« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »

2007年11月25日 (日)

言と文の日本語史

下記の論文の掲載雑誌が公刊されました。

金水 敏 (2007.11.27) 「言と文の日本語史」 『文学』第8巻・第6号(11, 12月号), pp. 2-13, 岩波書店.

国語辞書と役割語

下記のエッセーが公刊されました(1ヶ月後以降に、本文を本ブログに掲載する予定です)。

金水 敏 (2007.12.1) 「国語辞書と役割語」 『図書』第705号, pp. 20-21, 岩波書店.

2007年11月19日 (月)

なんだこりゃ~沖縄!

那覇市国際通りのBOOKsきょうはん松尾店で入手しました。

4609346 書名 なんだこりゃ~沖縄! マンガ・映画・雑誌の中の〈味わい深く描かれた沖縄〉を求めて
発行年 2005年11月30日
著者 わうけいさお
発行所 ボーダーインク
〒902-0076 沖縄県那覇市与儀226-3
tel 098-835-2777 fax 098-835-2840
http://www.borderink.com
wander@borderink.com
ISBN4-89982-100-7
1,680円(内税)

前書きから抜き書きします。

 今日までに作られた、沖縄関連の書籍、マンガ、映画、TV、ビデオ等は、それこそ膨大な数に上る。(中略)でも、どんな世界にも、ピンからキリがある。私を含めた、ウチナーンチュから見て、“なんだこりゃ~!”と、ツッコミを入れてしまいたくなるような、味わいある作品もある。他にも、時間が経てば、忘れ去られ、消えていくような、マイナーな雑誌等にも、味わいある沖縄を発見することがある。
 “味わいのある沖縄”とは、つまりなんかどっか少し(いやもの凄く)勘違いして描かれてしまった「わした島、ウチナー」の姿である。また逆に、ウチナーンチュ自身が気がつかない(ちょっと隠しておきたかった)現象もある。
 今回私は自分自身の独断と偏見に則り、漫画・本・映像などのサブカルチャーに見る、味わいのある沖縄を紹介したい。すべて私が、本屋、古本屋、漫画喫茶、図書館、ネット、友人からの情報提供等で、調べたものだ。膨大な時間を費やして、と敢えていいたい。メジャーからマイナー問わず、玉石混交、全てとは言わないが、可能な限り多くを集めたつもりだ。そして、集めた作品を紹介しながら、しばしツッコミを入れ、時々フィクションと現実世界を行き来して、その作品背景を検証するという内容になっている。
(中略)
 また沖縄出身者の作品は、有名どころでもあえて外したことを断っておく。あくまでも、沖縄を外からみたサブカルチャー、というものにこだわってみた。

あとがきから抜粋と目次です。

「ゴルゴ13」は四度仕事で沖縄に来ている。「ブラックジャック」は八重山に島をもっている。などなどオタッキーな話題満載。〈誰も気にしなかったフィクションの中の沖縄〉を、普通の沖縄人としてツッコミを入れてみた、こだわりと驚笑の沖縄初!オタッキーな県産本です。マンガ、映画、テレビ、雑誌などに展開されてきた「知られざる沖縄」に出会える、またとない機会。「こんな何の役にも立たない、くだらない文書を書いたいいのだろうか。いや私が書き残さないと永遠に埋もれてしまう。〈なんだこりゃ~沖縄〉を研究する事は、私たちの文化を見つめ直すことでもある」。

[目次]
第一章 漫画に見る味わい深い なんだこりゃ~沖縄
     来沖したあいつら 職業別編
     さまざまなうちなーんちゅ編
第二章 映像に見る味わい深い なんだこりゃ~沖縄
     特撮の中の思い切った沖縄編
     名作テレビドラマ編
     やがて哀しき沖縄やくざ映画編
     さまざまな映画でみかける沖縄編
第三章 漫画に見る味わい深い沖縄 ぶっとび編
     野球漫画に見るぶっとび沖縄編
     ぶっとび空手とその他の漫画編
     やがて哀しきバイオレンスな沖縄編
第四章 誰がも知らない味わい深い沖縄 立ち読み放浪記

著者について、奥付から紹介します。

わうけいさお
1962年、沖縄市(旧コザ市)出身、コザ高を経て名城大卒。昼仕事の傍ら、長年の立読みで蓄積した無用な知識を武器に、ペンネームを使い分け執筆活動中。と学会会員。

なんとなく「と学会本」に似た味わいが、と思ったら、やっぱり会員さんだったのですね。

2007年11月12日 (月)

国語語彙史研究会(第87回)

研究会のお知らせです。3番が資料面で興味を引かれます。

国語語彙史研究会(第87回)のお知らせ

日時 2007年12月1日(土)午後1時半~5時
場所 大阪大学豊中学舎 国際公共政策研究科棟(豊中阪大内郵便局西隣)
    2階 講義シアター(いつもと会場が異なりますので御注意下さい)

発表題目および発表者
1 福岡方言のゲナ
    ―とりたて詞的用法の成立をめぐって― 
                    九州大学専門研究員 松尾 弘徳氏
2 平安和文の会話文の「文末表現」
    ―源氏物語を資料として― 
                    甲南女子大学教授 西田 隆政氏
3 三遊亭圓朝講談『塩原多助一代記』のことば
    ―速記本・全集本・文庫本の比較― 
                    奈良教育大学名誉教授 山内洋一郎氏

・参加費として500円をいただきます。
・研究会終了後、懇親会を開きますので、多数御参加下されば幸いです。

   2007年11月
  大阪府豊中市待兼山町一―五 大阪大学大学院文学研究科国語学研究室気付
                     国 語 語 彙 史 研 究 会

2007年11月10日 (土)

同期の桜

高島俊男『お言葉ですが…8 同期の桜』(文春文庫、2007.6.10)を読んでいます。単行本『お言葉ですが…8 百年のことば』(文藝春秋社、2004.4.2)を改題して文庫に収録したものです。各記事の初出は、「お言葉ですが…」『週刊文春』2002年7月~翌年7月までの掲載分ですが、雑誌掲載後に単行本で書き足した部分があり、また文庫本あとがきが付いています。

この中に、文庫版のタイトルともなっている、「同期の桜」というエッセイがあり、ここでは「貴様と俺とは同期の桜/同じ兵学校の庭に咲く」という戦時歌謡が生まれた過程を探っています。

文庫版あとがきも含めて、変転の要点をまとめると、以下の通りです。

  1. 『少女倶楽部』昭和十三年二月号に西條八十の「二輪の桜―戦友の唄」という詩が掲載された。その歌詞は「君と僕とは二輪のさくら/積んだ土嚢の陰に咲く」で始まる。
  2. 昭和十四年、大村能章が曲をつけて、キングレコードから出た。歌手は樋口静雄。ただしもとの詩をだいぶ変えてある。
  3. 旧海軍兵学校71期生の帖佐裕という人が兵学校時代(昭和15年12月~昭和17年11月)、江田島のクラブでこのレコードを聴き、同期生の連帯を高める替え歌を作った。これが「貴様と俺とは……」の歌詞の始まり。
  4. 坂本圭太郎『物語・軍歌史』によれば、「この『二輪の桜』が『同期の桜』となって海軍部内でうたわれはじめたのは昭和19年の半である」とのこと。高橋氏は「察するに帖佐氏在学中は兵学校内部でうたわれていたのが、卒業後一年半たったころから、歌詞の「兵学校」のところを「航空隊」その他にかえて、海軍全体でひろくうたわれるようになったのであろう」(文庫版330頁)と書いている。
  5. 戦後は昭和34年頃から復活した。

高橋氏は、元祖「二輪の桜」と「同期の桜」の違いについて、次のような印象を述べています。

 フシは、そっくりではあるが、「同期の桜」にくらべるとちょっとナヨナヨしている。よく言えば優美である。
 歌詞も、よく似てはいるのだが、やや軟弱である。「同期の桜」が「貴様と俺とは同期の桜」とはじまるのに対して、こちらは「君と僕とは二輪の桜」とはじまる。軟弱でしょ?でもそのあとが「同じ部隊の枝に咲く」なのだから、軍人の歌であるには相違ない。(文庫版271~272頁)

 「君と僕」が「貴様と俺」になっただけでも、いかにも軍学校の生徒らしい力強い歌詞になっている。「ちらなきやならぬ」を「散るのは覚悟」にしたのもキッパリしている。ほんのちょっとのことで、凡作が秀作になるものである。(文庫版333頁)

 また、「貴様と俺」が採用された背景について、高橋氏は次のような推測を述べています。

 軍の学校にはいると地方での「僕」「君」は禁止で、同輩の間では必ず「俺」「貴様」と言わなければならなかったそうだ。兵学校で歌うためには、何はともあれ「君と僕とは」は「貴様と俺とは」に変えねばならなかった。(文庫版273頁)

 なお、ここで言う「地方」は、「旧軍隊で、兵営外の『一般社会』をいうことば」(日本国語大辞典)です。

 ただし、上の引用部分について、岩本初男さんという方から次のような投書があった旨記されています。

 尚ほ、我々は臨時雇ひのニセ士官ですから、貴様、俺といふ言葉は殆んど使ひませんでした。小生は教官にさへ貴様と呼ばれた記憶はありません。(文庫版276頁)

岩本さんは長崎県佐世保出身、東北帝国大学経済学部卒、海軍予備学生、飛行科士官であった由。このことについて、高橋氏がこのように補足しています。

 海軍士官でも大学出身の予備学生は必ずしも「貴様」「俺」と言わなかったらしい。「臨時雇ひのニセ士官」は兵学校出のいわゆるホンチャンでないことを言う。予備仕官のホンチャンに対する不信についてはこれまでにものべた。(文庫版277頁)

 なお、私は子供のころ、「貴様と俺とは同期の桜/同じ兵学校(航空隊)の庭に咲く」という「同期の桜」をよく耳にしました。子供同士で歌っていてようにも思います。当然、昭和34年以後の復活期のことですが。当時、マンガやドラマで、日中戦争や太平洋戦争を題材にしたものが流行っていて、そういった時代相を反映してのことでしょう。

(「同期の桜」歌詞およびメロディ)

2007年11月 7日 (水)

長崎純心大学日本語教育公開講座

こちらでお知らせした講演の詳細をお知らせします。

第3回長崎純心大学日本語教育公開講座
日 時:平成19年12月15日(土) 14:00~15:30
場 所:純心女子学園江角記念館(長崎市文教町)
       ※会場には駐車場がございません。
演 題:「役割語からみた日本語」
講 師:金水 敏 (大阪大学大学院文学研究科教授)
主 催:長崎純心大学言語文化センター
会場案内:純心女子学園・江角記念館
      
純心中学校・純心女子高等学校内)

会場のご案内等については、こちらをご覧下さい。

2007年11月 2日 (金)

わきまえの語用論

Photo 井出祥子(2006)

『わきまえの語用論』

大修館書店
ISBN 9784469221862

【目次】

序章 日本語はいかに日本文化と関わるか
第1章 「言うという行為」とモダリティ
第2章 ポライトネスの普遍理論
第3章 わきまえのポライトネス
第4章 敬語のダイナミックな動き
第5章 敬意表現と円滑なコミュニケーション
第6章 女性語はなぜ丁寧か
第7章 ホロン構造型社会の言語使用
第8章 “複雑系”社会の日本語

聞いておぼえる関西弁入門

こちらでご紹介した本の新訂版です。

Photo_5真田信治(監修)
岡本牧子・氏原庸子(著)

『新訂版
聞いておぼえる関西(大阪)弁入門



ひつじ書房、2006年
ISBN 489476296

【目次】


まえがき
テキストの使い方
用語・記号の説明

UNIT1 もう がまんでけへん 動詞の否定形
UNIT2 勉強せな あかん 義務・必要の表現
UNIT3 借りても ええか? 許可・禁止の表現
コラム1 関西人が共通語と思い込んでる「隠れ関西弁」
UNIT4 見ててや 依頼の表現
UNIT5 テレビ見んと 寝ぇ 命令の表現
コラム2 一拍語を二拍語的に話す
UNIT6 よう わからん 可能表現の否定
コラム3 「おばんざいやさん」に行こう!!
UNIT7 何してはるの? 尊敬の表現
UNIT8 行くんやったら 買《こ》うてきて 仮定・推量の表現
コラム4 イ形容詞の「イ」抜け
UNIT9 結婚しよってん 第三者の行為の表現
UNIT10 ついに0点《れぇてん》 とってしもた 残念・完了の表現
UNIT11 なんで? お金ないさかい 原因・理由の表現
UNIT12 そんなこと 言うかいな 疑問・強い否定の終助詞
UNIT13 何すんねん! 文末の表現Ⅰ
コラム5 大阪府言語地図
UNIT14 値札 つけとるわ 進行・状態の表現
UNIT15 いっぺん 食べてみ 軽い命令の表現
コラム6 意向形「V(よ)う」の「ウ」抜け
UNIT16 そんなん 買《こ》う たかて・・・ あきらめの表現
UNIT17 やめときぃ 準備・勧めの表現
コラム7 イ形容詞のウ音便
UNIT18 ええやんか 文末の表現Ⅱ
コラム8 ボケとツッコミ
UNIT19 何でも 買《こ》うたった やり・もらいの表現
UNIT20 なんも みみっちない 全否定の表現
コラム9 ネオ方言(真田信治)

問題のスクリプト
問題の解答
単語リスト
主要参考書
あとがき
UNIT18 

日本人女性の「聞き手の行動」

Japanese_womens_listening_behaviorMiyazaki, Sachie(2007)

Japanese Women's Listening Behavior
in Face-to-face Conversation
-The Use of Reactive Tokens and Nods-

(Hituzi Linguistics in English No. 7)

ひつじ書房、2007年
ISBN 9784894763319

【目次】

CHAPTER1 INTRODUCTION
CHAPTER2 PREVIEW OF THE LITERATURE ON LISTENING BEHAVIOR
CHAPTER3 HYPOTHESES AND METHODOLOGY
CHAPTER4 REACTIVE TOKENS IN FORMAL CONVERSATION
CHAPTER5 REACTIVE TOKENS OF INFORMAL CONVERSATION
CHAPTER6 DIFFERENCES IN STRUCTURE
         BETWEEN FORMAL AND INFORMAL CONVERSATION
CHAPTER7 RESULTS OF THE INTERVIEW AND PERCEPTION STUDY
CHAPTER8 CONCLUSION

認知科学への招待2

Photo_4 大津由紀雄・波多野誼余夫・三宅なほみ(編著)

認知科学への招待2
 ―心の研究の多様性を探る』


研究社、2006年
ISBN 9784327378127

【目次】

第1章 言語獲得 (杉崎鉱司)
第2章 音韻論:最適性理論(Optimality Theory) (深澤はるか・北原真冬)
第3章 認知言語学 (山梨正明)
第4章 視覚認知:視覚科学のフロンティア (齋木潤)
第5章 運動と思考の脳内協調制御メカニズム (本田学)
第6章 概念変化と教授 (波多野余誼夫・稲垣佳世子)
第7章 文化と制度 (山岸俊男・鈴木直人)
第8章 美術の創作プロセス (岡田猛)
第9章 音楽の意味を科学する (安達真由美)
第10章 比較認知科学:研究方法と展望 (松沢哲郎)
第11章 模倣から心の理解へ (明和政子)
第12章 認知発達ロボティクス (浅田稔)
第13章 エキスパートシステム(expert system) (溝口理一郎)
第14章 特別寄稿:認知症から学んだこと (田辺敬貴)
鼎談:認知科学の射程 (大津由紀雄・三宅なほみ・梅田聡)

認知科学への招待

Photo_3 大津由紀雄・波多野誼余夫(編著)

認知科学への招待
 ―心の研究のおもしろさに迫る』


研究社、2004年
ISBN 9784327378103

【目次】

第1章 認知発達 (旦 直子)
第2章 学習科学 (三宅なほみ)
第3章 記 憶  (梅田 聡)
第4章 創発的認知から見た問題解決 (鈴木宏昭)
第5章 創造性 (堀 浩一)
第6章 言 語 (大津由紀雄・今西典子)
第7章 語用論と認知科学 (西山佑司)
第8章 他者理解 (板倉昭二)
第9章 比較認知科学 (藤田和生)
第10章 動物のコミュニケーション行動とことばの起源 (岡ノ谷一夫)
第11章 心の進化 (長谷川寿一)
第12章 文化と認知:心に理論をめぐって (波多野誼余夫・高橋惠子)
第13章 計算理論・脳機能計測・実験心理学の融合 (今水 寛)
第14章 脳機能画像  (田中茂樹)
第15章 神経心理学  (山鳥 重)
第16章 神経生理学  (入來篤史)
第17章 心の哲学  (信原幸弘)
巻末対談:「認知科学をめぐって」 (大津由紀雄・波多野誼余夫)

« 2007年10月 | トップページ | 2007年12月 »

最近のトラックバック

2022年3月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28