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2007年4月16日 (月)

忍者のことば

Gakiemonさんという方が、「いつから忍者は「ござるしゃべり」なのでござるか」(エキサイトニュース)というネットニュースの記事を見つけて下さいました。
http://www.excite.co.jp/News/bit/00091176224924.html

忍者の話し方について、「各地で忍者ショーや忍者教室を行う、伊賀流忍者集団・黒党(くろんど)頭領、伊賀流忍術復興保存会会長の黒井宏光さんにたずね」るという趣向で、「太田サトル」という人の署名記事になっています。要点をまとめると、以下のようになります。

  1. 忍者が「~でござる」という語尾を使うという記号的な理解は、『忍者ハットリくん』(1964年連載開始)に起源がある。
  2. 実際の忍者は、普段は伊賀弁、甲賀弁、土地の言葉をしゃべっていた。
  3. 各地に赴き潜入するときは、その土地の言葉をうまくしゃべれないといけない。
  4. 特に薩摩の言葉が大変だった、と伝書に記されている。

2は、さもありなんと思いますが、1は怪しいように思います。「忍者もの」は、江戸時代の歌舞伎作品(児雷也豪傑譚など)から、講談・立川文庫(猿飛佐助など)、近代の活弁、トーキー、テレビの時代劇等の系譜を調べるべきで、漫画だけでも『伊賀の影丸』など重要な先行作品があります。『忍者ハットリくん』はむしろ、その最末端に位置し、「~ござる」がキャラ語尾化しているために、目(耳?)につくのだろうと思います。

3、4については、O氏より次のようなご教示がありました。

諸星美智直『近世武家言葉の研究』には、「隠密と方言」の章がありますが、これには、沖森直三郎氏編『忍秘伝附家蔵忍術文献書目』(昭和46年1月沖森書店発行)
http://webcatplus-equal.nii.ac.jp/libportal/DocDetail?txt...
を引用して、「奪口術」の説明をしています。「国情偵察のため他国の方言を自由に使ふ術、即ち他人の口を奪ふと云ふ意味である。」

諸星氏は伊賀上野市の忍術資料館所蔵藤田文庫を調査されてていますが、「薩摩弁が難しい」という記述についての報告はありません。

なお、参考までに、童謡の中で忍者を扱ったものがありますので、記録しておきます。吉岡オサム作詞、小林亜星作曲「ぼくは忍者」で、これをわたしは20年ほどまえの「お母さんといっしょ」(NHKテレビ)で聞きました。正確な制作年はまだ確かめていません。

加えて、「忍者ハットリくん」のアニメソングの歌詞はこちらです。

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コメント

Oです。

諸星氏の報告によりますと、江戸時代の忍術書に、
---
たとえば京へ行ては京の詞をよくつかひ他国の者と思わせず、其処の住人と少しも不違やうに詞をつかう。大坂、江戸、或は長崎へ行ても、如v此、詞をつかひ得たるを「奪口」と云。併しこれは至て六ヶ敷こと也。

奪口といふは六十余州の人の言葉を能似せ国々所々の名所旧跡を覚え知るもの也。之れに依て天下の口を奪ふといふ事にや。是はいにしへの名人の事わざにて、今の人すべき事からとも覚えず
---
などといった記述があるようです。
あまり実効性のない奪口術ゆえ、各地の方言の特色を記すところまでは言っていない、ということなのですが、もし、伊賀流忍術復興保存会で、薩摩方言の難しさなどについて記した記録があるのであれば、是非、史料を公表していただいて、その時代性などを示してくれれば、うれしいと思います。

講談などの猿飛佐助では、「猿飛佐助は武士でござる」というせりふがありますが、
時代劇などでも、あとになるほど、忍者は武士らしさを失ってゆくような感がいたします。

Oさま、
有用な情報、ありがとうございます。薩摩方言については、「方言差を謡曲・狂言で乗り越える」という説話にも登場するわけで、興味を引かれますね。

猿飛佐助の例も面白いですが、結局、「ござる」ことばは武士言葉でもあるわけで、武士と忍者がどのように区別或いは分離されるかという点が、歴史的な変遷を追う場合に問題になりそうですね。

やはり、参考までに、童謡の中の侍ことば「ござるでござる」の「ちょんまげマーチ」。
http://www.uta-net.com/user/phplib/view_0.php?ID=42878
これは、10年ぐらい前に「おかあさんといっしょ」で聞いたと思います。

Oさま、

「ちょんまげマーチ」、思い出しました。

さむらい言葉というのは、幼児にとって興味をひく言葉遣いなのでしょうか。大衆的な時代劇を若い人が見なくなって、ちゃんばらごっこもなくなってしまった現在、昔ほど訴求力があるのかどうか、疑問ですね。

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