高田 亮(2011)『翻訳における役割語』
*San Francisco State Universityの南 雅彦先生から高田 亮さんの卒業論文を頂きました。以下に、要旨を引用します。(大田垣)
(要旨)
いかにもある特定の職業、もしくはタイプの人が話しているのだろうということが想像でき、読者に共通認識が生まれる「特定の人物像に与えられた」言葉づかいを『役割語』と呼ぶが、役割語にはステレオタイプに基づいた、仮想的、虚構的な日本語という側面がある。他言語による発話を日本語に翻訳する場合、翻訳者は自身が持つステレオタイプの影響を受け固定化された翻訳をしている可能性があるが、その一方で日本語母語話者が状況によって言葉遣いを変えるように、状況という要素を考慮してうまく訳し分けている可能性もある。本調査ではアメリカのメジャーリーグ選手の新聞記載の翻訳発話を対象として、(1)場面(2)発話相手という2つの状況要素が、文末表現・一人称代名詞の翻訳における選択にどのように影響しているかを分析した。分析の結果、発話は状況に応じた翻訳がなされており、翻訳には様々な要素が複雑に影響していることがわかった。そうした意味では、翻訳が翻訳者自身もしくは社会のステレオタイプを単純に反映していると必ずしも断じることはできないという結論に達した。
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