オタク短歌
「これ役割語と関係ありますよね」
と言って、くださいました。
黒瀬珂瀾(著)竹(表紙・口絵イラスト)(2005)『カラン卿の短歌魔宮』(私家版)
黒瀬氏は新進気鋭の歌人で、オタク短歌を提唱し、毎月最終金曜日の読売新聞夕刊「POPカルチャー」面で「カラン卿の短歌魔宮」を連載されています。本書は、その連載をもとに、直言兄弟(石川汗太/福田淳)さんが編集、脚注を付し、竹さんがイラストを添えて製本されたもので、700円でコミケで販売されたそうです。
黒瀬珂瀾氏扮するカラン卿の話体と作品は次のようなものです。
誰だ、余の眠りを妨げる者は……ふむ、歌を侮る輩(やから)が月光の森のわが魔宮に迷い込んだな。余はオタク短歌の伝道師、カラン卿とでも名乗っておこう。お前か、『短歌は古くさい、ケッコウなご趣味』などと思っておるのは? 愚か者め! 短歌はつねに時代の最先端に切り込み、時代を映す鏡となってきた。オタク文化全盛の現代こそ、短歌は輝きを増すということに気付かぬとは……縛り首ものだ! まあよい、余の作を見せてやろう。
今日もまた渚カヲルが凍蝶の愛を語りにくる春である 歌集『黒耀宮』より
また、直言兄弟さんの脚注には、次のようにあります。
■『黒耀宮』 カラン卿こと黒瀬珂瀾氏の第一歌集。ながらみ書房刊。残念ながら現在は絶版。ほとんど短歌に関心のなかった直言兄(石田)が、黒瀬氏を紹介した新聞記事中の引用歌〈違ふ世にあらば覇王となるはずの彼と僕とが観覧車にゐる〉の一首にビビッと来て、連載コラムをいきなり依頼した逸話は有名(?)。「初対面で、黒瀬氏のあまりのイケメンぶりと、ディープなおたく度との乖離にショックを受けた」と、直言兄は述懐する。直言兄が提案したカラン卿の「余」キャラクターについて、当初黒瀬氏はかなり難色を示していた。今ではすっかり第二の人格に。
カラン卿の話体は、老人語に近いですが、「じゃ」は使いませんね。デーモン木暮閣下に少し近いようです。
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