〈性〉と日本語
中村桃子(2007)
『〈性〉と日本語』
NHKブックス
ISBN 9784140910962
【目次】
はじめに
日本語ブームの背景
言語資源という視点
「女ことば」と「男ことば」に見る創造性
本書の全体像Ⅰ 「わたし」はことばでつくられる
第一章 ことばとアイデンティティ
1 アイデンティティはどこから来るか
「女らしい」藤原先生
不自然な「女ことば」
本質主義のアイデンティティ
構造主義のアイデンティティ
言語資源としての「ことば」
フィクションの会話と現実の会話
メディアがつくる言語資源
「ずれた言語行為」の創造性
2 非対称的な「女ことば」と「男ことば」
標準語としての「女/男ことば」
インフォーマルな「女/男ことば」
「女/男ことば」が描く人物像の違い
「女ことば」とはルールである
3 言語資源が切り開く地平
繰り返される「ついて語る」言説
女訓書からエチケット本まで
「標準語」に隠された男性性
「標準語」「女/男ことば」を分けるもの
言語資源が明かす三つの点
第二章 「翻訳」のことばを読む―再生産される言語資源
『ハリー・ポッター』の中の「女ことば」
複数の声が聞こえる
1 翻訳がつくるアイデンティティ
翻訳小説の中の擬似方言
「方言」の誕生
正しい「標準語」・劣った「方言」
再生産される差別
2 新しい「男ことば」の登場―「です・ます」から「ス」へ
「擬似方言」の消滅
変わる翻訳の標準語
「ぼく」から「おれ」へ
「おれ」は熱血ヒーロー
貴様と俺
近すぎる「おれ」と「おまえ」
『スラムダンク』の新敬語
上下関係から親疎関係へ
3 変わりゆく「親しさ」の表現
スターの語る「ぼく・きみ・さ」
「きみ」と「ぼく」がつくる男の絆
「旧男ことば」はどこへ行く
区別しつづける言語資源
「女ことば」は絆と結びつくか
Ⅱ 日本語に刻まれた〈性〉
第三章 セクシュアリティと日本語
1 恋愛小説の言語資源
ハーレクイン・ロマンスの恋愛描写
日本の恋愛小説に身体描写の少ない理由
近づくほどに遠ざかる男女のことば
2 異性愛はことばに宿る
古代ローマのセクシュアリティ
なぜ異性愛は規範となったのか
〈女〉と〈男〉の中間に位置する人びと
セックスとジェンダー
3 〈男〉は中心、〈女〉は例外―異性愛から見た言語資源
「おれ」と「あたし」のエロス
「女/男ことば」とジェンダーの結びつき
「ていねいな言葉づかい」という規範
言葉づかいが左右する自己イメージ
男のスカート姿はなぜ目立つ?
男女で異なる規範性
「おネエことば」の反対は?
第四章 変わりゆく異性愛のことば
―「スパムメール」「スポーツ新聞」「恋愛小説」
1 スパムメールに刻まれた異性愛の構造
スパムメールの修辞学
「女=受動的」がもたらす悲劇
2 男たちの共同体
向かい合えない男たち
ホモソーシャルな社会とは
女性同性愛に対する視点
「男になる」ことの意味
異性愛への強迫観念
スパムメールの中の「おれ」
恋愛資本主義の台頭
スポーツ新聞のホモソーシャル・ファンタジー
3 親しさを希求することばの格闘
母子関係に還元される恋愛
あらたな関係としての家族
血縁を超えた家族の模索
母親になりたい
Ⅲ 創造する言語行為第五章 なぜ少女は自分を「ぼく」と呼ぶのか
1 少女は言葉づかいの規範を破りつづけてきた
幻想と現実の再生産
「ぼく」と言い始めた明治の女子大生
2 新しい〈少女性〉の創造
男女に押しつけられた成長過程の違い
異性愛市場の子どもたち
〈おませ〉か〈おくて〉か
〈男装〉への憧れ
さまざまな自称詞の創造
3 押しつけられる自称詞
「わたし」と自称することへの抵抗感
ひそかに埋め込まれる異性愛規範
二重の抑圧
4 「言葉づかいへの批判」今昔
なぜ「女ことば」は伝統なのか
生き延びるために選ばれることば
「最近の乱れ」説の効用
なぜ女のことばづかいが気になるのか
5 少女の「男ことば」に萌える男たち
「無垢な少女」幻想
未熟なエロスの商品化
第六章 欲望を創造する―消費社会と〈性〉
1 ファッション誌という共同体
消費と結びついたアイデンティティ
雑誌がつくる書き手と読者
雑誌共同体をつくる三つの手法
イデオロギーによる支配
欲望を煽り、達成感を抱かせる
2 女性誌と男性誌―親しみの相違
女性誌は平等・男性誌は階層的
上下関係にもとづくホモソーシャリティ
ファッションは課題、雑誌はカウンセラー
ファッションはいかに男性化されたか
3 新しい男性雑誌共同体
男性も「着まわし」の時代
ファッションを「大研究」する
男性誌は学校、読者は生徒
モノローグによるコミュニケーション
異性愛を求める消費社会
終章 「日本語=伝統」観の閉塞を超える
1 日本語という不安
あるがままに愛でるべき日本語?
日本語本ブームのメカニズム
「正しい日本語」の問題点
「ずれた言語行為」の可能性
2 日本語をみがくために
言語イデオロギー
メタ言説の権力
「正しい日本語」がつくる分断
矛盾ゆえに強化される言語イデオロギー
「男ことばの乱れ」はなぜ意識されないのか
3 開かれた伝統にむけて
「専門家」のメタ言説を相対化する
「乱れ」言説から自由になる
ことばに対する「常識」に問いを発する参考文献
あとがき
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