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2006年7月25日 (火)

エメエ・アンベールの翻訳

拙稿「役割語としてのピジン日本語の歴史素描」*1では、エメエ・アンベール(著)Japon Illustre(eにアクサン)の翻訳として、茂森唯士(訳)『絵で見る幕末日本』*2を使用していました。

こんど、同じ講談社学術文庫から、高橋邦太郎(訳)『続・絵で見る幕末日本』*3が出たので、買ってみたところ、少し驚いたことがありました。先の茂森訳は、1966年に東都書房から出た『幕末日本――異邦人の絵と記録による』を底本としているのですが、この底本は、ロシア語版からの抄訳本だったのです。改めて茂森訳の文庫本の「訳者のことば」を見ると、翻訳までの経過が書かれていました。茂森氏は元ロシア大使秘書で、赴任時代にモスクワで偶然手に入れたロシア語版を、仕事の合間に翻訳したのでした。高橋訳の文庫本は、茂森訳本からもれている箇所を、フランス語版原著から補って訳出したものです。

なお、エメエ・アンベールの(フランス語版)原著の翻訳としては、新異国叢書から高橋邦太郎氏の訳で1969年、1970年に出版されています*4。原著に近いという意味では、新異国叢書版を典拠に用いるべきでした。

*1 金水 敏 (2006) 「役割語としてのピジン日本語の歴史素描」上田功・野田尚史(編)『言外と言内の交流分野:小泉保博士傘寿記念論文集』pp. 163-177 大学書林
*2 エメェ・アンベール(著)・茂森唯士(訳)(2004)『絵で見る幕末日本』講談社学術文庫, ISBN:406159673X
*3 エメェ・アンベール(著)・高橋邦太郎(訳)(2006)『続・絵で見る幕末日本』講談社学術文庫, ISBN:406159771X
*4 高橋邦太郎(訳) (1969) 『アンベール幕末日本図絵 上』新異国叢書, 14, 雄松堂書店1596731
    高橋邦太郎(訳) (1970) 『アンベール幕末日本図絵 上』新異国叢書, 15, 雄松堂書店Htbookcoverimage_1

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