役割語

2011年1月13日 (木)

公開シンポジウム「役割語・発話キャラクタ研究の展開」

公開シンポジウム「役割語・発話キャラクタ研究の展開」

Yakuwari2011rev

2011年2月5日・6日 於大阪大学大学教育実践センター講義管理棟B218

【プログラム】
1日目 2月5日(土)

10:00-11:00 乙武香里(神戸大学大学院国際文化学研究科院生)
 「キャラクタからみる文末詞「の」」

11:00-12:00 羅米良(神戸大学大学院国際文化学研究科院生)
 「発話キャラクタに関わる文法性判断について」

12:00-13:00 《昼休み》

13:00-14:00 金水敏(大阪大学大学院文学研究科教授)
 「役割語研究の達成と課題」

14:00 -15:00 依田恵美(大阪大学大学院文学研究科特任研究員)
 「外国人キャラクタの役割語をめぐって―洋の東西と二次的ステレオタイプ―」

15:00-15:30 《休憩》

15:30-16:30 勅使河原三保子(駒澤大学総合教育研究部講師)
 「役割語の音声的側面の研究」

16:30-17:30 鄭惠先(北海道大学留学生センター准教授)
                恩塚千代(韓国江原大学日本学科招聘教授)
 「SNS活動「日韓役割語相互学習倶楽部」への参与観察報告―カキコミに見られる両言語学習者の役割語意識―」

18:00-20:00 懇親会

2日目 2月6日(日)

10:00-11:00 岩田美穂(大阪大学大学院文学研究科特任研究員)
                 藤本真理子(大阪大学大学院文学研究科特任研究員)
 「ものいう動物―キャラクターとしての動物のイメージ―」

11:00-12:00 菅さやか(東洋大学社会学部助教)
 「役割語獲得に関する心理学的基盤」

12:00-13:00 《昼休み》

13:00-14:00 渋谷倫子(甲南女子大学文学部講師)
 「心理表現と言語ステレオタイプ―ツンデレキャラの『つっかえ』について―」

14:00 -15:00 西田隆政(甲南女子大学文学部教授)
 「「ボク少女」の言語表現―常用性のある「属性表現」―」

15:00-15:30 《休憩》

15:30-16:30 山口治彦(神戸市外国語大学外国語学部教授)
 「役割語のエコロジー―他人キャラの導入とコンテクストとの関係―」

16:30-17:30 定延利之(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)
 「[抜き読み]日本語社会 のぞきキャラくり」

【主催等】
科学研究費補助金 基盤研究 (B)「役割語の理論的基盤に関する総合的研究」
(課題番号:19320060、研究代表者:金水 敏(大阪大学大学院文学研究科教授)、研究期間:平成19~22年度)

http://www.let.osaka-u.ac.jp/~kinsui/yakuwarigo.htm

科学研究費補助金 基盤研究 (A)「人物像に応じた音声文法」
(課題番号:19202013、研究代表者:定延利之(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)、研究期間:平成19~22年度)
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/products/nihongo/character/index.html

協力:大阪大学21世紀懐徳堂
http://21c-kaitokudo.osaka-u.ac.jp/

【アクセス】
大阪大学豊中キャンパス(10番の建物)

【参加方法等】
どなたでも参加できます。事前登録不要。
ただし、2月5日(土)の懇親会に参加ご希望の方は、1月31日(月)までに kinsui at let.osaka-u.ac.jp までお知らせください。( at を @ に換える)"

【昼食】
2月5日(土)は学内のレストラン・売店が開いていますが、6日(日)はすべて閉まります。学外のコンビニ、レストラン等までは少し距離があります。昼食はご自身でご用意下さい。

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2009年8月 1日 (土)

「ナットク日本語塾」で役割語

NHKアナウンス室のTさんという方から、メールで下記のような連絡をいたさきました。

普段は、教育テレビで放送している「ことばおじさんのナットク日本語塾」という番組の
ディレクターも担当しておりまして、このほど、番組で「役割語」をとりあげることになりました。

金水先生の著作をもとに、2分強にまとめてあります。

きちんとまとまっているのかいまひとつ不安ではあるのですが、お時間がございましたら、ご覧いただければ幸いです。

8月3日(月)午後1:55~2:00
NHK教育テレビ「ことばおじさんのナットク日本語塾」

です。

どんな風にまとめていただいたか、楽しみです。

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2009年7月24日 (金)

日本語における中心と周縁

ここで日本語の方言について書きましたので、ついでにこちらも上げておきました。ご参照ください。

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2009年7月20日 (月)

方言のコストパフォーマンス

学科のバス旅行のしおりに投稿予定の原稿です。

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 「おっぱいバレー」という映画がある。北九州を舞台にしながら、主役の綾瀬はるかやバレー部の少年たちを初め、福岡弁を話す人間が一切出てこない。不自然と言えば、不自然。特に、当地で育った方が見たら、さぞかしこそばゆい思いをされることだろう。風景はばりばり、戸畑なのに。似たような現象はいくらでも見つかる。テレビドラマ「Dr. コトー診療所」は、ロケ地が与那国島だそうだが、出てくる人々は共通語か、そうでなければ、いわゆる〈田舎ことば〉(田舎っぽいが、特定の地域を感じさせないヴァーチャル方言)を話しており、琉球語は片鱗も聞かれない。こういった問題を、映画やドラマの作り手の立場から見ると、コストパフォーマンスという観点が重要になってくるように思われる。

 ここで言うパフォーマンスとは、なによりもまず伝達上の効率のことをさす。一番大事なのは、伝わりやすさ、即ちその言葉を使って、できるだけたくさんの人々に理解されるかどうかということである。この点で、共通語がもっとも高パフォーマンスであることは言うまでもない。日本語圏であれば、誰であれ、確実に通じるからである。

 では、すべてのフィクションは共通語だけで作られればいいのかというと、そうとも言えない。方言には共通語にはない、別の効果がある。まず舞台が地方であれば、方言を含めたその地方らしさが作品のアクセントであったり、作品の重要なモチーフであったりする。また共通語基盤の作品の中で方言を話す人物が出てくれば、その人物は例えば"無教養""愚鈍""純朴"といったイメージをまとったキャラクターとして登場してくることだろう。キャラクターの描き分け、という点で、方言はとても重宝である。たとえば、2008年度下半期にNHKで放送されていた朝のテレビ小説「だんだん」では、双子の姉妹(三倉茉奈・佳奈が演じていた)が生まれてすぐ引き離され、京都と島根でそれぞれ育てられたという設定で、成人し、再会してもそれぞれ京都弁(舞子言葉)と島根弁を使い続けていた。これは特に、双子の姉妹を視聴者が区別しやすいように、方言を使い続けさせる必要があったためと推測される。

 ところがここで、特定の方言を使用した場合に生じる、別の問題が生じる。方言がどれだけ"本物っぽい"かという点である。方言が中途半端に再現されると、地元の方にとってはこれほど不快なことはない。先の「だんだん」の例で言うと、ドラマの中で島根の人たちは何かというと「だんだん」という感謝の挨拶を口にする。ところが現実の、地元の人に聞いてみると、「だんだん」は必ず「だんだん、だんだん」と繰り返して使うのが普通で、「やさしくしてくれて、だんだん。」のような使い方は非常に変に聞こえるそうだ。

 方言は"リアリティ"という独自の価値で計られる。リアリティが高いということは、つまり"本物"っぽい、ということで、一応"いいこと"と評価される。ところが、このリアリティを高めれば高めるほど、最初に述べた伝達上の効果が薄れるリスクを帯びる。つまり、広範な日本語使用者に通じにくくなるのである。特に青森の津軽方言とか、琉球のウチナーグチとか、土地の人以外にはほとんど通じない言葉は、よほど限定された効果をねらってのことでなければ使用できない。一般に、方言のクオリティ(=リアリティ)と、伝達容易性というパフォーマンスは相反関係にある。

 次に、コストの面から考えてみよう。共通語は、伝達の効率において最高のパフォーマンスを有するとともに、コストにおいても最も経済的である。共通語の台詞は、脚本家なら誰でも書けるし、共通語で演じる役者は最も豊富に存在する。ところがいったん、方言を作品に導入するとなると、さまざまな問題が生じ、余計なコストが生じる。当該の方言で演じられる役者が十分調達できるとは限らず、調達できてもできなくても、"方言指導"という役割のスタッフを余分に雇わなければならない。方言指導者のもとで台本のチェックや、演技の確認など、余分の時間を費やすことになる。たとえ入念な方言指導が仮に実現できたとしても、役者によって方言再現能力の隔たりが大きいし、そもそも方言は演技のための言葉としての洗練を経ていないので、リアルであっても演技として成立しない、という場合も出てくる。そこで、ほとんどは共通語を基盤とし、わずかに文末や特定のセットフレーズに方言らしさをちりばめた、いわば"なんちゃって方言"でお茶を濁す、という処理に落ち着くことがしばしあである。「だんだん」の島根弁などはそのいい例であろう。また、初めから方言のリアリティ追求を諦め、ステレオタイプな〈田舎ことば〉で我慢しておくという手もある。〈田舎ことば〉はもともと役者の中に入っている演劇的言語の一部であり、コストゼロで導入できるのである。「Dr. コトー診療所」はまさしくそのように処理されていた。

 ここまで書いてきて、二点気づかれることがある。一つは、共通語の本質である。共通語とは、パフォーマンス面においてもコスト面においても最も好ましい性質を持っていることが確認されたが、ある意味でこの言明は逆転している。つまり、近代以降、話し言葉においてコストパフォーマンスを上げるべく洗練を経て生き残ったのが共通語(標準語)だったのである。これは、書きことばにおけるいわゆる言文一致体の形成と平行している。

 もう一点、いままで方言一般について述べてきたが、関西弁はその中で明らかに特殊であり、他の方言とは一線を画している。関西弁は、中世の能狂言は措くとしても、近世以後の浄瑠璃、歌舞伎、上方落語、にわか、漫才、曽我廼家五郎劇、松竹新喜劇、吉本新喜劇等々、長らく舞台言語として琢磨されてきたのであり、その歴史は共通語(~東京語~江戸語)よりも古い。そしてそれに見合うだけの、演技者の厚みがある。クオリティの高い関西弁を使いこなす役者を、老若男女、容易にそろえることができる。即ち、関西弁は他の方言から抜きんでて、コストパフォーマンスが高いのである。作品のアクセントとして関西弁キャラクターを配した作品は枚挙に暇がないし、登場人物すべて関西弁という作品だって、容易に成立する。このようなことは他の方言ではとうてい考えられない、関西弁独自の特質である。  (以上)

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2009年7月 5日 (日)

講演会終了

こちらでご紹介しました講演が無事終了しました。

あいにくの雨模様でしたが、定員30名程度のところ、60名あまりの皆様がお詰めかけくださいました。感謝に堪えません。有り難うございました。

終わってから、来てくれていた高校の同窓生のH君と食事をして帰りました。久しぶりでお互いの家庭のことなど報告し合って話に花が咲きました。

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2009年5月 6日 (水)

大阪弁と大阪人のイメージの変遷

下記の講演は、新型インフルエンザ発生の影響により延期となりました。再開のめどが立ちましたら、またお知らせいたします。

大阪大学21世紀懐徳堂講座

テーマ:「大阪弁と大阪人のイメージの変遷」(中止)

講師:金水 敏(大阪大学大学院文学研究科教授)

日時2009年5月22日(金)18:30-20:00

場所淀屋橋 odona 内 i-spot (大阪市広報スペース)※大阪市営地下鉄「淀屋橋」駅西側すぐ

主催:大阪大学21世紀懐徳堂

共催:大阪市

概要: けち、派手好き、現実主義、好色、お笑い、やくざ……。マスメディアで大阪弁を話す人が出てくると、だいたいそんなイメージを身にまとった人物と決まっているようです。 一体そんなイメージは、いつ頃、そしてなぜできあがって来たのでしょうか。また、若い人たちの大阪人のイメージはまた違ってきているようですが、それはなぜでしょうか。大阪弁そのものの歴史も含めて、大阪人のイメージの作られ方を、具体的資料を見ながら考えていきます。

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2009年4月28日 (火)

今日で封印

今日、一年生対象の授業で役割語について話し、このネタを見せました。

実は、明日誕生日なので、明日からはもう使えないんです。

偶然ですが、最後の日に使えてよかったです。

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2009年2月10日 (火)

役割語シンポジウム・研究発表会

3月28日・29日、神戸大学で「役割語」「発話キャラクタ」に関するシンポジウム・研究発表会を行います。

「役割語」とは、男ことば・女ことばや、「そうなんじゃ」などの老人語など、人物像・キャラクターによって使い分けられる言葉遣いのことです。

基調講演を、評論家の呉智英さんにお願いしています。

その他、劇作家、放送局の元ディレクター、日本語教師等、言葉に関わる幅広い分野の方々をお迎えしてシンポジウムを行います。

たくさんの方々においでいただきたいと思っています。参加無料ですので、どうぞふるってお越しください(事前登録をお願いしています)。

詳しくは、こちらのサイトをご覧下さい。

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2008年11月23日 (日)

岡山で講演会

ここに書いた講演会に行ってきました。学生さん+一般の聴衆の方にお話しました。

「ゴレンジャー」のビデオがめちゃめちゃ受けました。拍手が起こりました。

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ところで、今回は岡山駅から山陽本線に乗り換え、「西川原・就実」※で降りて就実大学に行きました。駅は大学のすぐ横にあり、大学にとっては大変便利な駅です。大学は、JR西日本に多大な寄付金を払って駅を誘致したそうです。

しかしそれにしても大変簡素な駅で、ホームから1階に降りる通路がすでに雨ざらしで、改札口は完全無人で自動改札ですらなく、「行け行け」状態でした。僻地ならともかく、市街地に「こんな駅もあるのか」と、ちょっと驚きました。

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※なお、JR西日本のホームページなどでは、「西川原・就実」という駅名ではなく、「西川原」で出ています。現地の駅名表示は「西川原・就実」です。大学の要望とJR側の立場との妥協点として、そのような二重性が生じた由です。

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2008年3月 4日 (火)

サンフランシスコから:その4

学会2日め、朝10時過ぎから私の講演が始まりました。主催校のM先生が、ユーモアたっぷりに私の紹介をしてくださり、わたしがそれにツッコミをいれたりして、「漫才のようだ」と言われました。さもありなん、M先生も生粋の関西人でありました。会場が十分温まっていたので(芸人用語)、講演はとてもやりやすかったです。笑いに包まれて楽しく進めることができました(笑いが目的か? そうです、大事な目的です!)。

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お昼前、講演が終わったと思ったら、昼食後に実は「北加日本語教師会 春の例会」というのがセッティングされていて、そこでも1時間程度お話をすることになっていたのでした。何を話すか考えていなかったのですが、とっさにパソコンに入っていた歌謡曲のネタを使って乗り切りました。まあだいたい同年配を中心とした地元の小中高大の日本語教師の方々(大部分女性)30人ほどだったので、古い歌謡曲にとてもよく反応されました(昭和の歌しか入っていない)。

講演2つ分やって、ぐったりでしたが、そのあと学会発表を4つも聞いて、たくさん仕事をした気分になりました。終了後、M先生がご自宅に招待して下さり、T北大のH先生とともにおじゃましました。ゴールデンゲートパークのそばの閑静な住宅街の中、3階建ての驚くほど立派なお屋敷でした(先生は、「モーゲージ(ローン)が大変」とおっしゃっていましたが)。奥さまの心づくしのお料理とカリフォルニアワインをたっぷり堪能しました。

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