶ月にもなっていますし、おろすなんてこわくなってしまいます。前途真っ暗な私、一体どうしたらいいんでしょう。結局は私がバカだったからなんですが、どうしたらよいか、あなたに教えてもらいたいんです。取乱した文になってしまいましたが、お返事お待ちしております。(p. 62)

 こんな相談をされた智子さんもいい迷惑ですね。「一線を越える」とか「妊娠」とか、文春砲も真っ青だぞ。「愛情なんかなくなってしまった」とか、どこかで聞いた台詞のようだ。

 しかし、ふと我に返る。この本は、「実用書」のはずなのに、いったいこんなシチュエーションにどんな実用性があるんだろうか。この範例をお手本にして手紙を書く女性を想像すると、ちょっとくらくら目まいすら覚える。

 ここに引いたのは、ほんの一部である。もっともっと引用したい欲求に駆られるのだけど、紙幅の制約によってこれだけに留めているんです。とにかく役に立つんだかどうだかよく分からない、生々しい女の生き様がこの地味な装丁の本にあふれかえっている。すぐ買って読むべし。安いし。

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2010年3月13日 (土)

ロボット演劇

私のエッセーを含む下記図書が出版されました。とても綺麗な写真満載の、ビジュアルムックです。平田オリザさんのシナリオ、平田さんと石黒浩さんの対談、エッセーなど多彩な内容を含んでいます。

Isbn97848725935941

大阪大学コミュニケーションデザイン・センター(編)(2010)『ロボット演劇』大阪大学出版会

私のエッセーを途中まで(けち!)貼り付けます。全部お読みになりたいかた、ぜひ本書をご購入ください(けち!)

「ええ、まぁ」の言語学―タケオと桃子は二つの"フェイス"の夢を見るか―

金水 敏

 私は「働く私」を見ていて、ロボットが口にした「ええ、まぁ……」という台詞を聞いた時、衝撃を受け、背筋に戦慄が走った。

*祐治、CDをセットしてスイッチを押す。
  「ロボコップ」のテーマが流れる。
郁恵  えぇ?
祐治  どう?
・・・
祐治  (ロボットBに)どう?
ロボB はぁ、
祐治  これ、元気でんじゃない?
ロボB えぇ、まぁ、
       (心なしか、リズムに合わせて、身体をかすかに回しはじめる)

 祐治は、働く気力を失ったロボットA(タケオ)を鼓舞しようとして「ロボコップ」のテーマを聞かせることを、ロボットB(桃子)に提案してみるのだが、ロボットBはその行為の有効性に確信が持てず、その上で、否定的反応によって祐治を傷つけることをおもんぱかり、その結果あえて発した返答がこの「ええ、まぁ」だったのである(この場所以外に、ロボットBは「まぁ、どうでしょう?」「はい・・・まぁ」というせりふを話し、いずれも、似たニュアンスで用いられている)。
 なぜ、私はこのせりふに衝撃を受けたのだろうか。それは、「ええ、まぁ」が、私にとって最も"ロボットらしくない"せりふであるように感じられたからであり、そしてそのことこそが平田さん(平田オリザ氏は私の勤務先の同僚なので、こう呼ばせていただきます)がこのロボット演劇に仕掛けた"わな"なのだろうと感じとった。
 私たちが想像するロボットの会話と言えば、だいたい次のようなものである(平板な、機械的音声を思い浮かべてください)。

  「はい、分かりました」
  「今お持ちします。しばらくお待ちください」
  「計算できません」
  「その単語は、私の知識にありません」

 すなわち、必要最小限の内容を直接的に伝える、よく言えば"効率的"な、悪く言えば"無味乾燥"な受け答えである。むろん、本当にロボットと会話した人はほとんどいなかったはずで、これはSF映画などに登場する、架空のステレオタイプなロボットのせりふである。こうしたSF作品の制作者は、どうせロボットには"人間的"なやりとりなど高度すぎて出来ない(と観客が思う)だろうと見積もった上で、むしろその愚直さ、たどたどしさを楽しむ"トリックスター"的なキャラクターとしてロボットを利用するのが通例であった。いわば、はやりの言葉で言えば、いささかKY(空気読めない)な道化師的存在としてロボットは扱われてきた。そのようなロボットに対する思い込みを、平田さんは冒頭から外しにかかった。そのことを最も象徴的に表したせりふが「ええ、まぁ」だったのである。
 ここで、問題の核心に迫るために、ロボットの会話と「ええ、まぁ」の機能について、語用論 (pragmatics) という一種の意味論の立場から考えてみたい。意味論学者のグライス(H. P. Grice)は、すべての会話の参加者は次のような協調の原理(cooperative principle)に従わなければならないと仮定した(Grice 1975)。

(以下略)

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2008年2月10日 (日)

イトイ効果?

久々に、Amazon.co.jp で拙著『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』のセールス順位を見てみたら、総合で20,499位、「本 > 人文・思想 > 言語学 > 日本語・国語学 > 語彙・熟語」のカテゴリーでは14位、「本 > 語学・辞事典・年鑑 > 日本語学習 > 日本語研究」のカテゴリーでは180位でした。これは、近頃ない健闘です。

だいたい、総合で5桁って、なかなか行かないんですよね。普通は6桁止まりです。

ついでに、『役割語研究の地平』の方も見てみたら、総合で30,495位です。ある意味、こっちの方がすごいとも言えます。なんせ、専門家向けの論文集ですから。

ちなみに、私の博士論文『日本語存在表現の歴史』を見てみると、総合385,674位です。これが普通ってもんです。

これも、「ほぼ日刊イトイ新聞」で取りあげていただいた効果でしょうか?それとも、全国の学生がレポートを書くために買ってくれてるのかな?

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2008年1月19日 (土)

そうかもしれない

先日、NHK BSで映画「そうかもしれない」を見ました。

この映画も、原作者の耕治人も知らなかったのですが、淡々としてしかし叙情的な映像にいつしか引き込まれました。桂春團治と雪村いづみの演技がすばらしかったです。

ほとんど救いのない映画ですが、現実に私の身の回りで起こっていることと重ね合わされて、身にしみました。

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2007年10月 6日 (土)

モスラの精神史

31921523モスラの精神史
小野俊太郎 (2007.7.20)
講談社現代新書
ISBN978-4-06-287901-9

帯コピー:

なぜ蛾の姿なのか?
あの歌の意味はなにか?
ゴジラとどこが違うのか?

多くの謎が、いま解き明かされる!

内容:

プロローグ―モスラの飛んだ日
第一章……三人の原作者たち
第二章……モスラはなぜ蛾なのか
第三章……主人公はいったい誰か
第四章……インファント島と南方幻想
第五章……モスラ神話と安保条約
第六章……見世物にされた小美人と悪徳興行師
第七章……『モスラ』とインドネシア
第八章……小河内ダムから出現したわけ
第九章……国会議事堂か、東京タワーか
第十章……同盟国を襲うモスラ
第十一章…平和主義と大阪万博
第十二章…後継者としての王蟲
エピローグ…「もうひとつの主題歌」

「モスラ」(1961、東宝)は、私が劇場で見たことを記憶している、最も古い映画です(当時5歳)。大変大きなショックを受けて、未だにいくつかのシーンが脳裏に焼き付いています。特に、今でも東京タワーを見るたび、巨大な繭がかかってへし折れたタワーの姿を幻視してしまうのです。

この本は、そんな私にとって、出会うべくして出会った惠みの書でありました。膨大な資料を縦横に駆使し、映画の成り立ちを当時の社会情勢の中にくっきりと浮かび上がらせています。思いもしなかった知識もありますし、何となく気にかかっていたことがはっきりと示され、胸の空く思いがした部分もあります。例えば、東京のミニチュアの見事さに比べて、ラストのロリシカ国ニュー・カーク・シティー(アメリカのニューヨークが重ね合わされている)のミニチュアが妙に出来が悪く、ずっと残念に思っていたのですが、これは一旦撮られたラストシーンが共同制作のコロンビア映画のクレームにより廃棄され、急遽撮り直されたことによるものだったのです。

文化的、社会的、政治的視点をバランスよく配した、良質なサブカルチャー分析で、この種の仕事のなかではお手本となるべき書のように思われました。映画「モスラ」をもう一度見直したくなりました。

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2007年5月22日 (火)

春の雪

仕事をしながら、期待せずにBSフジでやっていた「春の雪」(監督:行定勲、出演:妻夫木聡、竹内結子)を見ました。

原作は読んでいません。三島由紀夫が、食わず嫌いなもので。

案外、良かったです。丁寧に作ってあったと思います。

許されざる恋という設定に、少し胸がうずきました。少年時代、そういうシチュエーションにちょっとだけ憧れていました。

見ていて思いましたが、清顕(妻夫木聡)の役どころは、

ツンデレ男

ですね……

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2007年5月20日 (日)

日本文学 二重の顔

Isbn9784872592351 日本文学 二重の顔
〈成る〉ことの詩学へ

荒木浩 著
(大阪大学大学院文学研究科教授)

大阪大学出版会
四六判・並製・350頁 
定価2,100円(税込) 本体2,000円
ISBN978-4-87259-235-1[2007]

同僚のA先生、柳風子こと荒木浩氏の、上記の著作が、第2594回「日本図書館協会選定図書」に選ばれました。

「日本図書館協会選定図書」とは、日本図書館協会より任命された各専門分野の選定委員約 50 名が、現物一冊一冊に必ず目を通し、公共図書館に適している本として選択するもので、年間 6 万点以上の新刊本のなかから平均 16 パーセントの書籍が選定図書に選ばれているとのことです。

慶賀の至りです。これを機に、一人でも多くの方がこの本を手に取られることを祈念します。

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2007年5月13日 (日)

こんなに面白い日本文学

31828689_1  『こんなにも面白い日本の古典』
角川ソフィア文庫 SP347
著者/訳者名 山口博/〔著〕
出版社名 角川学芸出版 (ISBN:978-4-04-406901-8)
発行年月 2007年02月
サイズ 251P 15cm
価格  700円(税込)

名前を知っていても、だれもちゃんと読んだことのない日本の古典を、現代的な問題に引き付けながら魅力たっぷりに紹介しています。目次をご紹介します。

プロローグ――伏字にくらんだ少年
万葉集      生活のアンソロジー
竹取物語     ガンダーラの秘宝
宇津保物語   王朝アラビアンナイト
大和物語     老人介護地獄
源氏物語     姦通そして老人ホーム
枕草子      虚構の家
池亭記      平安土地白書
栄花物語     王朝ホスピス
今昔物語集   女の魔性
小倉百人一首  和歌は世につれ
撰集抄      アンドロイド閣僚
宇治拾遺物語  知恵者の恋
能         戦いは悪業
奥の細道     覗機関奥之細道
好色一代男   雪江戸郭夜話
懐硯        帰ってきた夫
浮世風呂     教育ママにゆとりのパパ
エピローグ――華氏四五一度

なかなか魅力的なタイトルだと思いませんか。筆者の筆力はなかなかのもので、どんどん引き込まれました。古典に縁遠い人も「一度読んでみたい」と思うかも知れないし、知ってる人でも、あらためて作品の魅力に気付かせられることでしょう。すぐ読めるから、ぜひどうぞ。

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2007年3月24日 (土)

宜保愛子

下記の本を読みました。

Book_07 『と学会レポート ギボギボ90分!』
著者:永瀬唯・植木不等式・志水一夫・本郷ゆき緒・皆神龍太郎(楽工社 06/11)
四六判(188㎜×130㎜)ソフトカバー。208ページ。本文1色刷。
ISBN4-903063-06-2 C0095
定価(本体1600円+税)
(楽工社サイト)

表題はふざけた感じですが、かつて人気霊能者としてテレビや出版物でもてはやされた宜保愛子氏(故人)の、霊視番組のからくりをまじめに綿密に検証した本です。今日の「あるある」騒ぎへの批判にも通じるところが大いにあります。

私がポイントだと思ったところは、宜保愛子氏はホット・リーディング(事前調査)やコールド・リーディング(錯覚を利用したその場での情報の引き出し)に秀でており、とくに非常に高い調査能力を持っていた、というところです。英語も、人に教えるほど堪能だったようで、その能力を十二分に生かしていたようです。しかも、見た目に「こんなおばちゃんが、こんなことを知っているはずがない」という回りの人間の偏見(とくに学界関係者の)があるために、意外な情報を宜保氏が口にすると、余計にうろたえて錯覚してしまうということでした。この辺り、ジェンダー・バイアスもかかっているのですね。

あと、テレビ局の番組の作り方も大変雑であり、そこに宜保氏のつけいる隙があったということも書かれていました。

主たる著者である永瀬氏の発言として、我々研究者・教育者にとっても大変有益であると思われるところがありましたので、引用しておきます。

永瀬 私は専門学校の講師をしているんですが、いつも学生に教えるんですよ。インターネットを使う時に、これはまず「情報の入り口」だと考えることだって。インターネットで何か調べたいときにはいきなり google で検索ワードを引っ張るのではなく、近くの図書館の蔵書を検索してみなさい。次は都立の中央図書館とか日比谷図書館などを検索して、今度は国立図書館の方から取り寄せてもらいなさい。最初にそういうことを教えています。そして図書館で見つけた資料を押さえた上で、補足的なものとしてインターネットのデータは使いなさいと。
 このあいだ、学生に「コカコーラの歴史」という文章を書かせるという課題を出しました。検索をかけると、新宿区立中央図書館に、テーマに関したかなり分厚い翻訳の本が二冊は確実にある。都立中央図書館あたりに行くともっと多くて、経営史とかそのあたりがある。まずこれを読んでみなさいと。その後に念のため google でチェックしてみたら、コカコーラとコカの実のあやしい関係なんかのかなり詳しいページがありますが、ちゃんと末尾の方にクレジットが載っていました。その、さっき図書館にあると言った本から、全部引用しているんです。(176頁)

テレビの、科学やスピリチュアルに関わる番組作りに疑問を持っている人、また逆にそういう番組が好きな人にも、おすすめできます。

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2007年2月12日 (月)

『ベルばら』WS in マンガミュージアム

こちらに、記事を書きましたのでご覧下さい。

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