ちばてつやあるよ
中野晴行編(2004)『マンガ家誕生。』ちくま文庫所収の、ちばてつや「屋根うらの絵本かき」(初出『別冊少年ジャンプ』1973年10月号)に<アルヨことば>の用例がありました。
【※以下はいずれも現地の中国人「徐集川(じょしゅうせん)」氏の台詞】
「むこうへいっても 船にはのれないあるよ」(62頁)
「いやいやこまったときはおたがいさまね それよりデスヤちゃん いちばんおにいちゃんなんだから しっかりしなくちゃダメあるよ」(65頁)
この短編は、幼少時代、旧満州に在留していたちば氏の「引き揚げ体験を描いた最初の作品」(あとがき278頁)で、中国人に命を救われた実体験が描かれています。素朴で優しい中国人のおじさんに対して、差別どころか感謝を込めて描かれていることが十分に感じられる作品なのですが、それでもやはり<アルヨことば>が用いられているところが興味深いです。この点は、同じく引き揚げ体験を持つ五味川純平の『人間の條件』(初出1956年三一書房)などとも共通しているように思われ、さらに類例を探していきたいところです。
なお、ちば氏のほか、『フイチンさん』の上田トシコ氏、『天才バカボン』の赤塚不二夫氏などの作家が集まって「中国引き揚げ漫画の会」を結成しています。メンバーや略歴は舞鶴引き揚げ記念館(ギャラリー)で確認することができます。(IT)
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