スペイン語の役割語
2010年7月17日(土)、「土曜ことばの会」と共同開催で役割語研究会があり、福嶌教隆さん(神戸市外国語大学)による「スペイン語の役割語」という発表がありました。
「ワンピース」「ドラゴンボール」「らんま1/2」「クレヨンしんちゃん」「ラブひな」等日本マンガ、「古都」「なめとこ山の熊」「斜陽」「吾輩は猫である」等日本小説、「ヨーギーベア」「ロブロイ」等欧米マンガ等の資料を用いて、役割語の翻訳、スペイン語オリジナルの役割語等について報告をいただきました。
概要は以下の通りです。
- 老人語、お嬢様語等日本語の典型的な役割語は、スペイン語訳ではほとんど無視。淡々と内容だけ移されていることが普通。
- 方言的な表現はたまにスペイン語の方言的表現に置き換えられている場合がある(「坊っちゃん」の伊予方言など)。
- 時代劇風な言葉遣いは、スペイン語でよく表現されている。典型的なものは、二人称の vos。フランス語の vous と同源で、かつての二人称複数で、16世紀まで尊称として用いられていたが、今はなくなっている。これが、古風な言葉遣いの指標としてよく用いられる。
- ネイティブ・アメリカンなどの言葉がピジン的に表現されることがある。動詞がすべて不定詞になるなど。しかしその場合でも、名詞の性数などは律儀に表現されることが多い。
- 東洋系の登場人物のなまりが表現されることもある。多くは r と l の混同で。r とあるべきところが l で表現されることが多い。
- ただし、ピジンや外国人のなまりなどの表現も、political な理由からか、かつてほどは見られなくなった。
- いわゆる“オカマ”的なキャラクターの言葉を、形容詞の性(gender)の置き換えなどで表すこともあるが、ケースバイケース。
- 酔っぱらいのろれつの回らない発音や、口に物を含んでいるときの発音など、音声的な描写はよく行われる。
スペインにも当然社会方言や地域方言は数多くありますが、それらが会話文の描写に反映されることは概してまれなようです。
あと、「独り言」の表現や、スペインのマンガ事情等について補足的に述べられました。フロアとのやりとりでは、「アステリックス」「マイ・フェア・レディー」「ハウルの動く城」等映画作品ではどうかとの質問があり、今後検討したいとのことでした。また、英語やドイツ語など他の外国語との比較も話し合われました。(以上)
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