京谷啓徳さんについて
本年9月、九州大学に集中講義に伺った際、京谷啓徳さんという方に引き合わせていただくことが出来ました。京谷さんは、もともとイタリア・ルネサンス美術の若手の研究者ですが、戦前の芸能、映画、レコード等に対する造詣が深く、SPレコードの大変なコレクターでいらっしゃいます。ご自身の集中講義資料「もうひとつの近代芸能史」をいただきました。浅草オペラの発展を中心に、エノケンについても述べられていて、すばらしい充実度です。
今後、教えを請うこともあるものと、大いに期待しています。
本年9月、九州大学に集中講義に伺った際、京谷啓徳さんという方に引き合わせていただくことが出来ました。京谷さんは、もともとイタリア・ルネサンス美術の若手の研究者ですが、戦前の芸能、映画、レコード等に対する造詣が深く、SPレコードの大変なコレクターでいらっしゃいます。ご自身の集中講義資料「もうひとつの近代芸能史」をいただきました。浅草オペラの発展を中心に、エノケンについても述べられていて、すばらしい充実度です。
今後、教えを請うこともあるものと、大いに期待しています。
池田貴子氏のご教示によります。横浜ピジンについて示唆が得られました。
田中雅男 (1980) 「『ザ・ジャパン・パンチ』とハムレットの独白」『近代』55:41-72, 神戸大学近大発行会.
田中雅男 (1981)「「マー、モッテコイ。マー、シックシック。」―『横浜方言演習』の版をめぐって―」『近代』57: 117-134, 神戸大学近大発行会.
江口圭一・芝原拓自編(1989)『日中戦争従軍日記』(愛知大学国研叢書1)法律文化社から。
以下は、筆者(日本人兵士)が現地の中国人と「筆談」する場面です。自分のことばと相手のことばとの両方に、「~アリマス」「~ヨロシイ」を用いて訳し(書き下し)ていている場面があります。(IT)
▲支那国体観念アルカ。【引用者注:筆者の筆談部分】
ナイ、個人主義デス。カナシイ。支那国大キイ。国民自分勝手アリマス。統一困難。【引用者注:相手の筆談部分】(192頁)“私七時、五百村去ります。”
私七時、四十日五百村滞在。貴男、私ヨキ友達アリマス。
私大変うれしい。
私今日汽車乗る、南へ行く。後日本帰ル。
私再び貴男見る不能、悲しい。
私アナタ、病気アリマセン。
元気ヨロシイ。
アナタ妻、母、小孩、皆元気ヨロシイ。
小孩成長、大人ナルヨロシイ。私日本カエル、貴男ニ手紙カク。アナタ手紙カクヨロシイ。(193頁)
来嶋靖生編『岩本素白随筆集―東海道品川宿』(ウェッジ文庫)について紹介されている、「黌門客」さんの記事をご紹介しておきます。
下記の論文の掲載雑誌が公刊されました。
金水 敏 (2007.11.27) 「言と文の日本語史」 『文学』第8巻・第6号(11, 12月号), pp. 2-13, 岩波書店.
研究会のお知らせです。3番が資料面で興味を引かれます。
国語語彙史研究会(第87回)のお知らせ
日時 2007年12月1日(土)午後1時半~5時
場所 大阪大学豊中学舎 国際公共政策研究科棟(豊中阪大内郵便局西隣)
2階 講義シアター(いつもと会場が異なりますので御注意下さい)発表題目および発表者
1 福岡方言のゲナ
―とりたて詞的用法の成立をめぐって―
九州大学専門研究員 松尾 弘徳氏
2 平安和文の会話文の「文末表現」
―源氏物語を資料として―
甲南女子大学教授 西田 隆政氏
3 三遊亭圓朝講談『塩原多助一代記』のことば
―速記本・全集本・文庫本の比較―
奈良教育大学名誉教授 山内洋一郎氏・参加費として500円をいただきます。
・研究会終了後、懇親会を開きますので、多数御参加下されば幸いです。2007年11月
大阪府豊中市待兼山町一―五 大阪大学大学院文学研究科国語学研究室気付
国 語 語 彙 史 研 究 会
発表者ご本人よりいただきました。
高山倫明(2007)
「訓読語と博士語」
九州大学大学院人文科学研究院(文学部)平成19年度社会連携セミナーⅠ
「言語と文芸―和漢古典の世界―」第2回2007.8.17(於福岡市文学館)【目次】
1 はじめに
2 漢文の訓読
2.1 漢文は過去の中国語
2.2 漢文を日本語として読み下す
2.3 訓読のための方策―ヲコト点から仮名へ―
2.3.1 ヲコト点
2.3.2 仮名
2.4 『論語』訓読の歴史
3 漢文訓読に特有の語法
4 『源氏物語』少女巻の博士
5 役割語
以下に、要旨を引用させていただきます。
固有の文字を持っていなかった日本語にとって、論語をはじめとする先進文化を伝える漢文の《翻訳》は、《書き言葉》という新たな日本語を創造する営みでもあった。片仮名や句読点といった文字・記号の多くが漢文訓読の世界で生まれ、また、型にはまった逐語訳が訓法として固定化するにつれ、話し言葉にはない、新たな語法がつぎつぎに出現する。
たとえば、キハム・ハタス・アフ・イタルという動詞からキハメテ・ハタシテ・アヘテ・イタッテといった副詞が新たに派生するのは、「極」「果」「敢」「至」の漢字の意味用法の媒介があってのことであるし、もともとホッス・ネガフ・オモフ・ムトスとのように文脈に応じて読み分けられていた「欲」の字の訓法がホッスに一本化されると、べつに日暮を待ち望んでいなくとも「日暮れむとほっす」と言うようになる。本来は場所を示す意味しかなかったトコロという語も、所謂・所望・所有のような、行為の対象を漠然と示す「所」字の用法にあわせて「~であるところの」「~するところの」といった抽象的な意味用法を獲得した(これが近代に至って西洋語の関係代名詞の翻訳後として定着することになる)。
ところで、源氏物語・少女巻に、大学の博士たちの言動が皮肉たっぷりに戯画化された箇所がある(本文と訳は小学館日本古典文学大系による)。「鳴り高し。鳴りやまむ。はなはだ非常(ひざう)なり。座を退(ひ)きて立ちたうびなん」
(騒々しい。静粛になされ。はなはだ無作法である。退席していただこう)ちょっと身につまされるものがあるが、それはさておき、彼らの言葉には漢文訓読語が散りばめられている。当時の博士たちはほんとうにこんな話し方を日常的にしていたのだろうか?
ドラマやアニメ等には普通に現れるけれども、「そうじゃ、わしが博士じゃ」のようなしゃべり方をしたり、「御茶の水博士!」「財前教授!」のように博士や教授を付けて呼び掛けられたりする人は現実には(たぶん)いない。こういった、特定の人物像をステレオタイプ化する言葉は「役割語」と総称され、博士らしさを演出するものは「博士語」と呼ばれている。
この講座では、近年盛んになってきた役割語研究の観点も交えながら、漢文訓読語の来歴や位相を一緒に考えてみたいと思う。
佐藤喜代治(編)(2002)
『国語論究 第9集 現代の位相研究』
明治書院
ISBN 9784625433122
【目次】
・菊沢季生と位相論(佐藤喜代治)
一 菊沢氏の経歴
二 『国語研究』
三 音素論
四 位相論
五 代名詞・万葉集の研究
六 連歌・ことば論議にみる位相差の諸相(田中章夫)
はじめに
一 国字問題をめぐるキャンペーン
二 言文一致運動と近代口語文体
三 標準語普及運動の諸相
四 ネサヨことばとネハイ運動
五 外来語排斥運動から英語公用語論へ
・ポナペ語における日本語からの借用語の位相―ミクロネシアでの現地調査から(真田信治)
一 はじめに
二 日本語からの借用語
三 音の代用
・万葉語「朝+~」の考察(佐藤武義)
一 はじめに
二 「朝+~」の実態
三 「朝+~」A群の分析
四 「朝+~」B群の分析
五 まとめ
・男性使用の自称「わらは」(染谷裕子)
一 はじめに
二 国語辞典の「わらは」
三 女性の自称「わらは」
四 お伽草子の「わらは」
五 男性使用の「わらは」の問題点
六 まとめ
・お屋敷奉公と江戸町人女性のことばのしつけ(神戸和昭)
はじめに
一 江戸戯作中の描写
二 随筆中の記述
三 文書・日記類の記述
おわりに
・『錦嚢万家節用宝』考―合冊という形式的特徴を中心に(佐藤貴裕)
一 はじめに
二 『錦襄万家節用宝』概観
三 合冊四書概観
四 合冊の利点
五 吉文字屋による合冊体節用集の展開
六 十九世紀における合冊
七 おわりに
・明治期口語研究の新展開に向けて―標準語と保科孝一、尾崎紅葉、そして「トル・ヨル」(増井典夫)
一 はじめに
二 保科孝一の業績について
三 近代文学作品の校訂、、漢字の字体などの問題について
四 言文一致体と現代口語体の成立について
五 尾崎紅葉の文章・用語などの研究課題について
六 『多情多恨』の会話文と「~トル」
七 「~ヨル」をめぐって
八 終わりに
・現代の「枕詞」―「嬉しい初優勝」という表現について(揚妻祐樹)
一 はじめに
二 一人称制限(およびその解除)を把握する三つの立場
三 枕詞的用法が用いられる場面性
四 まとめ―「語り手」の混同について―
・テレビの単語使用―番組と話者からみた多様性(石井正彦)
一 目的
二 データ
三 方法・準備
四 番組=話者グループの特徴語
五 まとめに代えて
・「少しも」と「ちっとも」について(漆谷広樹)
一 はじめに
二 近代文学作品における「少しも」と「ちっとも」について
三 「少しも」と「ちっとも」の語誌
四 まとめと課題
・日本語方言における意志・推量表現の交渉と分化―『方言文法全国地図』の解釈(彦坂佳宣)
はじめに
一 意志・推量表現の分布の分析から
二 文献による地域語史の視点から
三 方言文献とGAJとの総合から
・方言の係り結び(大西拓一郎)
一 はじめに
二 こそ~已然形
三 疑問詞~已然形
四 疑問と連体形
五 むすび
・上方語の伝播と庄内(遠藤 仁)
一 はじめに
二 海上の道と言語の伝播
三 海上の道による伝播はその根拠を見出せるか
四 おわりに
・岩手県盛岡市方言における形容詞活用体系(斉藤孝滋)
一 はじめに
二 目的・方法
三 活用体系
四 形態レベルでの活用形の統合
五 音現象が形容詞活用体系に及ぼす影響力の検証
六 まとめ
中村桃子(2007)
『〈性〉と日本語』
NHKブックス
ISBN 9784140910962
【目次】
はじめに
日本語ブームの背景
言語資源という視点
「女ことば」と「男ことば」に見る創造性
本書の全体像Ⅰ 「わたし」はことばでつくられる
第一章 ことばとアイデンティティ
1 アイデンティティはどこから来るか
「女らしい」藤原先生
不自然な「女ことば」
本質主義のアイデンティティ
構造主義のアイデンティティ
言語資源としての「ことば」
フィクションの会話と現実の会話
メディアがつくる言語資源
「ずれた言語行為」の創造性
2 非対称的な「女ことば」と「男ことば」
標準語としての「女/男ことば」
インフォーマルな「女/男ことば」
「女/男ことば」が描く人物像の違い
「女ことば」とはルールである
3 言語資源が切り開く地平
繰り返される「ついて語る」言説
女訓書からエチケット本まで
「標準語」に隠された男性性
「標準語」「女/男ことば」を分けるもの
言語資源が明かす三つの点
第二章 「翻訳」のことばを読む―再生産される言語資源
『ハリー・ポッター』の中の「女ことば」
複数の声が聞こえる
1 翻訳がつくるアイデンティティ
翻訳小説の中の擬似方言
「方言」の誕生
正しい「標準語」・劣った「方言」
再生産される差別
2 新しい「男ことば」の登場―「です・ます」から「ス」へ
「擬似方言」の消滅
変わる翻訳の標準語
「ぼく」から「おれ」へ
「おれ」は熱血ヒーロー
貴様と俺
近すぎる「おれ」と「おまえ」
『スラムダンク』の新敬語
上下関係から親疎関係へ
3 変わりゆく「親しさ」の表現
スターの語る「ぼく・きみ・さ」
「きみ」と「ぼく」がつくる男の絆
「旧男ことば」はどこへ行く
区別しつづける言語資源
「女ことば」は絆と結びつくか
Ⅱ 日本語に刻まれた〈性〉
第三章 セクシュアリティと日本語
1 恋愛小説の言語資源
ハーレクイン・ロマンスの恋愛描写
日本の恋愛小説に身体描写の少ない理由
近づくほどに遠ざかる男女のことば
2 異性愛はことばに宿る
古代ローマのセクシュアリティ
なぜ異性愛は規範となったのか
〈女〉と〈男〉の中間に位置する人びと
セックスとジェンダー
3 〈男〉は中心、〈女〉は例外―異性愛から見た言語資源
「おれ」と「あたし」のエロス
「女/男ことば」とジェンダーの結びつき
「ていねいな言葉づかい」という規範
言葉づかいが左右する自己イメージ
男のスカート姿はなぜ目立つ?
男女で異なる規範性
「おネエことば」の反対は?
第四章 変わりゆく異性愛のことば
―「スパムメール」「スポーツ新聞」「恋愛小説」
1 スパムメールに刻まれた異性愛の構造
スパムメールの修辞学
「女=受動的」がもたらす悲劇
2 男たちの共同体
向かい合えない男たち
ホモソーシャルな社会とは
女性同性愛に対する視点
「男になる」ことの意味
異性愛への強迫観念
スパムメールの中の「おれ」
恋愛資本主義の台頭
スポーツ新聞のホモソーシャル・ファンタジー
3 親しさを希求することばの格闘
母子関係に還元される恋愛
あらたな関係としての家族
血縁を超えた家族の模索
母親になりたい
Ⅲ 創造する言語行為第五章 なぜ少女は自分を「ぼく」と呼ぶのか
1 少女は言葉づかいの規範を破りつづけてきた
幻想と現実の再生産
「ぼく」と言い始めた明治の女子大生
2 新しい〈少女性〉の創造
男女に押しつけられた成長過程の違い
異性愛市場の子どもたち
〈おませ〉か〈おくて〉か
〈男装〉への憧れ
さまざまな自称詞の創造
3 押しつけられる自称詞
「わたし」と自称することへの抵抗感
ひそかに埋め込まれる異性愛規範
二重の抑圧
4 「言葉づかいへの批判」今昔
なぜ「女ことば」は伝統なのか
生き延びるために選ばれることば
「最近の乱れ」説の効用
なぜ女のことばづかいが気になるのか
5 少女の「男ことば」に萌える男たち
「無垢な少女」幻想
未熟なエロスの商品化
第六章 欲望を創造する―消費社会と〈性〉
1 ファッション誌という共同体
消費と結びついたアイデンティティ
雑誌がつくる書き手と読者
雑誌共同体をつくる三つの手法
イデオロギーによる支配
欲望を煽り、達成感を抱かせる
2 女性誌と男性誌―親しみの相違
女性誌は平等・男性誌は階層的
上下関係にもとづくホモソーシャリティ
ファッションは課題、雑誌はカウンセラー
ファッションはいかに男性化されたか
3 新しい男性雑誌共同体
男性も「着まわし」の時代
ファッションを「大研究」する
男性誌は学校、読者は生徒
モノローグによるコミュニケーション
異性愛を求める消費社会
終章 「日本語=伝統」観の閉塞を超える
1 日本語という不安
あるがままに愛でるべき日本語?
日本語本ブームのメカニズム
「正しい日本語」の問題点
「ずれた言語行為」の可能性
2 日本語をみがくために
言語イデオロギー
メタ言説の権力
「正しい日本語」がつくる分断
矛盾ゆえに強化される言語イデオロギー
「男ことばの乱れ」はなぜ意識されないのか
3 開かれた伝統にむけて
「専門家」のメタ言説を相対化する
「乱れ」言説から自由になる
ことばに対する「常識」に問いを発する参考文献
あとがき
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