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2009年2月25日 (水)

基調講演2:役割・キャラクター・言語をめぐって

3月28日のシンポジウムの基調講演(金水)の概要です。

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基調講演2:役割・キャラクター・言語をめぐって

                                                     金水 敏

 金水 (2003) 『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店)の刊行をきっかけに、「役割語」の概念は、著者の期待を越えて多くの方々に受け入れられ、一つの研究の潮流を作りつつあるように見える。一方で、定延利之氏らのグループによる「発話キャラクタ」の研究が、金水 (2003) の枠組みの狭さ・限界を照射しつつあることも確かである。中村桃子氏のジェンダー言語学との対比においても、金水の研究に欠落した視点が明らかになった。また、大塚英志氏、東浩樹氏、伊藤剛氏らのポピュラーカルチャーにおけるキャラクター論の展開にも着目すべき点がある。

 より具体的に言えば、金水 (2003) では、もっぱらフィクションに偏った分析がなされていたが、定延氏らによって日常の音声言語にも広く発話キャラクタの繰り出しという現象が見られることが指摘された。また、現実からフィクションへという一方向的な関係は中村桃子氏によって批判され、むしろフィクションが構築するイデオロギーが現実の発話行為に制約を与える点が強調された。さらに、金水 (2003) では「ステレオタイプ」との関連に力点を置き、発話者の類的な属性と話し方の関連が強調されたが、一般的には「キャラクター」の表現は類的な描き分けよりむしろ個体の描き分けによって動機づけられている点が見落とされていた。

 本講演では、これらの問題点を止揚するために、「一般キャラクター言語論」という 視点を提案する。ここで「キャラクター」とは、"仮想現実"における人格的表現であるという認識に立つが故に、上記理論は「現実/仮想現実論」の一部をなす。現実とは元来、非分節的で混沌とした"実存"であり、我々が「現実」として認識し、表現しているものは、我々が分節化し、解釈した結果としての仮想現実に他ならない。キャラクターは、属性の集合(役割語はその属性の一部)として表現されたもので、現実を源泉としているか否かに関わらず仮想現実内の存在であり、それゆえに可搬性・流通性を持つ。キャラクターはその意味で、最初から(フィクション・非フィクションを 問わず)コミュニケーション・ツールである(cf. 文字としての"キャラクター"との共通点)。また、キャラクターという把握のもとでは、類なのか、個体なのかという区別はあまり意味を持たない。なぜなら、キャラクターは解釈可能な属性の集合であり、この点において類と個体は本質的な差異を失っているからである。

 我々は現実を解釈するための、仮想現実構築の参照枠として、諸々のイデオロギー(宗教、ステレオタイプはその一部)、歴史、地勢図等を持たざるを得ない(我々の行動は、これらイデオロギー、歴史、地勢図等に基づいて構築された制度(たとえば "法")に規制されるが故に、仮想現実は現実に介入し、改変する力を持つが、しかしその介入・改変の結果に対する解釈は常に"ぶれ"、"揺らぎ"を含まざるを得ず、よって唯一的な仮想現実による現実把握の試みもまた多義性・矛盾を含まざるを得ない(cf. 裁判制度))。このようであるが故に、キャラクターもまたその起源において、イデオロギー、歴史、地勢図等から自由ではあり得ない。すなわち、すべてのキャラクターは"差別的"である(cf. "政治的な正しさ")。(以上)

シンポジウム「メディア・教育と役割語・発話キャラクタ」

3月28日のシンポジウムのご紹介です。

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概要:
役割語・発話キャラクタという、キャラクター書き分けのための言語技術が、芸術、報道、教育、翻訳等の領域にどのような陰を落としているか。我々はことばの使い手として、その事実にどのように向き合っていくかという問題について、芸術、報道、教育等の各方面の専門家が経験に基づいて意見を交わす。

ファシリテータ:
金水 敏(きんすい・さとし)
1956年大阪生。大阪大学大学院文学研究科教授。一番最初に見た映画の記憶は「モスラ」(初代)。幼少時に見た「マタンゴ」のラストシーンはトラウマとなった。小学校入学前から少年サンデー講読。テレビアニメ「鉄腕アトム」と「ウルトラQ」の初回は鮮明に覚えている。著書に『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、2003)、編著に『役割語の研究の地平』(岩波書店、2007)。

シンポジスト:
(50音順)

阿藤 智恵(あとう・ちえ)
1968年大阪生。大阪大学文学部日本学科卒。加藤健一事務所俳優教室を経て俳優業のかたわら間宮啓行氏、高見亮子氏、鐘下辰男氏らの演出助手をつとめ、劇作家に。現在はフリーで劇作・戯曲翻訳・演出を行っている。主な戯曲作品として『セゾン・ド・メゾン~メゾン・ド・セゾン』平成13年度文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作、『中二階な人々』平成14年度文化庁舞台芸術創作奨励特別賞。

太田 眞希恵(おおた・まきえ)
NHK放送文化研究所・専任研究員。1991年、NHK入局。ディレクターとして、沖縄放送局・報道局などでドキュメンタリー番組や情報番組を制作。2007年よりNHK放送文化研究所メディア研究部で放送用語を研究。

恩塚 千代(おんづか・ちよ)
大阪府立大学大学院、人間文化学研究科(博士課程)修了後、2000年度より韓国の国立大学に客員教授として赴任。その後、高麗(コウリョ)大学、弘益(ホンイク)大学を経て、現在は韓国国立・江原(カンウォン)大学日本学科、招聘教授。研究分野は日本語教育における日本語の音韻認識と表記の問題。韓国日本語学会、韓国日語日文学会、韓国日本言語文化学会等の常任理事、在韓日本語講師研究会の運営委員を務めながら、各大学での日本語の教科書執筆・監修を担当。その際に問題となる、教科書における役割語の扱いについて思考中。

鄭 惠先(ちょん・へそん)
1967年生まれ。大阪府立大学大学院で博士(学術)学位取得。現在、長崎外国語大学外国語学部准教授。専門は社会言語学、日韓対照言語学。主な業績に「方言意識の日韓対照-役割語翻訳の観点から-」(『日本語科学』第23号、2008)、「 日本語と韓国語の役割語の対照―対訳作品から見る翻訳上の問題を中心に―」(『社会言語科学』第8巻第1号,2005)、「日本語人称詞の社会言語学的研究」(大阪府立大学 博士学位取得論文、2003)などがある。

本浜 秀彦(もとはま・ひでひこ)
1962年那覇市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。新聞記者などを経て米ペンシルバニア大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。専攻は比較文学、メディア表象論。共著に『沖縄文学選―日本文学のエッジからの問い』、論文「国家イベントにおける「海」の表象と視覚の政治学」、「手塚治虫のオキナワ表象」ほか。

2009年2月 6日 (金)

NHKシンポジウムに夏目房之介氏

3月12日、NHK放送文化研究所ワークショップの出演者が決まりました。

 パネリスト:金水敏(大阪大学大学院教授)
        夏目房之介(マンガ・コラムニスト)
        荻野太朗(NHK報道局チーフプロデューサー)
 報告者  :太田眞希恵(NHK文研 研究員)
 司会   :塩田雄大(NHK文研 研究員)

夏目房之介さんにお会いできるということで、大変楽しみです。

2009年2月 1日 (日)

シンポジウム・研究発表会 ポスター、チラシできました

大田垣仁さんの作成です。

ポスター (PDF)

「yakuwarigo1.4.pdf」をダウンロード

ポスター (JPEG)

Yakuwarigo14

チラシ (PDF)

「yakuwarigo_chirashi_1.2.pdf」をダウンロード

チラシ (JPEG)

Yakuwarigo_chirashi_page1

Yakuwarigo_chirashi_page2

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