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2007年3月29日 (木)

最近の東京近辺の学生の自称詞の傾向

荻野綱男 (2007) 「ノート:最近の東京近辺の学生の自称詞の傾向」『計量国語学』25-8, pp. 371-374.

「2006年11月に、日本大学の学生を中心に、一部首都圏の他大学の学生を含め、398人にアンケート調査を行った。(p. 371)」

興味を惹かれた部分を引用します。

 第1に、図1の男性の自称詞では「自分」という言い方がかなり多いということである。特に「バイト先の先輩」に対しては28%もの人がこれを選んでいる。「おれ、ぼく、わたし」といった男性に従来からよく使われてきた自称詞に並ぶ勢力になってきている。
 「自分」は、丁寧土が高い結果になっており、丁寧に接するべき人に対してよく使われる傾向にあるということである。首都圏の大学の教員は、男子学生から「自分は~」というような言い方をされることがあると思うが、彼らは、丁寧な言い方として「自分」を使っており、教員に対して高い待遇(あるいはかしこまりの気持ち)を示そうとしているのである。これは新しい用法であろう。(371-372頁)

第2に、図2の女性の自称詞では「うち」という言い方がやや広がりつつあるということである。特に「親友」に対しては12%の人がこれを選んでいる。「あたし、わたし」といった従来からある自称詞に対して割り込みつつあるといってよかろう。もちろん、これは元々関西地方の方言形であった。しかし、今回の調査では関西出身者が多いわけでもない。つまり、普通の東京近辺の出身の女子学生が「うち」といっているのである。

男性の「自分」は、体育会系学生の特徴付けとして認識されることがあります。さらにその起源は、軍隊語であるかもしれません。それが一般の男子学生の用語として採用されつつあるということのようです。

2007年3月24日 (土)

シンポジウム「表現の演技性」

※残念ながら、クローズドの会です。

東京大学国語国文学会大会

日時 平成19年4月21日(土)

場所 東京大学(本郷)法文2号館一番大教室

研究発表(午前10時)

(省略)

公開シンポジウム(午後2時)
表現の演技性

講師 小嶋菜温子(立教大学)
    金水 敏(大阪大学)
    宇佐美 毅(中央大学)
司会 渡部泰明(東京大学)

金水の発表要旨を掲げます。

 話し手の人物像(性別、年齢、階層、性格等)と結びついたスピーチスタイル(語彙、語法、言い回し、談話スタイル、イントネーション、声質等)のことを役割語と呼ぶ(金水 敏『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』岩波書店、2003)。日本語には、役割語に関わる指標が豊富に見いだせるが、中でも話し手の性差を表現する指標は顕著である。本発表では、「ぼく」「おれ」「おいら」「あたし」「あたい」「きみ」「おまえ」「あんた」等の人称代名詞、「~ぞ」「~ぜ」「~の」等の文末表現等の指標をもとに、小説、マンガ、アニメ、流行歌等のポピュラーカルチャー作品に現れる性差の役割語について分析を試みる。特に流行歌では、性交差歌唱(Cross Gendered Performance)にも着目していく。これらの分析から立ち現れるのは、近代日本語が制度として持つ「男性性」「女性性」の問題である。

以上、『会報』第45号(東京大学国語国文学会)より引用しました。

携帯メールの絵文字

ここの記事の田中ゆかりさんのご論文に携帯メールのことが触れられています。関連して、携帯メールの絵文字に関する記事を見つけたので、引用しておきます。朝日新聞2007年3月8日10頁。

携帯メール 絵文字と好感度アップの関連は…
男女で微妙な違い

大阪外大・鈴木さんの卒論

 初めて携帯電話のメールをやり取りする時、絵文字をどう使うと好感度があがるのでしょうか。大阪外国語大学国際文化学科言語専攻4年の鈴木祐美子さん(23)がこんなテーマで卒業論文を書きました。「自分の意図と反する意味が相手に伝わることもある」という言語の性質を明らかにするこの調査、実践でも役立ちそうです。 (小林正典)

途中は省略して、結論の部分を抜き書きします。

これらの結果から、(1)女性は自分が送ろうとするメールよりも少し絵文字の少ない男性からのメールに好感を持つ(2)男性は自分が送ろうとするメールよりも少し絵文字の多い女性からのメールに交換を持つ――という傾向のあることが分かったという。

最後に、ハートマークについて述べた部分を引用します。

 ハートに込める意味を「LOVE(愛情)」「LIKE(好意)」「その他」の三つに分類して調べたところ、男性では「LOVE」の意味で使っている人が約4割で最多だった。
 一方、女性は約6割が「その他」だった。その中身としては、了承を意味する「OK」や、「おはよう」などのあいさつ、感謝の言葉の後に付けると答えた女性が多かったという。

2007年3月 5日 (月)

社会言語科学会:発表論文

こちらで紹介した社会言語科学会の「属性」シンポジウムで、発表された方々の論文を、ご本人の許可を得てこちらに転載いたします。論文集の書誌情報は下記の通りです。

社会言語科学会事務局 (2007) 『社会言語科学会 第19回大会発表論文集』社会言語科学会.

ファイルはpdfファイルで掲載します。ファイルにはページ番号が打ってありませんので、タイトルに示しましたページ番号をご参照下さい。

シンポジウム:社会言語学における「人の社会的属性」の扱いを問い直す
企画責任者:日高水穂(秋田大学) p.358
「JASS19hidaka.pdf」をダウンロード

「役割語」研究と社会言語学の接点
金水 敏(大阪大学) pp. 359-361
「JASS19kinsui_paper.pdf」をダウンロード

着脱される「属性」―方言「おもちゃ化」現象―
田中ゆかり(日本大学文理学部) pp. 362-365
「JASS19tanaka.pdf」をダウンロード

言語行動と「属性」
熊谷智子(国立国語研究所) pp. 366-368
「JASS19kumagai.pdf」をダウンロード

言語意識と『属性」
松丸真大(大阪大学) pp. 369-371
「JASS19matsumaru1.pdf」をダウンロード

200703036

2007年3月 4日 (日)

社会言語科学会・発表スライド

こちらでお知らせしたシンポジウムが終わりました。

私の発表用スライドをPDFファイルでここにおいておきます。
「jaas07kinsui.pdf」をダウンロード

著作権上問題のある引用については、削除してあります。

シンポジウムの報告は別に書く予定です。

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